第35話 〈淫魔〉戦場に舞う

 男棍棒。


 敵を切るのではなく、殴り飛ばすことに特化した打撃武器。 

 僕のアソコが辿り着いた新たな境地に、アーマーアント・フォートレスがまとめて吹き飛ばされる。


 それによって後方のアリたちがことごとく粉々になり、整然とした隊列がぐちゃぐちゃに乱れていった。


「……っ! これがレベル140の〈淫魔〉の力……!?」


 予想以上の破壊力に自分自身で驚く。

 だが敵は感情も混乱もなく襲い来るモンスターの軍隊だ。

 

「「「ギチギチギチギチッ!」」」


 アーマーアント・ジェネラルの指示だろうか。

 崩壊した陣形をすぐさま修復するようにアリたちが蠢き、さらには僕目がけて大量のアリが迫ってくる。けど、


「体勢を立て直す暇なんて与えるもんか!」


 男棍棒!

 再び数体のフォートレスを殴り飛ばして陣形をかき乱す。

 その隙に僕は陣形の内部へと突入し、さらにアソコを変化させる。


「形状変化!」


 何本にも枝分かれした刃。

 それは例えるなら、極端に幅の広い熊手レイクのような形。

 一振りで広範囲を同時に切り裂ける形状の男根剣だ。


「やあああああああっ!」


 回転するように剣を振り回す。

 それだけで、全方位から僕に襲いかかるアリたちが切り裂かれ絶命していった。


 そうして、現場指揮官であるアーマーアント・プラトーンを中心に何十体ものアリたちを刈り取ったとき。


「っ!」


 突然、僕の周囲が開けた。

 僕に襲いかかっていたアリたちが一斉に身を引いたのだ。

 次の瞬間――ドビュウウウウウウウウッ!


 近接戦は不利だと悟ったのだろう。

 レベル90相当の遠距離攻撃専門、アーマーアント・カノンの放つ蟻酸が四方八方から僕を目がけて放たれていた。

 けど、それは想定済みだ。


「形状変化! 形質変化!」


 僕の周囲を覆う球形の結界。

 そんなイメージで男根のかたちを変える。

 そしてその材質は、酸に極めて強い耐性を持つ金属――すなわち金だ。


 金の球盾たまたて


 強度に多少の不安はあったが、そこはLvの上がった〈男根形質変化〉。

 蟻酸の直接当たらない裏面だけをアダマンタイト化させ、強度不足も解消。

 強力な蟻酸攻撃を完封することに成功する。


「遠距離攻撃も完全に防げる、これなら――!」


 一息に敵大将を狙える。

 蟻酸攻撃の合間を縫い、僕はさらにアソコを変化させた。


 イメージするのは、東方に生育する珍しい植物。ムキムキ竹。

 次の瞬間、僕の手には硬くしなやかな竹の棒が握られていた。

 アリが引いたために開けた空間を全力疾走しつつ、地面にその棒を突き立てる。

 レベル140に達した〈淫魔〉の腕力で極限まで竹をしならせ、その反動を利用して僕は空を跳んだ。

 かつて帝都にやってきた旅芸人が見せてくれた、棒高飛びの要領だ。


 肉棒高飛び。


 〈淫魔〉の腕力とトンデモスキルが可能にした超高速の跳躍で、僕はアリたちの頭上を一気に駆け抜ける。

 大量の蟻酸が僕を狙うが、ほとんど当たらない。

 当たりそうになっても金の球盾によって防ぎ、僕はほとんど減速することなく目的の場所へ到達していた。


 すなわち、この群れを操る総大将――アーマーアント・ジェネラルの眼前へ。


「ギイイイイイイイイイイイッ!?」


 レベル120相当の怪物が驚愕したように咆哮する。

 その身体は周囲を固めるフォートレスに負けず劣らず巨大で威圧的だ。

 だが敵は400を超える群れを束ねる優秀な指揮官。

 得体の知れない襲撃者とまともに相対するはずもなく、周囲を固めるフォートレスとともに後退。

 

 さらにアーマーアント・メイジの土魔法によって大量の土壁を出現させ、その姿をくらませようとする。だが、


「む、だ、だあああああああ!」

 

 アーマーアント・ジェネラルの巨体めがけ、細く伸びる僕の男根。

 土壁を貫き、護衛のフォートレスを貫通し、さらに長く伸びていく。

 そして僕はそれを、一気に薙いだ。

 

 ズパアアアアアッ!


〈男根形状変化〉のレベルアップによって変えられる質量も増したアソコが、眼前の障壁をすべて引き裂く。周囲にいたアーマーアント・メイジもついでに絶命し、土魔法によって作られた壁はすべて崩壊。

 開けた視界の中では無数の亡骸が転がり、アーマーアント・ジェネラルも真っ二つになって動かなくなっていた。

 けど念のために男棍棒で頭を潰しておく。

  

 次の瞬間だった。


「「「「ギッ!?!?」」」」


 それまで精鋭軍隊のように統率の取れていたアリたちの動きがはっきりと変わる。

 ある者は戸惑うように動かなくなり、またある者はモンスターの本能に突き動かされるまま暴れ出す。隊列など見る影もなく、アリの軍隊は一瞬にして烏合の衆と化した。


「な……私は夢でも見ているのか……!? い、いやそれより――いまだ! 全員でアーマーアントを仕留めろ!」


 僕が進軍を食い止めている間に、しっかり混乱を鎮めてくれていたのだろう。

 ゴードさんの号令が響きわたると同時、街の戦力が一斉に突撃を開始する。


「よし……!」


 ゴードさんたちの突撃にあわせ、僕もアリの群れを内部から蹂躙。

 それからしばらくして、街を襲ったアリの群れは一匹残らず掃討されるのだった。



「……立場上、冒険者の能力について詮索してはいけないと重々承知しているが……」

 

 戦いが終わったあと。

 頭を潰されたアーマーアント・ジェネラルの傍らで、ゴードさんが呆然と僕に声をかけてきた。


「どう考えてもおかしい……君はその若さで、一体どうやってこれほどの力を得たというんだ……!?」 


「あ、あはは」


 あなたの娘さんに唆されて高性能生ディルドを売ったら強くなってました、なんて言えない……絶対に言えない……。

 誤魔化すように笑いながら、僕は大きな被害もなく街を守れたことにひとまず安堵するのだった。



 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル143

 所持スキル

 絶倫Lv10

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv10

 男根形質変化Lv10

 男根分離Lv6

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv4

 適正男根自動変化(Lvなし)


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