第9話 無双! 男根剣!
僕の分離男根を隠しておいた辺りから突如として現われたその剣は、狙い澄ましたかのように僕の手に収まった。
それはまるで、長年握ってきたかのようなフィット感。
右手にとてもしっくりするその剣を見て、僕は驚愕する。
「これ……男根分離に加えて形状変化と形質変化が同時に発動してる……!?」
形状変化で男根が剣の形に。
形質変化で男根が金属に。
そうして一振りの剣と化した僕の男根は、股間から分離したまま、いまこうして僕の手に収まっているのだった。
意味がわからない。
戦いの真っ最中だというのに頭を抱えて叫びたくなる。
だけど僕は自分のスキルに絶望するより先に、自らの手に握られた剣の材質に「まさか……!?」と見入ってしまっていた。
帝都にいたころほんの数度だけ見たことがある、その圧倒的な存在感。
透き通るように美しい鈍色に、曇り一つ無い質感。
そして書物に記されている通り、大きさに対して驚くほど軽いその重量。
僕の記憶が間違っていないならそれは恐らく、高難度ダンジョンの最下層で希に採掘できるという希少金属の一つ。
アダマンタイトだ。
「いやいやいや! そんな馬鹿な……!?」
脳裏をよぎった最硬金属の名前を僕は咄嗟に否定する。
確かに男根形質変化は僕のアソコを石や鉄、木といった様々な物質に変えてみせた。
だけどアダマンタイトなんて……たかだかレベル50で発現した一個人のスキル、それもたったLv4でそんな馬鹿げた効果を発揮するわけがない。
スキルを検証していたときには試すどころか思いつきさえしなかった規格外の現象を、僕は咄嗟に受け入れることができなかった。
けど、そんな風に混乱している時間なんてありはしない。
「グギイイイイイイイイイイッ!」
「っ!」
アーマーアント・プラトーンが体勢を立て直し、僕に突っ込んできた。
分厚い金属の外殻に覆われた巨体。それにそぐわぬ移動速度。
いまの僕でもまともに食らえば無事ではすまない攻撃だ。
加えて周囲のアリが連携を取り、僕の回避や防御を阻害しようとしている。
男根が剣に変化したことくらいで戸惑っている場合ではなかった。
「くっ!」
咄嗟にアリたちの頭上へと跳ぶ。
そして柄がイカれそうになっていた剣の代わりに、僕は男根の変化した剣を反射的に握り直していた。
さすがにこれが本物のアダマンタイトとは思えない。
けどせめて、元の剣より丈夫であってくれれば……!
そう願いながら、ア―マーアント・プラトーンの体へ剣の柄を叩き込む。
次の瞬間。
ドボゴン!
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「え」
アーマーアント・プラトーンが先ほどとは比べものにならない悲鳴を上げる。
剣の柄を叩き込んだ部分が、大きく凹んでいたのだ。
そして着地した僕が握っていた男根剣はといえば……傷一つついていなかった。
僕の男根、硬すぎ……?
「じょ、冗談でしょ……!?」
あまりの事態に呆然とした声が漏れる。
と、今日何度目になるのかわからない驚愕に気を取られていたときだった。
「きゃあああああっ!?」
赤毛の少女の悲鳴が聞こえてきた。
見ればアリシアたちのほうへ十数匹のアリが群がり、気絶した護衛の人たちへその鋭い牙を伸ばそうとしていたのだ。
「……くっ」
アリシアはかなり善戦している。
けれど全方位から無数のアリにたかられては、一人で守れる範囲にはどうしても限りが出てくる。
「っ! バカか僕は! 戦闘中に男根がどうとかって気を取られすぎだ!」
僕は咄嗟に駆けつけようとするが、さすがにこの一瞬では……! と歯がみしたときだ。
ひゅんっ!
「え?」
なにかが空を切り、宙を駆けた。
それは僕が握っていた男根剣。
そいつはまた僕の思いに応えるようにして、瞬く間にその形を変えていた。
すなわち、敵との距離を一瞬で0にするとてつもない長さの刃へと。
シュンッ!
「ギッ!?」
普通の刃ならはじき返すはずのアーマーアントの外殻がいとも容易く貫かれた。
加えて、男根剣の威力はそれだけに留まらない。
「……っ!」
僕が咄嗟に剣を横になぐと、剣はまったく抵抗なくアーマーアントの体を通過。
隣にいた群れをまるでバターのように切り裂いていったのだ。
しかも驚くべきことに、男根剣はまったく折れる気配を見せなかった。
この剣はいま、リーチを伸ばす代わりにその刀身がかなり細くなっている。変化できる質量に限界があるせいだろう、いまは僕の指先よりも細い。
しかしそれでもまったく折れない。折れる気配もない。
そのまま僕の意のままに形を変える剣はアリシアと共闘するかたちでアリの群れを一匹残らずバラバラに解体する。
「グ……ギイイイイイイイイイイイッ!」
あとに残されたのは、僕の打撃で動けなくなっていたアーマーアント・プラトーンだけ。
最後に一矢報いようとでもしているのか、僕に背後から襲いかかってきた。けど、
「形状変化」
今度はしっかりとイメージしてスキルを発動させる。
すると細長くなっていた男根剣は刃をさらに細い五つに枝分かれさせ、僕の背後へと伸びていった。
ヒュッ!
「ギッ……!?」
風切り音とともに、アリのリーダーの断末魔が小さく響く。
そして次に響き渡ったのは、下級兵たちと同じくバラバラに細断された巨体が崩れる音だった。
「……」
そうして戦闘は一方的に終わり、静寂の戻った森の中で、僕はもう確信せざるをえなかった。
アーマーアントの外殻をものともしない強度。硬度。切れ味。
僕のスキルで生成されたこれは、この剣は、本物のアダマンタイトだ。
しかもこいつは質量制限つきではあるけど、僕の意のままに形を変える魔剣でもあるらしい。
あり得ない。
いくつものスキルを同時発動した結果とはいえ、それでも規格外すぎる性能だ。
これなら並大抵の敵に苦戦することはないだろう。
けど……
「自分の男根を武器にして戦うって……こんなのもう言い逃れようのしようもない変態じゃないか……!」
なにが男根剣だ。どうかしてるんじゃないのか。
僕はがっくりと膝から崩れ落ちた。
こんなのもう性騎士……いや性器士だ。
みんなを助けられたことは本当によかった。
けど幼い頃無邪気に憧れていた〈聖騎士〉からどんどん乖離していく自分に、僕は改めて打ちのめされるのだった。
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