侮れ
Stereoman
第1話 恋と選択と
人の数だけ物語がある。
いま振り返ると分岐点となった出来事がいくつもある。あの時こうしていれば、こう答えていたら。いま頃は違う世界にいたのかもしれない。でもきっと違う。その時に違う選択をしても今の世界は変わらない。きっと。
世の中には二種類の人間がいる。
恋をして強くなる人間と
恋をして弱くなる人間だ。
僕はその両方であり
いつしか、その両方とも自分には関係ないと目を背ける人間になっていた。
自分がこんなにも愛情深い人間であることにその時は気づかなかった。
僕はいつだってどこか醒めている。
この恋に未来はあるのか。
こんなに幸せな日々がいつか終わり
思い出すら消えていく事の虚しさ。
僕はいつだって醒めていたんだ。
あの時までは。
「ヒロさぁ、好きな人できたー?
俺はもう誰か1人を愛するんじゃなくて、俺の事好きな人達みんなを愛したい。だって人生短いんだから、本当にこの人だ!っていう人を見つけるのはそもそも無理なんだよ。」
テツはいつもの調子で、レモンサワーを片手に涼しい顔で言う。彼は昔から彼女が途切れた事のない中々なヤリ手だ。
「もう俺はそもそも女という生き物が面倒くさい。毎日こうやってビール飲んで酒に溺れていたい。それでたまに綺麗な子とデートしてればいいよ。それが1番シンプル!」
「ヒロ..お前が1番面倒くさいな...」
そう、僕は面倒くさくて最低だ。
いつだってリセットしてしまうんだ。高校時代サッカー部に入っていた僕は大怪我が原因で、部活を辞めた。全てリセットしたくなった僕は当時付き合っていた女性に、なんの前触れもなく、突如として別れを告げた。
彼女は理由も分からず別れを告げられ
過呼吸に陥ってしまった。
だから僕は今でも過呼吸の人を見かけた際にはすぐにビニール袋を取り出して対処できる。僕は最低だ。嫌気がさす。
僕はいつだって醒めていたんだ。
あの時までは。
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