第12話 混乱

シャアルから告白された夜、アリシアは恥ずかしさに悶えて

枕を抱きしめベットをゴロゴロ転げ回っていた。

マリーがあきれたように、ため息をつく。

「アリシア様、まだゴロゴロ転がっているんですか?

そろそろ枕を離してください。ふかふかの枕が

台無しになってしまいますよ」

そう言ってアリシアから枕を引きはがした。


「だってマリー……、どうしよう……

どうしたらいいか分からないんだもの」

「あんなに露骨に求愛行動をされていたのに、

気がつかないのはアリシア様くらいですよ」

「求愛行動?」

「だんな様や奥様は、獣族が恋に落ちたらどうなるか

なぜお教えしなかったのでしょうねぇ?」

「それって、皆 知ってるの?」

「そうですね、たいていは話題に上ると思いますよ?

学校でお友達からも、お聞きにならなかったんですか?」

「……それが……獣族のつがいのお話は

私に関係ないと思って……そのっ、ちゃんと聞いていなかったの」

「……なるほど……さては、休み時間に古文書を読んでらしたんですね?」

「……うっ……えっと、借り出しできない本がたくさんあったから……」

「ま、今さら ちゃんと会話をしなかった事を嘆いても、しようがありません。

これから見聞きなさると良いですよ。アリシア様も求婚されたんですから」

「きゅっ、求婚?!告白されただけよ!!

だってシャアル様は、ゆっくりとお互いの事が分かりたいって……。

確か、そうおっしゃっていたもの !!」

マリーは、また盛大なため息をついた。

「アリシア様……、獣族の告白は求婚と同じですよ」

「……そうなの?!」

「そうです」


マリーは、シャアルがアリシアが気がつくまで

ずいぶんと気長に待ったもんだと思っていた。

『大切に想われている証拠なので、良いのですがねぇ……』

ただアリシアが気が付いたからには、

ここから怒涛のような愛情が注がれるだろう。

なにせ相手は猛禽類なのだ。先を思ってマリーは首をひねった。

『アリシア様がついていければ良いけど……』


心配するマリーの前で、アリシアは真っ赤になりながら

口をポカンとあけていた。

「さぁさぁ、アリシア様。おやすみ前に奥様から、お話を聞くのでしょう?

サロンでお待ちですよ」

「そうだった!!」

アリシアは夜着の上に大きなストールをまとい、

サロンへ急ぐのだった。

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