第3話  兄達の憂鬱

フィルとグラントにとっては心配でしかない話の後、

二人は どちらからともなくサロンに来た。

「父上ってば、もう母上にクギを刺されていたのか……!!」

フィルは少し苛立ちながら、紅茶を飲み干した。

本当ならお酒にしたい所だが、明日 朝一番に登城しなければならない。

紅茶が精一杯だ。

「ニコラってば、アリーに甘いんだから……。もはや実の妹のようだ」



ニコラと二人は剣の授業が一緒だった。

何となくウマがあって、もはや同士のような感覚がある。

三人の中で一番に剣の授業に手こずったグラントも大きな溜息と共に

もう一つの心配事を打ち明ける。

「アリーは容姿も可愛いからな。仕事なんてしたら

山のように求婚の話がくるぞ……。そっ……そんなのイヤだーー!!」


兄達のひいき目を除いても、アリシアは日に日に美しくなっていた。

十代の少女が大人の女性になる為に、つぼみが花開くように開花していく。

アリシアにもその時が訪れたのだ。

フィルは父に似て、焦げ茶色の髪に金色の瞳、

グラントは母に似て薄茶色の髪に茶色の瞳を持っている。

が、アリシアは黒くて長いまっすぐの髪に黒の瞳を持っていた。

「アリシア様の髪はサラサラと流れる川のようで、結いにくいのですよ」

マリーは いつも鏡の前で苦心していた。



その漆黒に対比するかのように肌は白く、

華奢きゃしゃな割に胸は豊かになりそうで、

心配していた身長も平均的な女友達と同じくらいになった。

自分の番つがいになる人であれば何の問題もないが、

妹となると心配のタネは尽きない事になる。


「ニコラの奴っーー !! あいつは心配じゃないのか ?!」

グラントは また叫んだ。


「ニコラめ……、ひょっとしてアイツもアリーを狙ってるんじゃ……?!

いや、求愛行動は一度も見てないから、やっぱり友情だな……」

フィルがブツブツとつぶやいている。


「そんな心の広い友情なんて、いらねーんだよ !!」

グラントの叫びは続くのだった。

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