そうして君は僕を知る

琉慧

第一部 僕と私(ぼく)

プロローグ

 この世の中には、コインの裏表のようについになるものが多く存在している。

 対とは物体に限らず、光と影といった事象にも扱われ、様々な有相無相うそうむそうの対に囲まれながら僕はこれまでの人生を歩んできた。

 ただ、枚挙にいとまが無い対の中に僕は、どうしても対として認められないものがある。 それは『男女』だ。


 一つ断っておくと、男女が交わらなければ子供が生まれない事も知っているし、その行為を否定するつもりも無い。 現に僕の生命いのちは、父と母によってもたらされたものなのだから。


 けれども、そうした建前の上であっても、僕はそれを対と認めない。

 それでもなお『男女』が対とのたまうのであれば、どうして神様は人間のこころとからだの性別が一致しないという重大な欠陥を残したまま、今もなお静観を決め込んでいるのだろうか。


 表だけのコインは存在し得ないし、生まれなければ死ぬ事も無い。 絶対的で在らねばならない筈の対の世界で『男女』という対は自由気ままに姿を変え、僕を翻弄ほんろうしようとする。


 だから僕は認めない。 神様に頼まれたって認めてやるものか。

 未だ真実の面を見せようとしない『男女』という欺瞞ぎまんに満ちた、曖昧な対を。

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