第14話 西野ヒカリ

 僕も彼と同じタイプの眼鏡をしてるいるので雰囲気がよく似ていた。



 最近では何度か、街でも『渡瀬ヒカル』に間違えられ、女子高生たちに囲まれたこともある。


 ひと間違いをしていることがわかった瞬間、彼女らは失望して離れていった。


 まるで僕が悪いことでもしたような気分だ。



「フフ……、あの子は、少女の西野ヒカリよ」

 美優は、少しバカにするようにヤンキー美少女を紹介した。


 をヤケに強調した。


「チィ~……ッ😒✨✨」ヒカリは小さく舌打ちをそっぽを向いた。


「え、元…、天才…… 西野ヒカリ」

 その名前を聞いて彼女の顔を見つめた。



 一瞬、五年前の授賞式の様子が脳裏をよぎった。


 天才少女『西野ヒカリ』が、華々しくデビューした時の出版パーティでのひとコマだ。


 緊張からか、少し表情が硬かったが圧倒的美少女だった。



「そうかァ~…❗❗ どこかで、見たと思ったら……

 あの天才少女の西野ヒカリ……さんか❗」

 ようやく僕も思い出した。



「フン……😒✨✨ 天才少女ッて呼ぶなよ❗❗」

 西野ヒカリは不満げな顔で視線を逸らせた。



 だが、美優は彼女の心を逆撫でするように嘲笑あざわらった。


「フフゥン……、知ってるゥ……✨😆🎶✨

 ダーリン❗ 五年前、すい星のように現れた美少女作家のことを❗❗」



「あ、ああ……、もちろんだ」

 何か、奥歯にモノの挟まったような言い方だ。


 天才少女…… 

 西野ヒカリ。

 

 当時、小学五年生で角○出版新人賞を授賞し、史上最年少記録を打ち立てた。



 しかもアイドル顔負けのハーフの美少女だ。


 連日のようにマスコミが小学校まで追いかけ回し社会問題にもなった。



 小学生の美少女は、無口でいつも不機嫌そうな顔をしていた。



 確か、処女作のデビュー作品以外、一冊も書いていない。



 世間ではクチさがない人たちが彼女の事を『一発屋』と揶揄やゆしていた。





∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆



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