第6話 ドラゴンの王(3)

 今回は、優子が経験した中で最速のゲームオーバーになりそうであった。

 そう、既に、優子は過去5回ゲームオーバーになっている。


 1回目は、意気揚々と冒険に出かけた森の中で、かわいいスライムが体にぺたりと引っ付いた。

 服を溶かされあらわな姿で窒息死。

 だって、スライムが顔から離れなかったんだもん!


 2回目は少々注意した。

 優子はレベルを10まで上げて洞窟へ赴く。

 しかし、ゴブリンに凌辱されて、またしても花を散らす。


 3回目は考えた。

 ソロプレーは無理だと思い、レベル30でパーティを組んだ。

 しかし、盗賊に襲われて仲間たちは優子を置いて皆逃げた。

 優子は盗賊に陵辱されて、また死んだ。


 4回目、それでも優子はあきらめない!

 レベル50となった優子たちパーティは、ついに魔王を討伐した。

 しかし、恩賞の分け前目当てで僧侶に後ろから刺されて殺された。

 ついでに身ぐるみはがされ真っ裸。


 5回目、もう仲間なんて信じない!

 レベル90となった優子は、ソロで魔王を滅ぼした。

 しかし、それで終わりではなかった。

 ついに現れる真の敵。

 巨大な山脈のような機構式兵器の鬼蜘蛛!

 その体のいたるところから射出される熱線と圧倒的な火力。

 それによって世界は完全に滅びた。


 6回目の今回、レベル上げを簡単に済まそうと思ったのが悪かったのか。

 目の前のドラゴンに、またも凌辱されて殺されてしまう。

「おうちに帰りたい……」

 自分の肩を抱く優子は震えながら小さく呟いた。


 そんな優子を冷めた目で見つめていたドラゴンを包む白い光が、魔法陣の中心に向かって収束し始めた。

 それに伴い、ドラゴンの体自体も同様に白く発光しまとまり小さくなっていく。

 そして、その光がスッと上空へ伸びていったかと思うと細くなって消えていた。


 魔法陣の中心には一人の中学生ぐらいの少年が立っていた。

 それも真っ裸で。


 少年は優子に声をかける。

「おい!」


 はっと顔をあげる優子。

 ――まさか! この少年が先ほどのドラゴンなの!

 そんな目は恐怖で染まる。


 しかし、すでに無気力な優子はスッとその場に立ち上がると、おもむろにセーラー服のリボンを外しはじめた。

 少年は怪訝そうな顔で尋ねる。

「何をしている?」

 優子はセーラー服のシャツを脱ぎながら、

「どうせ……私を凌辱するのでしょ。ひと思いとは言わない……でも、抵抗しないから痛くはしないで……私……これで本当に死んじゃうんだから」

 セーラー服のシャツを地面に落とすと今度はスカートのフックに手をかけた。


「お前は馬鹿か! お前など抱いても気持ちいいわけなかろうが!」

「なんですって!」

 瞬時に優子の目が怒りに震えた。


 これでも自分は女子高生。

 しかも、見た目は上の下ぐらいは控えめにいっても満たしている自負はある。

 いや、もしかしたら上の中……より、もうちょっと上かな。


 そんな私を抱く価値がない!

 この少年の目は節穴か!

 いや……よく考えろ。

 おそらくこの少年は女に興味がないのではなかろうか。

 そうだ、男にしか興味がないのだ。

 だから私の価値が分からないに違いない。


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