第4話 ドラゴンの王(1)


 突如、ドラゴンの体の下に光の魔法陣が浮かび上がった。

 このドラゴンは魔法も使えるというのであろうか。

 オイオイ、普通、ドラゴンといえばブレス攻撃だろうが。

 魔法も使えるって反則だろう!

 しかし、まぁ最強のドラゴン様だからそれもありか。

 魔法陣の白き光は半球状に大きく広がっていくとドラゴンを包み込んだ。


「ちょっと、なに! あんた! まさか回復するつもり!」

 ――まずい! 回復はまずいわ!

 レベル1の優子にとって唯一の勝機は初手の一撃のみであった。

 だからこそ、この一撃で必ず仕留めると奮発して高価なオリハルコン性のドリルミサイルを買ったのである。

 ココで回復をされたなら、もはやレベル1の優子には為すすべが残されていない。

 ならば回復する前に全力を持って潰すのみ!


 優子は急いでカバンのなかに手を突っ込むとスマホを一つ取り出した。


 必死にスワイプする。


 スマホに映る掲示板にスレッドを立ち上げる。

『大至急! 殺される! ドラゴンを倒す方法教えて』

 そんなスレッドに次々と返信が。


『1get!』

 ――1getなんていらないから!


『ドラゴンwww』

 ――笑ってないで早く教えなさいよ! コチとら1日5分しかネットに接続できないんだから!


『燃えよドラゴン!』

 ――くだらん……


『食われろ!』

 ――お前が食われろ!


『トカゲと言えば毒殺でしょ!』

 ――毒殺か!

『↑ネズミかよ!』


 残りネット接続時間1分!

 優子は急いで、通販サイトMegazon(メガゾン)のページを開いた。


『ドラゴン 毒殺』

 すかさず打ち込むと画面に検索結果がずらすらと表示されていく。


 そんな優子の目が一つの商品にとまった。


『どんなドラゴン級の強敵もあっという間にいちころよ。殺傷力96.8%(当社比)』

 ――これだ!


 急いでタップ。


『これを購入した人は、これも同時購入されています』

 ――どれどれ。


『高性能ガスマスク フィルター式』

 ――これはいる!

 こちらもあわせてご購入♪


『こちらも一緒にいかがですか? 取替え用フィルター5枚セット、今だけ限定セール品』

 ――いるかぁ!


 優子は次々とタップする。

 目にもとまらぬ速さでタップする。

 女子高生のスマホ能力は本当に高いとオジサンたちは目を丸くすることだろう。


 ――購入完了!

 残りネット接続時間0分!

 接続限界……

 スマホの画面がブラックアウトした。


 次の瞬間、洞窟の奥深くの入り口からけたたましい音が、すごいスピードで近づいてきたではないか。

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