第4話

(場面:梨加の部屋/夜)

梨加「あたしは、水野梨加。」

梨加「あたしは数か月前、塾からの帰り道に事故に遭った。」

梨加「そしてそのまま、あたしは帰らぬ人となってしまう…はずだった。」

梨加「あの天使が現れるまでは。」

梨加「それは、天界のキャンペーン…らしい。」

梨加「何でも最近では、若者の自殺率が上がっていて、」

梨加「天界としても処理等に困っているらしい。」

梨加「そのため、自殺に繋がりそうな若者を助けたら、」

梨加「例外的にこの世への復帰が認められるとのことだ。」

梨加「ただ、周りのあたしの記憶が消えていたり、」

梨加「色々と不都合もあるのだけど…。」

梨加「そしてあたしの担当の天使が指定したのが、平手孝治。」

天使「彼は自殺の兆候はないが、」

天使「何事にも無関心で、危険は未然に防いでおきたい。」

梨加「これが担当の天使の最初の紹介。」

梨加「そして、あたしの彼への第一印象は…。」

梨加「まあ悪い人ではないけど…、暗い人だな、というもの。」

梨加「それで、天使の条件は、」

梨加「彼があたしを好きになれば合格、というもの。」

梨加「それで…、その目的はどうやら達成できたらしい。」

梨加「あたしは明日から、人界に今まで通り復帰する。」

梨加「…でも、その間のみんなの記憶なんかはどうするんだろう?」

梨加「ちゃんと整合性とれてるのかな?」

梨加「まあ、そんなことはどうでもいいか。」

梨加「そして…、あたしは大好きな、優先輩に告白する。」

梨加「先輩…、好きです、って。」


(場面:梨加のクラスの教室/朝)

梨加の友達「おはよー梨加!」

梨加「おはよう!」

梨加の友達「何か梨加と話すの久しぶりな気がする~!」

梨加「そ、そうかな?」

梨加の友達「…それはさておき梨加、今日夕方暇?」

梨加の友達「久しぶりにカラオケ行かない?」

梨加「あ、今日はごめん、ちょっと予定が…。」

梨加の友達「あっ、そうなんだ。」

梨加の友達「ってか予定って…?」

梨加「いや、それはその…。」

梨加の友達「分かった!じゃあ頑張ってね!」

梨加「うん…。」

梨加「私は、夕方優先輩を呼び出していた。」

梨加「前に、何とか連絡先を交換してあった。」


(場面:体育館裏/夕方)

優「あっ、お待たせ梨加ちゃん!」

優「ごめんね、部活長引いちゃって。」

梨加「いえいえ全然待ってないです!」

梨加「サッカー部の練習大変ですか?」

優「まあね。俺らの最後の大会も近いから…。」

優「俺らのキャプテンも気合い入りまくりだよ!」

梨加「それで練習頑張ってたんですね。」

優「まあね…。」

梨加「でも、頑張ってる先輩、かっこいいです!」

梨加「一生懸命な姿、いいと思います!」

優「…梨加ちゃん?」

梨加「…そんな優先輩に、今日は話があります!」

優「うん。」

梨加「先輩…、あたし優先輩のことが好きです!」

梨加「あたしと…、付き合ってもらえませんか?」

優「…ごめん梨加ちゃん。それはできない。」

梨加「えっ…!?」

優「俺、実は最近彼女ができたんだ。」

優「その子は俺のクラスメイトなんだけど…。」

優「俺たち前からお互いに両想いになってて、それで…。」

優「ちょっと前から付き合うようになったんだ。」

梨加「……。」

優「あれは確か、梨加ちゃんがいなかった時だけど…。」

優「梨加ちゃんどこかに行ってたのかな?」

梨加「いえ、ちょっと家の用事で…。」

梨加「…そうなんですね!すみません!」

梨加「何か気を遣わせちゃいましたね。」

梨加「どうぞお幸せに!では失礼します!」

優「ごめんね梨加ちゃん…。」


(場面:屋上/夕方)

孝治「あっ、こんにちは。」

水野梨加が屋上に上がってきた。

梨加「……。」

その日の水野梨加は…、泣いていた。

孝治「…何かあった?」

梨加「気安く話しかけないで!」

孝治「…えっ…?」

梨加「アンタなんかにもう用なんてないから!」

孝治「…どういうこと?」

梨加「もう説明するのもめんどくさい!」

梨加「早く出て行け!」

孝治「いやでもここは僕が先に…。」

梨加「うるさい!もうアンタと関わることもないんだからね!」

孝治「それは…、どういうことかな?」

梨加「仕方ないから説明してあげる!」

梨加「1回だけだからね!」

そして僕は事の一部始終を聞いた。

それは…、少しショックだった…が、

納得する部分も多かった。

孝治「そうか…だから梨加は僕に話しかけたんだね。」

梨加「気安く『梨加』なんて呼ばないでよね!」

梨加「もうアンタみたいな暗いヤツと関わることもないんだから!」

孝治「じゃあ、『水野さん』、かな?」

孝治「実は話があるんだ。」

梨加「何?どうせ告白でしょ?」

梨加「アンタ、あたしのこと好きなんでしょ?」

梨加「全部天使から聞いて知ってるんだからね!」

孝治「あっ、でもちょっとそれは違ってて…。」

梨加「…どう違うのよ?」

孝治「水野梨加さん。」

孝治「僕と…、友達になって欲しいんだ。」

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