憤怒の血

宵闇(ヨイヤミ)

第1話

ある漫画の人物が言っていたその台詞に似ている事を、私は時々静かに呟くことがある。


『あぁ、腹が立つ、腹が立つ、腹が立つ……この怒り、一体どうしてくれようか………』


また怒りの例え方といえば[ 腸が煮えくり返る ][ 血が煮えたぎる思い ][ 頭にくる ]などがある。

その気持ち、確かによく分かる。


私は、友達等から“サイコパス”認定されている。実際それは正しいかもしれない。前まではそうは思っていなかったが、今では自覚のあるサイコパスだ。自分で言うのもあれだが、私は結構やばい人だと思う。


私は怒る時、その度合いによっては相手を殺してしまいたいと思う。口にはガムテープや猿ぐつわをはめ、大声が出せないようにし、暴れられないように両手両足を拘束する。

そして首筋に鋭い刃を突きつけ、ゆっくりと線入れていく。肌に赤い液体が滲む。傷口に水をやると滲みるだろうな。塩を塗り込めば、きっと激痛が走るだろう。

だがそんなこと現実でするわけがない。

やったら犯罪で逮捕だ。

だからこれは私の頭の中だけの出来事であり、怒りの対象である本人様は、そんな事気にも留めていたいだろう。


また私は、怒りが笑顔に変換されている。

去年、一度だけ、とても癇に障った出来事があったのだが、その時の私はとても怒っていたと、自分でもよくわかるほどだった。

対象を何度頭の中で殺ったか。

顔を見る度に、名前を聞く度に、どれ程殺してやろうと思ったことか。

しばらくの期間、私はとても笑っていた。

対象がどういう立ち回りをしてくるのか、どんな事を言ってきてくれるのか、それが少し楽しみで笑いが出るのだ。

ただ、誰一人として私の予想外の事をしてくる人は居なかった。だからとてもつまらなかった。


対象に対する怒りと、つまらないという呆れなどから怒りが増幅したりすることはよくあった。

ただひたすらに相手のことが嫌だと感じた。

視界に入って欲しくない。顔を見たくない。名前も聞きたくない。同じ空間に居なくない。

だんだんその人の存在を否定し始める。


所詮人なんてそんなものだろう。


好きなものは好き

嫌いなものは嫌い


はっきりしてんだよ。



私もそうだ。

嫌いなものとことん嫌う。

好きなものはどこまでも好きだ。


私にも、嫌いなものくらいある。

嫌いな人、食べ物、色、場所、言葉

嫌いにも色々あるが、私が一番嫌いなことは、友人などの大切な人を傷付けられることだ。


友人等を傷付ける奴を私は殺してしまいたくなる。友人の、大切な人の悲しむ顔程見たくないものはないだろう。見たくない、そう、見たくないんだ………


その首を掻っ切って、腸を引きずり出して、頭を開いて、骨を折って、激痛に苦しむ様を見ていたい。だが声をあげられると五月蝿い。それは耳障りな音だ。だから喉笛も引きちぎる。穴が開けば、ひゅーひゅーと風の音しかしない。


もし法律が無ければ私が何をやっていたのか、想像しただけでも恐ろしいだろうな。

だがもしも法律がなかったとしても、流石にこんなことをやりはしない。それこそ更に友人を悲しませる可能性がある。そんなことを、私がするはずがないだろう?


だが、私のこの怒りは何処へやればいい?

腸が煮えくり返り、血が煮えたぎるようなこの思いは、一体どうすればいいというのだ。

物に当たると壊してしまう。

人に当たった所で相手を苦しめるだけだ。

ならどうすればいい?







腹が立つ

腹が立つ

腹が立つ

腹が立つ

あぁ、この怒り………

一体どうしてくれようか_____

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

憤怒の血 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ