第8話 今度はなんなんですか?ツンデレですか?
週末、乗馬と歴史家庭教師は同時にやってきた。
体を動かした後に歴史とかやったら寝るよなぁ、なんて思っていたので、この状態はなぞだった。同時には受けられないよね?
私が挨拶の後とまどっていると、お父様が事情を説明してくれた。
要するに、王子の婚約者である私に付ける家庭教師は、当然女性ではなくてはならず、しかも王子から誤解されないように、お互いに顔を合わせておく必要がある。と判断したからだ。
家庭教師は、2人とも女性で、家庭のある人だった。乗馬の家庭教師は、元騎士で王族の親衛隊もしたことがあるそうだ。だから、王子の婚約者である私の家庭教師にピッタリたと言う。また、歴史の家庭教師は、元は学校の教師だったそうだ。身元が確かな方なので、これもまた王子の婚約者である私にピッタリだと言う。
2人の自己紹介を聞いて、目眩がした。悪役令嬢の破滅エンド回避のために考えた策に対して、物凄い人選になっている。その辺の牧場からとかでは無く、家庭教師を専門にしている人でもない。きちんとどこかに務めたことがある人。
乗馬が先か、歴史が先かについては、馬の状態を見てからその都度決めるそうだ。
今日は、初めての乗馬になるから先に歴史をやってから、となった。乗馬の家庭教師が、まず我が家の馬に慣れたいそうだ。
歴史の家庭教師は、ニコルといった。ニコル女史とお呼びすればいいらしい。教わる歴史は、我が国のものだけでなく、近隣諸国のものまで幅広かなるそうだ。それって、世界史ってことじゃん。って思ったけど、王子の婚約者、すなわち未来の王妃になるのだから、そのくらい分からなくては行けないそうだ。なら、なぜに今までやらなかった?私はお父様を恨みながら歴史の授業を受けるのだった。
歴史の授業が終わると、軽いランチを取りながら家庭教師たちと会話をした。リリス以外の女性と話すのは初めてだ。なかなか社交術を鍛えられるというものだ。
方の力が抜けて、自然と会話が流れていく。純粋に楽しい。分かってはいるが、家庭教師の2人が会話が途切れないように気を使ってくれているのだろう。
違う意味でも家庭教師をしてくれていることになる。
ランチの後は乗馬だ。
生まれて初めて馬に触る。
こちらが怯えていると馬に伝わるそうなので、適度に緊張はしてもいいが、怖がらないこと。と釘を刺された。
服装は、ドレスと言うよりシンプルなワンピースに近かった。スカートの中にはパニエではなくズロースを履いている。うっかり防止だそうだ。
乗馬の家庭教師は、サローネと言った。もと騎士らしく姿勢の良い女性だ。現代で言うところのスポーツ選手みたいな感じがする。
初めてなので、馬には可哀想だが2人乗りで訓練することになった。
しかも、馬は私の馬だった。
貴族の令嬢らしく、誕生日に馬をプレゼントされていたらしい。が、乗馬を始める前に私が王子の婚約者になってしまった為に、可哀想にこの馬は、私を乗せる事がなかったそうだ。
「アンネローゼ様がお乗りにならなかっただけで、この馬はちゃんと人を乗せる訓練は受けております。ご安心ください」
サローネに後ろにつかれて、私は人生で初めての乗馬をしている。
ただ乗るのではなく、乗馬の訓練なので手綱の握り方とかを教わらなくてはならない。学校だと、いきなり自分で馬に跨らされていた様だが、さすがに王子の婚約者である私にそんなスパルタは出来ないようだ。
背後から、サローネの手が回り、馬の手綱を調整している。鐙の使うタイミングもサローネの足に私の足が挟まれるという状態で教えられた。
確かに、こんな密着は女性でなくてはならないな。
馬の背に乗るという初体験にウキウキしながら、サローネの指示通りに手綱を握って、乗馬楽しい!なんて思っていたら、
何かが背後から近づいてくる気配がした。
「アンネローゼ様、動かないでください」
サローネに、背後から抱きしめられた。よく分からないが、何かが背後から物凄いスピードで迫ってきたのがわかって、恐怖で体が縮んだ。
馬の嘶きに合わせて、大きな物が自分の隣に止まったのが分かった。誰かが馬を結構な勢いで走らせてきたのだ。
「アンネローゼ」
名前を呼ばれてそちらを見ると、真っ黒な馬に跨った王子が私を見つめて、いや、睨んでいる?
私は状況が分からず、ただ瞬きをするしか無かった。多分、本物の王子なんだろうけど、学校の制服とは違うし、これが王子の平服なのかしら?なにせ、こちらの世界に来てまだ2度目なので、王子のなにが正しいのかさっぱり分からない。
けれど、一つだけわかるのは、この顔と名前を呼ぶ感じから、きっと怒ている。だから私を睨むのだ。
さて?なぜに私は怒られるのか?
昨夜のことなら、呼びつけて置いて来なかったのはそっちだし、なんかメッセージが届いたから帰っただけだし、もしかして、会えなくて寂しかった。とかいう返事を出さなかったから?
私が何も出来ないでいると、サローネの腕が私をちょっとだけ強く抱きしめて、私の肩越しに口を開いた。
「騎乗のままで失礼致します。私はこの度アンネローゼ様の乗馬家庭教師を仰せつかりました、元親衛隊サローネと申します」
サローネは、私を庇うようにしてくれたのだ。
王子の顔を見てようやくわかった。どうやら王子は、私の乗馬家庭教師を男と勘違いしてここまで来てしまったようだ。たぶん、元親衛隊の、のくだりまできいて、最後まで聞かなかったのだろう。サローネの顔を見て、声を聞き、自分の勘違いに気づいたらしい。が
「たとえ女性であってもその体勢は焼いてしまいますね」
王子にいわれてハッとなったが、いやいや、個人レッスンだから。それに、昨日私を放置プレーしておいて何を言うかな?それについてはスルーなわけ?
「申し訳ございまん。何分アンネローゼ様は乗馬が初めてとのことで、万が一に備えてこの状態なのです」
私が答えられないでいると、サローネが代わりにスラスラと答えを言ってくれた。それもそうだ、なんでこんな体勢?って聞かれたって、私は乗馬がどんなものか知らないんだもん。答えられるわけが無い。
「昨日、言ってくれれら良かったのに」
王子は不満だそうだ。
てか、昨日?
あれ、私言ったよね?王子の婚約者としての相応しい女性になりたいのです。って。それじゃダメってこと?具体的に何をします。って進捗かけなくちゃダメだったの?
「乗馬なら、僕が教えたかった」
甘ったるい声でそう言われると、なんだか私がいけない気がしてきた。いや、きっと私が悪いのね。って、思ってしまった。
「王子……ごめんなさい。でも、努力する私を見せたくなかったのです」
努力する姿なんて優雅じゃないから、悪役令嬢としてはそんなの誰かに見せられないのよ。陰ながらの努力。白鳥は水面下で頑張るのよ。
「アンネローゼ、あなたは僕に完璧な姿しか見せないつもりなのですね」
王子の指先が私の頬に触れ、そしてを取り口付けをする。そんなあなたが愛おしい。と
ぐぁぁぁぁ、甘い、甘ったるいよ王子。後ろにいるサローネが引きつっているのが肩越しにわかる。王子のツンデレでヤンデレな1人芝居を私と一緒に見なくちゃいけないなんて、とんだ災難だ。
「王子の婚約者として相応しい女性になりたいのです。いけませんか?」
とりあえず、目線を落としてみる。私ダメな子ですか?って仕草で訴えてみる。どうだ、王子。ヤンデレには響いたか?
「アンネローゼ、あなたはそんなにも僕のために努力を惜しまず、まして、それを人目に晒したくないと言うのですね」
あー、ヅカかよ!ヅカなんか?なんだそりゃ?手を握りしめてるよ、王子。ミュージカル調なんですか?このまま騎乗の体制で踊っちまうんですか?私は元JKなんで、そういうのなれてないんですけど?オタクはオタクでも、アニメとゲームと声優なんですよ。2.5次元はまだなんですよ!
王子に私の心の叫びは届かなかった。
誤解は解けたけど、放課後、王子と乗馬の訓練をする羽目になった。
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