68.そろそろ海が見えるぞ
「うっし、そろそろ迎えに行くか」
部屋の窓から見える夏の日差しに目を細める。
いい天気だな。出掛けるにはいい感じだが、クソ暑そうだ。
寝汗を落とすのに朝からシャワーを浴びて、そのままパンイチでリビングで朝飯を食べていたが、そろそろ出掛ける準備をする事にする。
尚、父さんと母さんは朝からデートで不在だ。
講習と試験は終了していたので、誕生日の翌日に免許証を発行した。
そのまま支払いも済んで納車済みのビッグスクーターをバイク屋で受け取って、乗って帰ったのが昨日。
そして休日である今日はサキと2ケツで海に行く。海に入って泳いだりはしねーけど。
いつものダメージパンツを履き、黒タンクトップに白シャツを羽織って外に出ると、熱気が全身を駆け巡る。暑ぃ。
そのまま停めてあるバイクに近づきメットインからヘルメットを出そうとバイクに触れると‥
「熱っ、白にしときゃ良かったかな」
ちなみにバイクの色は真っ黒だ。
バイクに跨ってサキから誕生日に貰ったキーケースを取り出す。
誕生日といえば、食事が終わって桜乃とサキを送るのに家を出て3人で歩いていると、部活帰りなのかジャージ姿の隣の家のスミレちゃん(13歳)が遠目に見えて、家に戻ってくると郵便受けにスミレちゃんからのプレゼントが入っていた。
『誕生日おめでとうございます。蓮華さん』とカードが添えられた袋で、中に入っていたのは少女漫画だった。
内容を軽くネットで調べてみると純愛物として有名な少女漫画らしい。スミレちゃんの中では一体俺はどうなっているのだろう‥‥?
「ツキー!わっ、これが買ったバイク?うん、格好いい」
サキの家に着いて電話しようとすると、玄関先で待っていたらしくサキが笑顔で片手を振りながらこっちに走って来る。
スカートは履いてくんなよと言った通りにパンツスタイルにしたようだ。
七分丈のスキニーデニムにスニーカー。
上はコットン生地の黒のタンクトップの上に、一枚で着ると横乳が丸見えになるような緩いグレーのタンクトップを重ね着している。
黒のキャップはヘルメットで髪が潰れるだろうから、それ対策か。
サキにヘルメットを渡して後ろに乗せると、走り出す前に声をかけてきた。
「‥‥後ろに誰か乗せるの、私が初めて?」
「あー‥やっぱり少し不安か?一応教習所で講師のおっさん乗せて走ったが、これの後ろに人乗せんのは初めてだなー」
そう言うとサキは機嫌良さそうに、
「ううん、全然不安じゃないよ」
と肩に手を置いてピッタリと密着してきた。
背中に感じる柔らかな感触に意識が持っていかれる。
「な、なあ‥‥サキ。そんなにくっつかれると、事故りそうなんだが」
「にひひ、馴れだよ馴れ」
「そっかー‥‥馴れかー‥‥」
「乗りながらいい感じの姿勢を模索するから、今はこれでね」
サキに密着されて上がった体温を誤魔化すようにドリンクホルダーに入れておいたコーヒーを口に含む。
‥‥ぬるくて不味い。
「ふぅ‥‥んじゃー行くか」
そんなこんなで走り出した。
「ところで、何で海にしたんだ?」
暫く走って信号も無い一直線になったところでサキに声をかけた。
そんなにスピードも出していないので会話もできる。
昨日の夜に、サキにバイクに乗せてどっか連れてってやろうか?と電話で言ったらかなり乗り気で『行き先はお風呂で小一時間考えてくるっ』と息巻いて、折り返しに伝えられたのが海だった。
日時も明日でもいいぞーと言った事により、今日行く事になったわけだ。
「こっちの海、見た事無かったからねー」
「成る程、それもそうか。砂浜とかも向こうだと日本海側だったしな。つーわけで、多分そろそろ海が見えるぞ」
周辺地図は頭に入れてきたから、そろそろ見えてくると思ったが、案の定海が見えてきた。
潮の香りが鼻を抜ける。
風が気持ちいい。
それと地図だけではなく、何でそんな風潮が出来たかは知らんが海って事で美味いパンケーキ屋も何軒か頭に入れてある。
「わー!海だー!ツキ、海だよ海!うーーみぃーーっ!」
「ははっ!落ちんなよ」
後ろではしゃいでいるサキの表情は見えんが、どんな顔してるかは何となく分かる。
こんだけ喜んでくれると連れてきたかいもあったな。
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