60. 意外とエグかった。
「あー‥‥疲れた‥‥」
学校から帰ってきてから早々にベッドへと倒れ込んだ。
告白というのは断るというのもあってか、される側も心労が溜まる。
今日は金曜なので、ようやく謎の告白コンボから解放された‥一時的にだが。
ちなみにサキに告白した子の名前を教えてから2日経っている。昨日も今日も告白されたが、もちろん断った。
「ほんとに何なんだろうな‥‥‥‥ん?」
ベッドに横になっていると、ポケットに入れたスマホが震えた。
短かく震えただけなので恐らくメッセージだろう。俺に頻繁にメッセージを送ってくるのは桜乃かサキか柊木あたりだが、その3人の誰かだろうか?
スマホを取り出すと‥‥
「真山?」
バイトで欠員でも出たか?
そう思ってメッセージアプリを立ち上げると
真山真帆:【極秘情報】
まるで意味が分からない。
葉月蓮華:どうした?まさか俺の時給が上がるとか?
真山真帆:葉月君が告白される件、あれの真相が分かったよ!
おお?マジか。って、何で真山が?
つーか時給はスルーか。
葉月蓮華:嘘告とかだろ?多分。ただ人数が多すぎるんだよな。
真山真帆:嘘告ね。ほぼ正解。あれね、2年のテニス部の星崎先輩が指示してるみたい。
葉月蓮華:は?星崎?
真山真帆:星崎先輩はさくのんにご執心みたいで、葉月君が邪魔なんだって
葉月蓮華:それで?
真山真帆:葉月君に彼女が出来たら、さくのんに構う暇無くなって、星崎先輩が接触しやすくなると
葉月蓮華:小学生みたいな発想だな。
真山真帆:自分の指揮下の子を葉月君の彼女に出来たら脅されて付き合わされてるとか言わせて評判落としたり、手を出すようにけしかけて、それで手を出そうものなら無理矢理襲われたって事にして停学やら退学にするのも視野にあったり。
葉月蓮華:前言撤回。意外とエグかった。
つーか星崎ガールズだったのか、あの告白してきた連中は。
星崎ガールズってのは星崎公認のファンクラブの‥‥いわゆる狂信者軍団だ。
星崎の言う事なら何でも聞く。
そういう風に星崎がした。
あいつは持ち前の王子のようなルックスと甘い言葉で気に入った女の子を籠絡する事に長けている。
どんな表情をすれば、どんな仕草をすれば、どんな事を言えば女の子が喜ぶかを知っていて、それを実行しながら自分の言いなりになるようにコントロールするわけだ。
ちなみにだが、『桜色のキス』のグッドエンドではこれに櫻井桜乃も仲間入りして、星崎の言いなりのお人形になって、星崎ガールズとも和気藹々と過ごしたりする。
真山真帆:ただ、ここが難しいところなんだけど、告白している人達が無理矢理やらされてるってわけじゃ無いっぽいんだよね。指示はされてるのかもしれないけど、動いているのはあくまで自分の意思みたいだから、星崎先輩の悪事として糾弾できない。
それはそうか。
あの残念さと安意が混じった表情は、星崎の役に立てなかった事への残念さと、星崎以外の男に手を出されるかもしれないっつーのを回避できた事からくる安意ってところか。
真山真帆:悪事といえば、体育祭の時の色別対抗リレーの青チームに転んだ2年の人いるじゃない?
葉月蓮華:ああ、いたな。
真山真帆:あの人と仲の良い友達が星崎先輩が手籠にしている人達の中にいるから、ひょっとしたらそれ繋がりで脅されたりしてたかも?映像で確認したら転び方が不自然だったし。怪我をしないように綺麗に転んでると言うか。これはまだ裏は取れてないけど。
手籠て、なかなか渋い表現するな。
しかし‥‥そうだとしたら中々に狡い手だ。
わざとだとバレても叩かれるのは転んだ子だし、転んだ子は仲の良い友達を気遣って何も言えない。
開き直って脅されたと言っても、証拠も無いだろうし恍けて結局立場が悪くなるのは転んだ子となる。
白雪も同様だ。
イライラしてきた‥‥
星崎の奴、そうか。そこまでするか。
俺は告白に釣られる事はないが、成果が出ない事に焦れてエスカレートしてさらに何かしてくるかもしれんし、星崎とその取り巻きだけで完結させて俺に嫌がらせをするならまだしも‥‥
だったらこっちにも考えがある。
俺は、お前のほぼ全てを把握している。
‥‥家庭環境とかな。
明日は休みだし、保険かけに行くか。
真山真帆:ちなみに、わかにゃんが主体になって情報仕入れるのに盗聴器とか使ったりして色々と大変だったから、ちゃんと労ってあげてね。
うむ。今度何か甘いもの食いに連れてくか。
あるいは‥‥また、何か作ってやろうかな?
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