22.俺の右手が


さて今週から始まった部活動見学で入学関連のイベントは終わりだな。


今は放課後

桜乃はどっか部活の見学に行くのだろうか。


『桜色のキス』だと



野球部の見学に行くと飛んできたボールから準レギュラーのピッチャーに庇ってもらって、その姿にキュンとした桜乃はマネージャーへと志願する。


茶道部の見学に行くと夕日と一緒に喋っていたら遊びに来たのなら帰れと堅物君に言われ、それにムッときた桜乃が言い返し、なし崩し的に茶道部へ入部する。


テニス部の見学に行くと歯が光るキラキラな先輩に見学者の中で君が一番美しいだの色々と砂糖まみれになりそうな台詞を吐かれ続けて、その王子様スマイルと甘いセリフにときめいた桜乃はテニス部へ入部する。




‥‥‥あれ?待てよ


よく思い出せ、桜乃が野球部の見学に行かなかった場合だ。


地の文で確か




クラスの女子が校庭を通りかかった際に野球のボールに当たって怪我をしたらしい




あかん!!!


桜乃は‥まだいる!

「桜乃ちゃん」


「え?何?蓮華君」


「部活の見学ってどっか行く予定あるか?」


「今のところは無いよ?」


「そうか、分かった」


そう言って俺は急いで教室を出た。


「え!?蓮華君!?」


桜乃が呼んでいたが今は構ってる余裕はない。



急いで校庭まで行くと‥うちのクラスの女子が歩いているのを見つけた。名前は確か大前日向だったか?

150センチも多分ない身長、黒髪ショートの内巻きボブに眠そうな目

俺だけじゃなく、男子全般に対しておどおどしてたから何となく覚えてる。


視界の端で野球部がボールを打ったのが見えた

間に合うか!?


「危ねぇ!!」


「え?きゃ!!」


右手でボールを弾いて左腕で大前を胸に抱え込んだ


い‥


いてぇぇぇぇぇえええ!!!


俺の右手がメメタァってなったわ


あ!大前は?


「大丈夫だったか?」


男子苦手っぽいのでなるべく笑顔を心がけるが


「ひっ‥!」


クソ痛いのを我慢して無理矢理作った顔は余程怖かったらしく逃げていった。


あー‥マジいてぇ‥

とりあえず保健室行くか‥




翌日、一応病院に行って骨に異常は無かったが腫れたので湿布貼って包帯巻いて教室に入ると


「あれって喧嘩かな‥」

「えー、怖ーい」

「葉月君ってやっぱり‥」


ヒソヒソ話は聞こえないようにしような‥



するとサキがすごい勢いで近付いてきた


「えっ!?ツキどうしたのそれ!?大丈夫?」


んー‥何と言えばいいのか‥

大前は暗い顔して俯いてるしなぁ


「派手に転んだ」


「‥ふーん?」


じとっとした目で見てくるので、とりあえず目を合わせてみると5秒くらいでサキがバッと顔を逸らした

ふっ‥勝った


「‥授業、ノートとれないけど平気?」


「ああ、まだ教科書読んでりゃ余裕だな」


「流石ツキ‥必要だったらノートコピーするから言ってね」


「おう、さんきゅー」




その後は桜乃が昼飯を食わせようとしてくるのを躱して柊木と学食に行ったりしつつ放課後になった


今日は委員会があるが、まあ片手でも水撒いたり雑草抜いたりはできるだろ


サキは大前と何か話しているが一応声かけるか


「サキ、行くか?」


「あっ、ごめん!ちょっと遅れるかも」


と言うので1人で校舎裏の噴水のある花壇まで行き、ベンチに座ってぼーっとしていると大前が走って来た。




「あ、あの、三崎さんに委員のお仕事代わってもらって、お、お話があります」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る