私は私じゃない

水戸 遥

プロローグ

私はどんな顔をしているんだろう。

そう呟きながら、ビル街を俯き歩く。

なんでこんな人生だったんだろう、いつの間にこんなに私は自分を恨んでいるんだ。

そうだ、そもそも私はいつからこんなに自分を蔑んだ目で見始めたんだろう。

夢を追いかけながら、その夢から逃げるようになったんだろう。

もしかしたら私は生きているのがダメな人間なのかな。

あの日私に声を掛けてくれたあの人は、とうの昔に縁を切った。

あの時に人が


そんなことを思いながら私は足元の群衆を見遣る。


「あ、この時間でも呑んでるのかな?あの人足元がフラフラだよ……」


「あの2人組はカップルかな?でも、少しギスギスしてる感じ…いや、まだ付き合いたてで距離感がわかってないのかな……?」


「あ、あそこの家族。あの子、すごい笑顔…いいなぁ、私もそんなふうに笑いたかったなぁ……でも」


ごめんね。その笑顔を今から消すことになっちゃうと思う……

けど、いつかその記憶は消え去ると思うから我慢してね。

いつか、楽しいことがあるといいね……

私はそう虚空に言い残し、足を一歩前へ進めた。

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