見たことのない生き物

@wirako

一話完結

 友達と遊んだ帰りのことだ。水たまりで、見たことのない生き物を発見した。


 たくさんいるうちの一匹を、ちょんと摘まんで観察してみる。


 全体的に細長いシルエットだ。感触はちょっとやわらかい。表面には至るところに細かい毛が生えている。


 前肢まえあし後肢うしろあしが宙をかきはじめた。肢の先端はいくつも枝分かれしていて、それぞれが生きているかのように、くねくねとうごめいている。


 急に生き物が鳴きだした。キイキイ、ワオワオ、ギヤギヤ……鳴き声に合わせて顔がぐにゃぐにゃ曲がる。


 次第に、生き物の表面がじっとり湿ってきた。外敵に対する毒だろうか。目や口からも液体をにじませている。


 生意気な奴め。こらしめてやろうと思って頭部を軽くいじった。


 あっ。


 力加減を間違えて、頭部がもげてしまった。


 けいれんする胴体から、体液がとろとろ垂れてくる。それに驚いた勢いで、摘まんでいた胴体をつぶしてしまった。水がはじけたような音だった。


 生き物は、ぴくりとも動かなくなった。


 死んでしまったようだ。


 結局この生き物はなんだったのだろう。どうしても気になったので、もう一匹を捕まえて家に帰った。


 お母さんに見せると、笑顔で名前を教えてくれた。


 「それはね、ニンゲンっていうのよ」

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