妄想勇者の英雄譚 〜元中二病の俺が異世界召喚でスキル「妄想再現」を手に入れたら最強になりました〜
ゆかた
第1章 王国編
プロローグ
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ゴゴゴゴーーーー
ここは火山地帯のような岩盤で出来た場所。空は薄暗く、しかし辺りは朱く染まっている。
その場所の大きな岩の上に俺はいた。そして、その目線の先には辺りを埋め尽くす数多の巨大なモンスターたち。
そして空には漆黒の巨大な蛇のようなモンスター。さらにその後方には超巨大な人型のモンスター。そのモンスターには左右に二枚ずつ、合計四枚の漆黒の翼が生えている。
「フッ……あれは邪竜。後ろにいるのは邪神か??」
俺は両手をズボンのポケットに入れ、鋭い目つきに低い声でそう呟く。
邪竜なんてモンスターは伝説モンスターだし、邪神なんて存在は神話の域だ。そんな存在が辺りを埋め尽くすほどに大量にいる。普通なら絶望どころか気が狂い、自害してしまうだろう。しかし……俺にはちょうどいい相手だ。
「大した数だな……だがまぁ、この俺【爆炎の勇者】には関係ないがな……」
そういい、俺は右手をポケットから出し、魔力を込める。俺の魔力はこの世界でも規格外と言っていいほどの量と質だ。それが俺の右手に集中する。
すると右手から赤い魔法陣が形成される。そして、高温高熱の炎が出現。あまりの魔力に辺りにその影響で炎が蔓延る。
「エターナルフレイムバースト!!」
俺は右手を敵に向けてから発動する魔法名を唱えた。詠唱などいらない。この俺なら無詠唱で魔法を発動できる。
炎の最上級魔法【エターナルフレイムバースト】を発動。炎の光線が辺りを埋め尽くすモンスターたちに向かっていき、そして炸裂。
――――ボーーーーーン!!!!
というとんでもない炸裂音がして、その衝撃が俺まで伝わってくる。
「さらに……ギガティックブレイク!!!!」
無属性爆発系最上級魔法【ギガティックブレイク】を発動。さっき使用したエターナルフレイムバーストの魔力と炎を利用し、周囲を爆発させる。
「これで少しは数は減ったか?……では、いくぞ」
そう言い、俺は両掌を合わせる。
――――パーーン
その瞬間、両手に途轍もない魔力が集まり、そこから炎が現れ、その中から赤い剣が出現する。
――
この世界最上級の剣であり俺の相棒だ。その剣を構え、俺はモンスター群に突っ込む。
炎を纏い、俺は焔で敵を斬る――斬る――斬る。だが邪竜も黙ってはいない。俺に向けて攻撃を仕掛けてきた。
「チッ!仕方ない。アルティメットフレイムギガエクスプロード!!!」
俺は左手を上空に向けてから魔法を発動。巨大な魔法陣が現れ巨大な炎の球が出現。
炎の最上級魔法【アルティメットフレイムギガエクスプロード】を攻撃してきた邪竜に向かって放つ。
「ギャアアアアアア!!!」
邪竜が声を上げ地上に落ちてきた。しかし、今度は邪神が攻撃してきた。視認さえ不可能な攻撃だ。
「チッ、仕方がないか。タイムアクセラレイト!!」
俺は左手で左目を隠し、右目に魔力を集中。目が赤く輝き、時間停止の魔法が発動し、時間が止まる。その隙に俺は邪神からの攻撃を避ける。
「これで終わりにしてやる!!必殺!
俺の足元に巨大な魔法陣が現れる。そして、煉獄の聖なる英雄の炎が辺りを埋め尽くし、世界が一瞬で変わる。そして、その炎が静まった後はモンスターの姿はなかった。
「フッ……やはりこの俺に勝てる存在なんていなかったか……」
俺は一人残った世界でそう呟いた。
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―――カア、カア、カア
夕日が差し込む夕方の住宅街。その一角に俺、「爆炎の勇者」こと
「フッ……決まったな……」
俺は目を細め、手を額に当ててそう呟く。その姿を見ていた子供はお母さんに「ママ~。あの人おかしいよ?どうしたんだろう?」と聞き、それに対してお母さんが「ど、どうしたんだろうね~?さぁ、お家に帰りましょうか」と応えている。が、俺はそんなの気にすることなく目的の場所に向かう。
中二病――それは中学二年生頃の思春期に発症する痛い発言や行動のこと。
例えば、歌詞も分からないのにいきなり洋楽を聴き始めたり、味も分からないのにブラックコーヒーを飲んだり、知らないことをあたかも知っている風に言ったり、自分には特別な力があると思い、「右手が疼く……」と言ってみたり、アニメの登場人物になりきってみたり、自分専用の技や能力を作ってみたり……
そんな中二病のなかでも邪気眼系と呼ばれる「自分には特別な力がある」という中二病に俺はかかっていた。
そうかかっていたんだ。この時までは……
―――この日。俺が中学三年生の頃の秋。肌寒くなりもうすぐ冬になろうかという頃、受験勉強そっちのけで世界にいるであろう闇に集うモンスター退治に出かけた時だ。
「む、あそこにいるのは光の貴公子ではないか」
俺は邪竜と邪神という強力なモンスターを倒し、地元の駅の方に向かっていると駅の近くで同じ中二病友達の「光の貴公子」こと
だが、俺は気にすることなく光の貴公子に声をかけた。
「よう!光の貴公子。ここで会ったのは何かの縁だ。一緒にモンスター退治に出かけようではないか!」
俺は声高らかにそう言った。だが、向こうから帰ってきた言葉はいつもとは違うものだった。
「よう!春樹じゃないか。こんなところで奇遇だな」
「む、いつもと違うではないか。なぜ俺のことを二つ名で呼ばないのだ?」
いつもはお互いの二つ名で呼び合う。俺の二つ名はさっき言った通り「爆炎の勇者」だ。炎、勇者といったら完全に主人公ポジだからな。俺はこの世界では炎を操る勇者で、規格外の魔力と質、そして能力を有している最強の存在だ。
かっこいいだろ!!
そして「光の貴公子」は隠してはいるが実は王族で、光や聖属性の強力な魔法を使用することができる。その権力を横暴に使うようなことはせず、民を守るために戦っている。そんな尊敬できる人物だ。
「ああ、悪いな。ゲームはまた今度な」
完全にいつもとは違う発言に俺は苛立ちながら、
「ゲーム?何を言って……」
「ああ、こっちにいる女の子は俺の彼女の愛佳だ」
「か……彼女??」
「そう、彼女」
そう言われ、その女の子――愛佳ちゃんから自己紹介をされる。優しげな声に長くきれいな黒髪、整った可愛らしい顔から清楚なイメージを受ける女の子だ。
「この人は琢磨の友達?」
「そう、俺のゲーム友達だよ」
「ゲーム友達?俺とお前は……」
闇に集う凶悪なモンスターを倒すことを目標にしている仲間だろ。
そう言おうとしたがそれを琢磨が遮るようにしてこちらに近づきながら、
「あのなあ、春樹。俺は…………そういうのはもう卒業したんだよ」
「!!??」
俺の耳元でそう言った。
「俺は可愛い彼女が出来てリア充になったんだよ」
「……っ!!」
リア充……そんなものは妄想でしかない。そう思う代物だ。
俺が混乱しているのを気にすることもなく琢磨は続ける。
「お前も彼女作った方がいいぜ。その方が何倍も楽しいし……まあ、そんなことを続けているうちは無理かな~……俺の方が先に大人になっちまったな」
「……っ!!」
「まあ、頑張りたまえ。爆炎の勇者くん」
そう言って琢磨は俺から離れ彼女のもとに行き、そしてキスをした。
「なっ……」
お、俺もまだしたことないのに……
「た、琢磨?どうしたの、こんなところで」
「ごめんごめん、愛佳があまりにも可愛くて」
「もう……」
それは完全に恋人同士の雰囲気だった。
「じゃあな、春樹」
「それじゃあ」
そう言って去っていく二人を俺はただ見ていることしか出来なかった。
俺はこの日を境に中二病を卒業した。
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