死にたいと願った日に、いきたいキミと出会った

かわら なお

 

死にたいと願った日に、生きたいキミと出会った。

よくあるストーリー。

この世の終わりみたいな顔で、この狭い国から逃げ出そうとした。

空を飛んで楽になりたかった。

そんな時、キミに出会った。

驚いた顔をして、顔も声も知らない俺に向かって走って止めたキミは「危ないよ」と言った。

『何してるの⁉』でも『こんなことやめなよ』でもない言葉に安心した。

よくある笑顔を引っ提げて俺は「ありがとうございました」

ただそれだけ言って走って逃げた。

キミは少し驚いた顔をしたけど追いかけてはこなかった。

翌日、キミとよく似た人が死んだと新聞の切れ端が告げた。

小さな小さな記事だった。

飛び降り自殺だった。

よくある普通の死に様だと思った。

他人事で書かれた記事にキミを知る人はいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死にたいと願った日に、いきたいキミと出会った かわら なお @21115

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る