天才だった姉と俺

かわら なお

 

俺の姉はいわば"天才"だったのだろう。

天才だった姉は俺にとっては障害物でしかなかった。

比べられる能力、才能。

全てにおいて姉に劣っていた俺は、見事なまでにひん曲がっていった。

世界は姉を中心に回っており、

家族にとって俺は、居ても居なくてもどうでもいい存在だった。

それが一変、姉が死んで世界が変わった。

家族も、そして俺自身も。

姉が今まで背負ってきた期待、能力。

今まで知ろうともしなかった。

俺が何気なく言い捨てた言葉の数々。

まるで一方的に殴られてるみたいに痛かった。

今まで気にもしてなかった他人の視線が怖くなった。

だから、必死に頑張った。

歯止めは効かない羨望の眼差しに吐き気がした。


気が付けば俺は姉が死んだあの場所に来ていた。

夕日が綺麗だった。

空を見上げたのは久しぶりで、何故だか涙が出た。

ずっとここに居たかった。

だから…


今まで守られてたなんて知らなかった。

ごめん。

ありがとう、姉貴。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天才だった姉と俺 かわら なお @21115

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る