『小さなお話』 その138

やましん(テンパー)

『眠れぬ夜のために』


『これは、非常に質の悪い、フィクションです。』



           

            🐈



 眠ることができない夜は、深い。


 睡眠導入剤も、効果が少ない。


 横になっても、むかしのいやなことばかりが思い出される。


 相手が恨めしいとも思うが、自分に非がないとも言いがたい。


 確かに、病気も自分の責任だ、と、テレビの中で、チアキ君が言っていたのは完全否定はできない。


 しかし、それでも、こちらから職場を出て行ってやったことは事実だし。


 それで、人生が狂ったことも間違いではない。


 もし、成功したら、おどろきもものきさんしょのき、だろう。


 まあ、あまり気にしても、しかたがないのは、事実だ。


 失敗とは、未だ成功していないだけのことだから。



              🛰



 『もしもし・・・・やましんさん、・・・おおい・・・あなたあ。生きてますか?』


 『うあ!』


 何かが突然ぼくの顔を覗き込んできたのです。


 猫ちゃんのような。でも、ひげがないぞ。


 美人ではない、とは、言えないです。


 『あ、びっくりしないでください。あたくしは、『眠れぬ夜銀河系救済宇宙連合組合』のエージェント、ウタ、ですから。現在、地球附近を巡回相談中です。あなたの意識は、スキャンしましたあ。苦しそうですね。ちょっと、宇宙旅行とかいかが?』


 『はあ? 宇宙旅行・・・・・とな。うちゆうりよこう、とな。』


 『はあい。そう、宇宙旅行。まあ、宇宙散歩ですね。』


 『帰ってきたら、千年経ってて、やな知り合いが目出度く、絶滅してるとか?』


 『お望みならば、それも可能です。ただし、この星の千年後は、宇宙ゴキの支配下ですよ。』


 『うちうごきさんとな。。。。。。。ふう。まあ、さあささああああ、そ、そこまでは、いいです。こんやだけのあんぜんんんななあななな、さんぽならららららららら。ふあ~~~~~・:::。.。o○』


 『あなた、だいぶ、ぶれてますよ。よろしい、では、あけがたまで、地球の周囲を回りましょう。あ、これは、ボランティアなので、料金は不要です。地球人の飛行機よりも、はるかに、安全です。』


 

  窓の外に、小型のタクシーみたいな乗り物が来ましたあ。


 『はい、どうぞ。』



 ぼくらは、はるかな、お空の上にあがりました。


 『うはああああああああああああああああああああああああああ。すほい。』



 それはもう、美しいなあ・・・・・地球は。


 こんなのが、宇宙に浮かんでるんだ。



 でも、回りに、なんだか、いっぱい、いるのだ!


 『これは、おおかた、地球の人工衛星です。でも。秘密のがいっぱいあります。あそこ、あんらく合衆国が、秘かに打ち上げた、核ミサイル衛星です。ない事になってますが、しっかり運用中。いつも、発射要員が3人が待機してます。』


 『じどうじゃないんだあだああ。』


 『そうだ、だです。機械は、よく、ミスしますよ。人間がいたほうが安全。で、あっちがわが、敵対している、あんじゅう共和国の、核ミサイル衛星です。こちらは、全自動式で、地上から監視しています。』


 『ぬあああんと・・・・・ほんとですか?』


 『ね、ちゃんと、あるでしょう? これだけではありませんよお。もうちょっと高度を上げますね。』


 びゅわ~~~~。


 地球が、こころもち、小さくなりました。


 『あそこが、うどん連合共和国の、攻撃衛星です。あの、さっきの核衛星を狙います。で、ほら、あっち側にあるのが、あんらく合衆国の攻撃衛星ですよ。あんじゅう共和国のもあります。ああやって、みんなで睨みあってます。そうして・・・・・』


 ぼくらの小型宇宙艇は、ものすごい速度で、地球の反対側に回りました。


 『こいつは、普段は重力制御で動きます。ほら、あそこ、ね。』


 『ね・・・・・・・・なんにもないです。』


 『ああ、人類には見えないのですね。可視化します。』


 ななな、なんと、あの【G】型の、ものすごく巨大な宇宙船がいます。



 『あれが、宇宙ゴキさんの母船。まだ、本格的な地球征服にはいたりません。まあ、これからです。今日に明日にどうなるというものではないです。《明日出来ることは明日でよい》が、かれらの信条です。』


 『いや、そそそそ、そおれは、いいなあ。でも、よくないよなあ。』


 『あなたのお国のもありますよ。ちょっと、移動して・・・・ほら、見た目は、ごく、ノーマルな、偵察衛星なんですが、あれには、人類史上最強のレーザー光線銃が搭載されてます。極秘。もし言っても、だれも信じない。首相様も御存じない。うっかり知ったら、暗殺されるかも。』


 『そういう情報は、要らないです。でも、いつ、使うんだろ? ううん・・・・・でも、いっぱいいるなあ。』



 『はいー。もう、地球の周囲は過密状態です。でも、宇宙ゴキ以外にも、人類には見えない種類の宇宙船がたくさんいます。ぶつかっても、物質どおしが反応しませんから、けがもしない。まあ、幽霊みたいなものです。』


 『はあ~~~~。』


 『それに、やましんさんが書いたみたいな、地球の廃棄済み人工衛星だけれど、宇宙ごきとか、いろんなものが、実験用に意志を与えたのも実際います。』


 『うそだろ。』


 『ほほほほほほほほほほ。南極を見に行きましょう。』



 宇宙艇は、地球を南に、軽々と、つっきりました。


 『はい。南極。大きいでしょう。』


 『ううん。すっごいな。』


 『これが、全部、欲しくてしょうがないお国もあります。最近、氷が薄くなって、雪ではなく、雨が降るようになった場所もあります。』


 『下には、なにが埋まってるの? あとらんてぃす、とか?』


 『まあ、それはないですね。ここが緑の大陸だった時代には、まだ、人類は活動していませんでした。ただ、宇宙ゴキさん、あたりは、調査に入ってましたよ。』


 『はあ。。。ごき、おそるべし。』


 『グリーンランドに飛びましょう。』


 『また、北ですか。』


 『はい~~~。・・・はいな。到着。』


 『早いなあ。ああ、ここも、大きいなあ。でも、これは、残したいね。開発しないほうがいいかも。ふあ~~~~。』


 『まあ、『ほしい!』と、言った大統領さまもいますし。』


 『はあ、ここが全部、ビルやミサイル基地で埋まったら、なんか、幻滅しそう。』


 『ほほほほほほほほほほ。まあ、あなたが決められるわけじゃない。』


 『そうですねえ。何もしない、何も手を入れない、誰も戦争しない。そういうところは、必要だなあ。こうして地球見ても。こんな、宝石に、傷なんか入れたくないよな。』


 『そこは、価値観の違い。あららららららあ。・・・あ、これは、困った。』


 『どしたの?』


 『ちょっと、移動します。あああ。あれ、ほら、あれ。』


 『なんだ、地球から何かが飛んでくる。小さいけど。みっつ・・・・』


 『ICBMです。なんとおお。核搭載。目標は、太平洋のどまんなか。あ、いっこ、壊れた。途中で、落下。うなあ・・・まいったな。』


 『はい?』


 『やましんさんのおうちあたりに、落下します。』


 『そりゃあ、こまるじゃない。』


 『はあ・・・・はい。到着、爆発。』


 『うそ・・・・・』


 『あなた、運がいいですね。』


 『そういう問題ではないよお。あ。あ、あっちこっちから、一杯、飛び出した。おわ~~~~~。すごい、ミサイルの花火みたい。あららら、人工衛星同士が、戦ってる。あ、ミサイル、撃った。あ、爆発した。あら~~~~~~~。』


 地球上には、ものすごい、美しいほどの、赤や青や黄色の、大きな雲が、あちこちで立ち上がります。


 やがて、それらが、流れて行き、混ざり合います。


 巨大な、カンバスに、絵の具をばらまいたみたい。



 『ご愁傷様です。地球文明は、今、終わりました。』


 『うそ。え? どうするの。え?』


 『まあ、生き残った人は、いるかと思いますよ。シェルターもあるし。帰りますか? それとも、一緒に来ますか?』



 『うむ。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。』



 眠れぬ夜が、続くので、ありました。


 



   ******************************


                             END














 









  










 


 


 





 


 


 





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