死月王の泉
鍋島小骨
夜族狩り
人里離れた森の奥深く、夜族の王の玉座があるという。
その王こそは不死者の中の不死者、夜闇を歩く
古来、数々の
森の中には時間がなく、夜族とその王は永遠を生きる。そのため
「でも毎年、兎にも鹿にも子供が生まれます。時間が停まっているなら、新しい子は生まれないはずでしょう?」
不思議に重さのない歩き方で森の中を進みながら、銀髪のエリューカはそう言った。腰まで伸びた細い髪は見たこともないような銀色をしている。森歩きに慣れているとは思えない色白の細身だが、抜け道に詳しいというのは嘘ではないらしく、迷うことなく進む方向を決め、その通り道には確かに毒沼も草木の化け物もない。
「王が眠っているのならいいのにね」
それならあなたが倒すのも簡単でしょ、とエリューカは、ほんの少しだけ笑ったようだった。
片親は
名無しの男もそのようにして吸血鬼と殺し合う
それならば、一番力が充実している時期に吸血鬼の頂点にある者と
ここからが
そうした静かな森の中で、名無しの男はエリューカに出会った。
銀の髪に泉のような淡青の瞳、抜けるように白い肌と、王都で垣間見た病身の貴族のような細い身体。呪いの森にまるで似つかわしくない長衣だが、山歩き用の靴は履いているおかしな服装だった。
――迷ったのですか。森の出口まで案内しましょうか。
そう声を掛けてきたが、魔物が化けている可能性もあった。名無しの男は一瞬考え、しかし隠さずにこう言った。
――おれは
すると月光のような青年は、思いがけず笑み崩れて、ようこそ、と答えたのだった。
――私も家族を
こんな美しいものは見たことがない、と名無しの男は思った。
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