第23話 次の町
次の町へ行く準備を商隊はしており、そのそばでルイスとローズが話をしているのを、俺は何となく眺めながら考えていた。
「次はどこに行くの」
「さあ。私はただついて行くだけだから。
それよりライアン様達は、次はどこに向かうのですか?」
「どうだろう。一応隊長はフィーだからなあ」
一応で悪かったな。
俺はデレデレするルイスを見ながら、まあ確かに、これまでルイスがモテる事は知っていたが、いつも女の子から熱烈にアタックされているのを見かけたり聞いたりしていたなあ、こいつがデレデレするのは初めて見たなあ、と思っていた。
ローズは確かにかわいいと思う。スタイルもいいし、明るそうだ。
なのに、どうしてか頭の片隅に警告ランプが灯るのだ。
「ううん」
「どうしたんですか、フィー隊長」
ガイが話しかけて来た。
「ルイス副隊長に先を越されて悔しいとか」
「違うよ。第一俺は、女の子は諦めてる」
「借金も何のそのという相手が現れるかも知れないし、返してくれる金持ちの娘が現れるかも知れないじゃないですか」
「そういうやつは、怖いんだよ。なんか、クラレスに通じるものがあるだろ」
「ああ……まあ……」
ガイは視線を泳がせて、咳払いをしてから会話を一から始めた。
「どうしたんですか、フィー隊長」
今の会話が無かった事になった。
「ルイスには悪いけど、やっぱりローズは怪しいと思うんだよな。というか、商隊がかな」
「ううん。行く先々で事件に遭うからですか。それに、事件の時の行動も、後を追って行った商隊の行動も」
「証拠がないんだけどね」
そして2人で、考え込んだ。
「現行犯逮捕しかないか」
俺は地図を思い浮かべ、そして、ルイス達に近付いた。
「ルイス、決まったぞ。
この先の候補は3つ。その内の2つには、演習中の軍がすぐ近くにいてるから、警備に回ってもらえることになった。だから俺達は、残りの1つ、ノフォークスに向かう」
「ノフォークス?」
ルイスが訊き返す。
「ああ。この近くが危ないという事で、急遽徴収官が急いで派遣されたらしい。未徴収で、まとまった金のある所はそこくらいだ」
ローザはにっこりと笑い、
「気を付けてくださいね」
と小首を傾げてルイスを見た。
「ああ。ローズ達も気を付けて」
それでローズは、仲間のところに戻って行った。
商隊を見送ると、俺達は急いで馬に飛びついた。
「何、何!?」
目を白黒させるルイスに、いいから急げと急き立てる。
「しかし、軍が近くで演習しててラッキーだったな!」
「んなわけあるか」
「へ?」
「急ぐぞ。これでノフォークスに盗賊団が現れたら……」
ルイスも、おかしいとやっと気付いたらしい。
「どういう事だ?」
「嘘だよ。演習してる軍の話も、一帯の町が徴収を急いだのも」
「なっ!」
「はいはい、行きますわよ、ルイス副隊長」
察したロタが、ルイスの馬を蹴り飛ばす。
「うわっ!」
「最短距離を急ぎます」
ガイが言って、先頭に馬を進めた。
「来たら捕まえる。それだけですね!」
マリアが笑う。
「ま、色々あるのが人生ってもんよ。酒なら付き合いますぜ、キヒヒ」
ゼルが言って、馬を進めた。
「……」
「まあ、行こうぜ、ルイス。着いたら話す」
俺はルイスに声をかけ、馬を急がせた。
当たってくれれば任務的にはありがたいが、外れてくれた方がいいような気もした。
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