SWORD BALLADE ―剣戟の譚詩曲―

玄野 黒桜

プロローグ

プロローグ

 その島々は“ウィリデカルディア諸島”と呼ばれていた。


 ウィリデカルディア諸島は周辺大陸から離れていたこともあり独自の文化を築き、やがてその中から興った“テラ・エメリタ教”という宗教が信仰されるようになった。


 島々に暮らす様々な種族からはいくつもの国が生まれ、ある国は種族のために、ある国は大陸に覇を唱えるために、時に手を組み、時に争い、消えていった。


 そうして様々な国が群雄割拠する戦乱の時代の中であるとき一つの国が生まれた。


“フィーレンス王国”


 小国の中でも更に弱小だった貴族の三男だったベルトランド・フィーレンスが興したその国は瞬く間に周辺諸国を飲み込み、ついにはウィリデカルディア諸島統一を成し遂げた。


 テラ・エメリタ教はその偉業を讃えて彼を『神々に認められし王の中の王』と認め、フィーレンス王国もまたテラ・エメリタ教を国教と定めてその名を“フィーレンス神聖王国”と改めた。


 それから400年、大陸から争いは無くなり人々は平和を謳歌していた。


 だが、流れない水が淀むように、人々が気付かない間に国は歪んでいっていた。教会の権威は落ち、王権は日々失われ、貴族たちは政争に明け暮れ、騎士たちは堕落していく。人々の間には知らず閉塞感が広がっていた。


 そんな帝国暦398年、王都フィーレディア近郊の小さな村パ・ルドゥアで一人の男の子が産声を上げた。


 小さな村の村長の四男として生まれた男の子がいずれ国中に名を轟かせるとはこのときはまだ知る由も無かった。

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