エッセイにも満たないつれづれ散文

小豆沢さくた

音楽(クラシック・ジャズ・他)

ピアノを弾いてみた

ピアノ弾けないコンプレックス

 エレクトーンを習うのは楽しかった。

 しかし、世間では圧倒的にピアノ人口の方が多く、周りの友達もエレクトーンを習っている子は少数派で、楽器を習うほとんどの子はピアノだった。


 学校にある鍵盤楽器はピアノが主で、ピアノを習っている子は休み時間などに、モーツァルトのトルコ行進曲なんかをばんばん弾いている。

 エレクトーンの曲はピアノで弾くと変だし、何よりピアノは鍵盤が重くて弾けないし、いいなあ、ピアノも習っとけばよかったなあ、合唱の伴奏を担当してみたかったなあと、学生時代はずーっとピアノ弾けないコンプレックスを抱えていた。


 そこで家にエレクトーンの最新機種があったらまた違ったかもしれないが、やりたいことをやるには機能が足りない子ども向け入門機種しかなかったので、さらにテンションは下がる。

 ピアノの楽譜をこっそり買ってエレクトーンで練習するも、やっぱり違う。求めているものはこれじゃない。


 エレクトーンの先生に、今からピアノを習うことは可能ですか? と相談したこともある。

 鍵盤の重さが全然違うから、ピアノからエレクトーンへの移行はありだけど逆は難しいからやめたほうがいい、と言われ、完全に諦めるしかなかった。


 エレクトーンは通算七年間習っていた。大して巧くならなかったが、私の音楽の基礎はここで作られた。



 社会人になり鍵盤楽器自体から離れていたが、とある演奏動画を視聴したのをきっかけに、エレクトーン熱が一気に再燃してしまった。

 なんやかんやで当時の憧れだった機種(中古で、当時からしたら信じられないくらい安くなってたやつ)を手に入れ、エレクトーン復活を果たした。


 そうしたらなんと、一緒にピアノ弾けないコンプレックスも復活したのだ。

 これにはびっくりした。

 なんてしつこいんだろう自分。諦められなかったのか。


 しかし今は自分で取捨選択ができる大人なのである。自己流で楽しむだけなら誰も文句言わないし、もう電子ピアノでいいから買う! と、ピアノ初心者的にお値段、デザイン、鍵盤の感触、総合的に満足できるものを見つけて購入に至る。


 その時のピアノ屋さんで紹介してもらったのが、今習っているピアノの先生である。


 私は鍵盤楽器経験もあるし、バッハがやりたいです! という明確な目標があった。

 しかし、いきなりバッハは無理だから、プレ・インヴェンションとハノンから。あとピアノらしい曲も楽しいですよと勧められ、ブルグミュラー25の練習曲も同時に取り組むことになった。


 弾けば弾くほど、エレクトーンとピアノは違う楽器であることを実感する。

 ついで言うなら、家にある電子ピアノと先生のお宅にあるグランドピアノも、全然違う楽器である。

 また、なかなかエレクトーンを弾く時の癖が抜けず、最初の頃は「ピアノの弾き方」がわからなくて苦労した。しかし徐々にわかってきて、今ではピアノが楽しい。


 トルコ行進曲はまだ弾けないが、インヴェンション13番を合格した時、あ、これはもうピアノ弾けないコンプレックス克服したかも、と思った。

 そこそこ難易度のある有名曲が弾けるようになったことで、私の中のピアノ弾きたかった欲が満たされた気がする。もちろん、まだまだ弾きたい曲はたくさんあるし、レッスンは続けていく。



 子どもの時に叶えられなかった夢を、大人になってから取り戻している。今は、エレクトーンもピアノも弾けてとても楽しい。

 いつかまた、エレクトーンも習いに行きたい。

 下手の横好きだけど、それでいい。弾けなかった曲が弾けるようになる喜びは快感だ。


(20141203)

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