正解のない世界

 2016年の本屋大賞受賞作「鋼と羊の森」でも書かれていて、そうそうと深く頷いた案件。


 クラシック初心者がこれからクラシックを聴こうと思って、とりあえず手に取ったCDを聴く。

 その後少し勉強して、同じ曲でも指揮者や奏者によって演奏が違うと知って、違うCDも聴いてみるけどやっぱり一番最初に聴いた演奏が自分の中の基準になってしまう。という話。


 バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」は、私が聴いたのはモダン楽器による演奏のCDが初めてだったために、ピリオド楽器の演奏よりそっちの方が好きになった。

 バロック時代の曲はやはりピリオド楽器での演奏でなければ……という意見も納得しているが、人生におけるファーストインパクトは結局強い。


 いろいろ聴いて、自分の好みを見つけたらいいと思う。



 バッハの鍵盤弾きでは、私はアンドラーシュ・シフが好きなのだ。

 これもレッスンのお手本に聴こうと思ってたまたまCD屋さんで手にしたのがこの人の演奏だった、というだけ。

 これが例えばグレン・グールドだったらまた違ったかもしれないけど。

 でも私は最初に聴いた演奏がシフで良かった。

 機械的に楽譜通りに演奏する演奏家もいるけど、シフの演奏はそこから感情とか物語が感じられる気がする。音もすごく優しくて暖かくて大好き。



 クラシック音楽、バロック時代の曲はお手本演奏の録音なんか当然なくて、楽譜に書いてある情報がすべて。

 その頃はバッハによってやっと音階や調が整った頃で、演奏記号や指示記号なんかは楽譜にほとんど書かれていなかったそう。

 それを現代の指揮者たちがどう解釈するか、演奏家はどう演奏するかで、同じ曲でも全然違うらしい。

 何枚もCDが出てる所以だ。


 正解のない世界である。


(20170128)

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