第203話 最後の決着


「どうしました? 守ってるだけじゃ勝てないですよ」


 力が、強い──。一撃一撃に彼女の想いが乗っかっているのがわかる。

 攻撃を受けるのだけで精一杯で、攻撃に移ることが全くできない。


 まだ一歩足りない──。セファリールに勝つためには──。

 そう考えているうちに、セファリールはどんどん踏み込んで切る。もちろん、前がかりに出たからと言って、スキを見せるなんてしない。


 攻撃をしながら、話しかけてくる。


「フライ──確かにあなたは強い。ただ力に頼るだけでなく、しっかりと彼女たちの力を使いこなしています」


「それは、ありがとう」


「今までの行いも、素晴らしきものだと、賞賛いたします。しかし──」


 そう言ってセファリールが一気に踏み込んでくる。


「私を倒すには、それでは一歩足りません」


 そして、聖剣に今までないくらい、強い力を込めてきた。

 剣が、眩しいくらいに魔力で光っているのがわかる。

 今までよりも、一層強いパワーの攻撃で、剣を振り下ろしてきた。


 その攻撃に対応できず、のけ反る形になってしまう。


 そして、その瞬間を──セファリールは見逃さなかった。


「フライさん!」


「フライ!」



 みんなの悲鳴が聞こえだす。

 そして、セファリールは強く蹴りを見舞う。攻撃を受けきることができず、体が投げ飛ばされてしまう。


 ──スキを見せるわけにはいかない。

 何とか立ち上がり、こっちも剣を向ける。セファリールは追撃してくるのをやめた。


 それでも、セファリールは攻め続けてきた。さっきまでよりも、ずっと激しい連続攻撃。

 彼女の、この勝負にかける思いがとても伝わってくる。


 そして──。


「これで終わりです」


 運命を導く力、今ここに現出し──裁きの鉄槌を下せ!


 シャイニング・スターライトアロー


 セファリールの聖剣から真っ白い光を伴った光線が出現。

 それが俺に向かって発射される。


 障壁を作って防ごうとするが……。


「そんなおもちゃ、通用しません」


 セファリールの言葉の通り作り出した障壁は一瞬で崩壊。圧倒的な威力に防ぐすべはなく、大爆発を起こして直撃。


「ドォォォォォォォォォォォォォォォン!」


「フライ!」


「フライさん!!」



 俺の体は大きく後方に吹き飛び、そのまま転がり込んだ。

 そして、俺の元にセファリールが歩いて来る。


「どうですか? これが私の力です」


「まだだ、まだ、戦える」


 何とか立ち上がる。

 けれど、次同じ攻撃を食らったらもう戦えないだろう。


「あと少し──といった感じですね」



 その言葉通りだ。いよいよ追い詰められた。それでも、絶望は感じなかった。

 俺一人ではないから。みんながいるから──。


「大丈夫。俺は負けない」


 そう言って、フリーゼのことを想いだす。

 今度は、フリーゼの力だ。


 深呼吸をして、フリーゼの力を剣に込める。


 大丈夫。


 魔力が全身を包む。ほんのりと、ぬくもりがあり暖かい。

 彼女のやさしさが現れてるようだ。


 言葉こそ交わさなくても、理解出来ていた。

 これが、最後の一撃になると。


 セファリールの消耗具合、俺の残り魔力から分かる。


 次の一撃で、勝った方が戦いに勝利するだろうと──。


「さあ、最後の一撃です。これで、私はあなたを倒します」


「それはこっちのセリフだ。俺は。絶対に勝って見せる」



 互いに剣を向け、じっと見合う。

 そして、互いに相手の方に向かっていき、最後の一撃を放っていく。


 最後の、全ての力を込めた一撃。





 五つの輝き、今一つとなりて希望を刺す道となれ


 スタースラッシュ・ザ・ライトニング



 俺が放った、最後の、全力を込めた攻撃。全力で剣を振りかざす。

 セファリールの攻撃を吹き飛ばし、彼女に直撃。

 勝負は、一瞬で終わった。


 セファリールの体が後方に吹き飛んでいき、倒れこんだまま動かない。

 どうやら、勝負はついたようだ。


 フリーゼの表情が、はっと明るくなった。


「……フライさん」


 レディナ達3人は、喜びをあらわにしてハイタッチを決めている。


「やったでフィッシュ。すごいでフィッシュ!」


「すごいよフライ。流石だよ」


「もう、心配したじゃない──ばか」


 そしてフリーゼは。まるで女神のような、優しい微笑みを見せ、目からうっすらと涙を浮かべていた。


「フライさん──流石です」


 俺はふらふらとしながら彼女たちに近づくと、みんな俺に抱き着いてきた。

 彼女達の、柔らかい体を前面に感じてしまい、ドキッとしてしまう。


「待って、まだ終わってないから」


 そうだ。話を聞かないと。

 俺は熾天使たちやツァルキールの方向に視線を向けた。


「勝った。フライさんが──、セファリールに……」


 セファリールに勝ったという事実が信じられないのか、大きく目を見開きただ俺の方を見ている。




 セファリールは、ただ倒れこみ、青空を見上げていた。


「私は、わずかたりとも油断なんてしていませんでいた。今までで、最高の想いを込めて──、最強の力を使った、最高の攻撃──、それが破れました」


「うそ……ですわよね」



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