第194話 完全開放
「簡単よ。全力で戦っている。ただそれだけよ」
自信を持った口調で答えるレディナ。それがどれだけおかしいか、スワニーゼは理解している。
「おかしいでしょ。フライまで巻き添えにするつもり?」
言葉通りだ。レディナのスキルは全開に使うと味方まで巻き添えにしてしまう。
フライがいる手前、彼に攻撃がいかないように制御しなければいかず、そのせいで苦戦を強いられていたのだ。
「それはもう平気。巻き込んだり、しないから」
自信を含んだ言葉。決してハッタリではない、確信。
「そう。じゃあその言葉が本当か、確かめてあげるわ」
そう言いつつ、スワニーゼの聖剣に宿る魔力が高まっていくのがわかる。決着をつけるつもりなのだろう。
レディナも同じように体に魔力を込めつつ、質問に答える。
「そんなの、私だってわからないわ」
「はっ、ふざけてんの?」
「ふざけてなんてない、私はまじめよ!」
レディナがそう返すと同時に、二人が動く。
スワニーゼは体を回転させ、勢いをつけてレディナへ迫る。
しかし、レディナはそれをすでに捕らえている。体を反らし、攻撃をかわす。
もちろん、スワニーゼとのスピードの差はまだある。それでも、さっきまでよりずっと差は縮まっていた。
スワニーゼはさらにレディナの足元に向かって攻撃をなぎ払う。
まるで足払いの様な攻撃を、軽くジャンプして交わす。
飛び上がった際にスキにならないためのギリギリの距離。さらにスワニーゼが繰り出してきた回し蹴りも、軽くステップを踏み、鼻先で攻撃をかわす。
振り上げられた剣は軽く右にステップを踏んでかわし、奇襲ともいえる裏拳もよけきった。
相当腕のある冒険者でも、かわしきることが難しいであろう連続攻撃。
今のレディナでも、反撃まで手が回らない。
それでもレディナは勝負を捨てない。
「戦いだけじゃない。これからのことだってそう」
「何もわからない? まだ私をバカにしてるでしょ!」
憤慨するスワニーゼ。しかしレディナは表情を変えない。
真剣な表情で、ただスワニーゼを見つめている。
レディナはまじめだ。
「真剣に言ってるわ。確かに 必死にもがいて、苦しんで……。でも、私は信じてる。最後にはみんな理解し合えるって
あんたみたいな独善的なことが間違いだって、きっぱりと言えるわ!」
「お前──。黙って聞いていればぁぁぁぁぁぁぁぁ」
スワニーゼは怒りを爆発させ、一気にレディナに突っ込んでいく。
さっきよりも力任せになった連続攻撃、レディナは対応しきれずわずかにのけぞってしまう。
そこにスワニーゼは一気に勝負を決めるため、一気に踏み込んでいく。
そこからの目にもとまらぬ速さでの連続攻撃。
レディナはかわしきれず、腕に切り傷を負ってしまった。
──が、そんなことで怯むレディナではなかった。
すぐにレディナは反撃に出た。
防がれようとも、かわされようとも、何度も攻撃を仕掛ける。
自分の想いを、ぶつけるかのように。
防御を無視した突撃のような攻撃、当然スワニーゼは逆襲に出る。
「本気を出したのはいいけど、スキだらけよ!」
スワニーゼはレディナの打ち込みを交わすと、一気にレディナへと突っ込んでいった。
無防備となっていたレディナの心臓へと聖剣を突き刺していく。
しかし、レディナはそう来ることを理解していた。目がくっと開き、体から今までにないくらい魔力が消費していくのがわかる。
瞬時に体をかがませ、スワニーゼの聖剣に向かって自身の剣を突き刺していく。
突き刺した剣は聖剣の腹の部分を突き上げる形になり聖剣はレディナの頭上を空振りしていく。
レディナの目の前には体が前のめりになり、無防備となったスワニーゼの胴体。
当然、勝負を決めるために一気に突っ込んでいく。
「これで終わりよ」
「そんなこと、させないわ」
スワニーゼが急いで右手を聖剣から手を離しピッと指をはじいた。
すると、レディナの進む先の地面が白く光りだした。
「障壁ね……」
「そう、これであなたは私に近づけない」
「それは、どうかしら──」
レディナはさらに魔力の供給を上げた。魔力が過ぎて、レディナの体が真っ白に光っているように見えるほどだ。
そして速度を上げ、障壁ができる前に一気にスワニーゼと距離を詰めた。
「くっ──どうしてそんな動ける」
「フライが、力を貸してくれたからよ。私一人じゃ、ここまでできなかったわ」
その寸前に一気に背後に回る。限界を超えた動きに、全身が軋んで激しい痛みに襲われるが、この一撃だけ持てばよかった。
「戯言を!」
「戯言かどうか、その身で体験させてあげるわ」
一気にスワニーゼの胴体へと突っ込んでいった。
すぐに気配に気づき、慌てて振り向いて対応しようとしたが時すでに遅し。
レディナが今までにないくらい強い魔力を込め──。
真っ白く光る、魔力の光線をそのままスワニーゼに向かってぶつける。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
スワニーゼに対応するすべはなく、直撃して大爆発。
そのままスワニーゼの体は後方に吹き飛ぶ。そして、その先にある壁に激突してから、ぼとりと地面に落下。
スワニーゼは、倒れこんだまま動かなかった。
倒れこんでいる場所に、俺とレディナが歩いてやって来た。
「決着が、ついたわね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます