第123話 洞窟での戦い

 黒色の肉体に醜い形をしたオークの様な外見の化け物。「アルコーン」であった。


「アルコーンですか。結構強いです、気を引き締めてかかりましょうフライさん」


「けど、軽く十数体はあるわよ」


 レディナの言う通り、こいつらは集団で俺たちを取り囲むように存在している。簡単にはいかなそうだ。


「慌てるな。俺は力を供給する。だからみんなで立ち向かおう」


「わかったフィッシュ。任せろフィッシュ」


「僕も、頑張ってみるよ!」


 そう言ってまずはハリーセルとレシアがアルコーンに突っ込んでいく。



 俺も、ボーっとしてはいられない。周りの冒険者と一緒に、周辺にいるアルコーンを次々と撃破していく。

 強さは並程度。油断しなければ、どうってことない。


 何とか、周辺にいるアルコーンを撃破することができた。


 一方、フリーゼとレディナ。

 二人もアルコーンたちと激戦を繰り広げている。



「これで、また一体」


「そうね。この調子でいきましょう」


 この二人の実力とコンビネーション。流石としか言いようがない。

 俺がほとんどパワーを供給していないのにもう四体ほど倒している。


 おかげで後ろにいるアルコーンたちはほぼ一掃された。


 ──が側面で戦っている一般冒険者たちは大苦戦しているようだ。


「とりあえず他の場所を手伝おう。まだ戦えるか?」


「は。大丈夫です」


「任せろフィッシュ」


 そして俺たちは二手に分かれて周囲の冒険者達の援軍へと向かう。

 まずは俺とフリーゼ、レディナ。


「もう、好き勝手にはさせません」


 フリーゼがまず先陣となってアルコーン達に立ち向かう。


「あ、ありがとうございます」


「大丈夫ですか。後は私達が何とかします」


 そして次に俺とレディナが切り込んでいく。今まで連携の練習は十分してきた。

 敵の強さはせいぜい中の上くらいで、油断しなければ苦戦するようなことはない。


 数分でアルコーンたちを全て撃破。そして要人たちを挟んだ向こう側から爆発音が聞こえだした。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン──!!


「これで、片付いたフィッシュ」


 どうやらハリーセル達の方もひと段落着いたようだ。

 そして前方ではクリムや他の冒険者たちがアルコーン七体と戦闘を繰り広げていた。



 しかし先頭にいるアルコーンは俺たちが戦っていたやつより強い魔力を感じる。そのせいかクリム以外の冒険者はみな倒れこんでしまっていた。


 流石に一人では苦戦は必至だ。助けてあげないと──。


「みんな、まだ戦えるか? クリムの応援に行きたい」


「私は、大丈夫です」


「余裕だフィッシュ」


 フリーゼとハリーセルはまだ戦えるようだ。レシアとレディナもまだ余裕そう。なので隊列の前方に移動したのだが。


「援軍? 余計なお世話よ!」


「余計なお世話って、残りはクリム一人じゃないか」


「いくらクリムが強いからって七体もの数を一人で相手にするのは無謀だ。ここは安全を考えて全員でかかっていった方がいい。意地を張るのはよせ」



「丁度いいわ。あなた達に見せてあげる。私の実力ってものをねっ! 手を出したら、ただじゃおかないんだからね」


 クリムはノリノリな口調でそう言いながら魔物たちに向かっていく。

 あの言葉からして、むやみに手を出したりしない方がよさそうだ。邪魔になってしまったら何言われるかわからないし。


 ピンチになったら手伝いができるよう準備だけしておこう。


 するとアルコーンたちは息を合わせたかのように一斉にクリムに対して殴り掛かっていく。

 こいつら、ただ殴りかかるだけじゃなくて連携して攻撃をすることも出来るようだ。


 本当に大丈夫だろうか。俺や要人たちは固唾をのんで見守る。

 しかしそんな心配をよそにクリムはアルコーンの攻撃を余裕をもって交わしていく。


 そして一体のアルコーンの間合いに近づくと、自身の槍を振りかざす。


 そのままアルコーンの体を一刀両断。アルコーンの体が地面にぐったりと落ちる。

 今度は別のアルコーンが殴り掛かってくるが、クリムは空中でひらりと体をひねらせ、攻撃をかわす。


 そしてそのままアルコーンに突進し、反撃。次々とアルコーンたちを突き刺し、一刀両断していく。


「す、すごいわね。レシアがピンチの時よりも強いかもしれないわ」


「はい。私が全力を出しても勝てるかどうか」


 フリーゼたちもクリムの強さに完全に見入ってしまってる。

 クリムの戦い方。強い魔力もそうだが、それに頼りきりではなく、まるで宙を舞うようなしなやかな動きに、芸術のような槍裁きのテクニック。


 美しさすら感じさせる動き。ものの数分でアルコーンたちをすべて倒してしまった。



「フン。この程度、私のおもちゃにもなりはしないわ!」


 余裕の表情で、クリムがつぶやく。


 パチパチパチ──。


「あらあらっ、あの子骨があるわね。私ほどじゃないけど。腕があるわね」


 拍手をしたのはスキァーヴィだ。余裕のある笑みを浮かべ、クリムをほめたたえる。


 今回の戦い、何とかアルコーンを追い払ったものの、俺達やクリム以外は大苦戦。けが人まで出ている始末。


 すると要人たちを警護していた 兵士たちと一緒に急を要するけが人の手当てを行う。うち半数ほどはこれ以上の職務の遂行は不可能と判断し、街へ帰還させた。


 そして──。


「おいクソメイド!」


 王子のジロンがメイドの人を呼び出す。













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