【完結】~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間そのスキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がる。なお俺を追放したパーティーは没落した模様
第119話 フリーゼ ずるいと思ったこの想い
第119話 フリーゼ ずるいと思ったこの想い
そしてフリーゼの言葉を最後に二人は去っていく。二人の静かに雪道を行く姿を見て、
二人の姿が見えなくなったのを確認すると、俺はフリーゼに視線を向けた。
どこか、切ない、何か考え込んでいる表情。
「やっと、二人っきりになれた。とても、嬉しいです」
「俺も、嬉しいよ。フリーゼと二人になれて」
嬉しいですと言いながら、どこか機嫌を損ねているように感じる。
本来なら、何も聞かずに察したいところだが、俺にそこまでのラブコメスキルはない。
ちょっと気が引けるけれど、ストレートに聞いてみよう。
「フリーゼ。その──、どこか不機嫌そうだけど、もしかして怒ってる?」
するとフリーゼは口をへの字にして、プイっと不機嫌な表情になった。
「私、怒ってなんかいません。別に、フライさんの隣が良かったとか、レディナとハリーセルに抱き着かれてドキドキしている姿を見て拗ねたり、クリムに誘惑されて、顔を赤くしているのを見て、思わずむっとしたりとか、思っていませんから──」
「そんなこと、思っていたんだ──」
つんと顔を背けながら、不満そうな物言いで告げるその態度は、今までのフリーゼでは見せなかったものだ。
フリーゼが、今までにもなく不満をぶちまけている。
「ご、ごめんね。今度、埋め合わせはするから──」
「や、約束ですよ、フライさん……」
そしてフリーゼは、雪が舞い降る夜空へと視線を変えた。
「私、ずるいですかね──」
「ずるいって?」
フリーゼが、どこか切ない笑みを浮かべ始めた。
「ほら、レディナとかみんな、呼ばなかったじゃないですか──」
「そ、そういえば……」
俺はさっきまでの話を思い出す。この話ならば、レディナやハリーセル、レシアを呼んでもよかったはずだ。
まあ、今日の移動の疲れもあるだろうし、クリム達も特に何も言っていなかったので、そのまま話を聞いていたのだが──。
「二人っきりに、なりたかった。フライさん」
そう言ってフリーゼ、俺の背後に回る。そして両肩を掴んで俺の体を引き寄せてきた。
フリーゼの、大きめな胸が俺の背中に押し付けられる。柔らかくて大きい胸の感触を背中いっぱいに感じてしまい、顔を真っ赤にしてしまう。
「フ、フライさんは。大変心が優しくて、いい人です。けれど、いつもみんなにいい顔をして、妬いてしまうんです」
不満そうな口調の言葉。かなり悩みこんでいるのだと感じる。
「あ、頭ではわかっています。フライさんは、このパーティーの実質的なリーダーで、みんなをまとめる存在。だから全員のことを見ないといけない立場だというのは──」
俺はフリーゼの方向を振り向く。
フリーゼの瞳に、うっすらとだが涙が浮かんでいるのがわかる。同時にそれを何とかこらえようとしているのも──。
しかし、フリーゼは感情を抑えられなくなったのかぽろぽろと涙をこぼし始める。
「しかし、私は心のどこかで考えてしまうんです。どうしてみんなを見てしまうのかと。どうして、もっと私を見てくれないのかと──」
「ご、ごめん……」
そこまで、俺のことを考えてくれていたのか──。
どうすればいいかわからず、ただ、呆然としている。
予想もしなかった言葉を返すことができなかった俺。
こんなこと、今までなかった。人に好かれる経験自体、フリーゼが初めてだからだ。
俺が悩みこんでいる間にも、フリーゼは肩を落としている。とても悲しそうな表情。
──これしかない。
それを見た俺、ようやく理解した。今のフリーゼに、どれだけ言葉で説得をしても理解できないだろう。
だから、こうすることにした。
「フリーゼ──」
「……フライさん」
言葉ではどうすることも出来ないことを悟った俺。
ただフリーゼを抱きしめた。
今までにないくらい、俺の気持ちを伝えようと、強く──。
「本当にごめん。フリーゼの気持ちに、気が付かなくて──」
俺も、まだまだ未熟だ。パーティーのリーダーのような存在で、俺がフリーゼも、みんなも、感情や気持ちをよく考えなきゃいけないのに。
フリーゼの気持ちに気が付かず、悲しい気持ちにさせてしまった。
「だから、いつか二人になったら、またデートしよう」
「ありがとうございます。フライさんが、私の事を考えてくれる。それがわかっただけでとても嬉しいです力が心の底から湧いてきます」
フリーゼが微笑を浮かべる。かすかにこぼれた涙を指で吹きながら。
優しく、まぶしい笑顔。今まで見た、どんな表情よりも素敵に見えた。
「だから今は、みんなと一緒に頑張ろう、フリーゼ」
「はい。フライさん」
フリーゼは、そう言ってコクリと頷く。
抱き合った時間は、現実には数分だが、俺にとっては永遠に感じられた。
しばらくたって、俺はフリーゼから手を離す。
「ということで、これからもよろしくね、フリーゼ」
「こちらこそ。私のこと、見ていてくださいね」
フリーゼの、満面の笑み。それを見て誓う、絶対に、彼女を悲しませはしないと。
大切にすると──。
降り積もっていく雪が道を真っ白に染めていく。
そう強く思いながら俺たちはこの場を去っていった。
☆ ☆ ☆
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