電話先の夕陽

春嵐

01 電話先の夕陽.

 夕暮れ。


 駅前。


 この街の夕焼けは、美しかった。ビルの並びを、木々を、人の流れを、紅の夕陽が柔らかく照らす。


 学校や仕事終わりの人の流れが、緩やかに流れていく。


 電話の電源を入れて、連絡先一覧からお気に入りに飛んで。


 通話待機音。


 数えながら、夕陽と街の景色を、眺める。きっと、彼も、同じ景色を。同じ夕陽を。見てる。


『もしもし』


「もしもし。いま、大丈夫?」


『大丈夫。いま起きたところ』


「遅いね」


『昼夜逆転してるかも』


「今ね、街中にいるの」


『いつもの駅前?』


「うん」


『何が見える?』


「夕陽と、街の景色。とっても、綺麗なの」


『そっか。気になる』


「私は、仕事終わり。そっちは?」


『検査が終わったところ、かな』


「寝てたって言ってたじゃない」


『検査っていっても、単なる確認作業だから。終わるまで寝てていいんだ。終わったら手直ししてさ』


「そうなんだ」

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