第23話 今話題のアイドルのお部屋に呼ばれた

 ライブ終了後にステージ上にいたシズクが、まさかの火花さんの目の前に現れた事に私は凄く驚いた。


 私、森崎由亜はこの日、メタバース内で開催されているシズクのライブをスピアーズのメンバー達と一緒に観に行っていた。


 そんなライブの終了直後に、ステージ上で歌を歌っていたシズクが火花さんの目の前に現れるというとんでもないサプライズが発生した。


「とりあえず、私のライブを観に来てくれてありがとう!!」


 シズクを目の前にした火花さんは、凄く緊張をした様子であった。


「せっかく来てくれた事だし、ステージの上においでよ!!」


「えぇ!?」


 そう言って、シズクは強引に火花さんの腕を掴んだ後、高くジャンプをしながら火花さんを連れてステージの上へと戻った。


 そして、ステー上に戻ったシズクと隣に立つ火花さんの様子を見た観客達がざわつき始めた。


「は~い、みんなぁ~!! 注目をして~」


 そんな観客達を前にしたシズクは、注目を集める為に大声を出した。


「今日、私のライブに来てくれた、スピアーズのハルちゃんだよ!!」


「どっ、どうも、スピアーズのハルです」


 多くの観客達が見守る中、シズクから紹介された火花さんは少々緊張した様子で軽く挨拶をした。


「まさか、ハルちゃんが私のライブを観に来てくれたいたんなて、すっごく驚いたよ!!」


「いゃあ~ 今日のライブは、友人がチケットを貰ってね。それがきっかけで今回来させていただきました」


「そうなんだ、チケットをくれた友達には感謝だね」


 そんな感じで行われるトークを聞いている観客達は、楽しそうに笑っていた。


「そうそう、今月にハルちゃんが所属するSPレディオが開催するイベントに、私がゲストで出演しますので、よろしくね~!!」


「みっ、みなさんも、ぜひ、私達のライブも見に来てください」


「みんなぁ~ ハルちゃん達のライブも、ぜひ見てあげてね~!! 私からのお願いだよ~!!」


 そしてシズクは観客達に向かって、大きな声で今月中に開催されるSPレディオのイベントの宣伝を行った。





 その後、ライブが終了した後、私達はシズクに誘われ、メタバース内にあるシズクの部屋に案内された。


「どう? 私の部屋は。凄いでしょう」


「うわぁ~ 本当に来ちゃったよ!!」


「ここで、シズクさんがいつも生配信をやっているのね」


 シズクの部屋へと案内された火花さんと虹川さんは、部屋の周囲をキョロキョロと見渡していた。


「あっ、このぬいぐるみ、いつも生配信の時に見るヤツだ!!」


「本当に今、私達はあのシズクの部屋の中にいるんだね。まるで、アニメキャラの部屋に来たみたいな気分だよ」


 一方、氷山さんと水島さんもまた、シズクの部屋を夢中になってみていた。


 そんなシズクの部屋は、全体的がサイバーパンクな雰囲気を出している部屋であり、部屋の窓からはサイバーパンクな世界観に合う超高層ビル群の景色が見えていた。


 また、シズクの部屋の中にはファンからのプレゼントと思われる、ぬいぐるみのアイテムがインテリアとして部屋の隅にある棚の上に飾られていた。


 その他には、生配信中に座っていると思われるゲーミングチェア等が置かれていた。


「それにしても、スピアーズのメンバーでない私とリーフィも一緒に付いて来て、本当に良かったのかしら?」


「別にそんな事は気にしなくていいのよ。スピアーズのメンバーの友達という事で、特別サービスだよ」


「よかったじゃないですか、ユア。スピアーズの皆さんと一緒に、シズクの部屋を楽しみましょ」


「そうね」


 そんな私とリーフィもまた、火花さん達スピアーズのメンバーと一緒に特別にシズクの部屋に招待をされ、今はリーフィと一緒にシズクの部屋を見ていた。





 そして、私達がしばらくの間、シズクの部屋を夢中に見ていると、ゲーミングチェアに座ったシズクが私達の方を見ながら話しかけて来た。


「そうそう。スピアーズの皆さんの活躍は、動画で色々と拝見させてもらったよ」


「シズクちゃんも、私達の動画を観てくれたの?」


「あったり前じゃないの!! 今度、コラボをする相手なんだから、きちんとコラボ相手の情報は調べておかないとね!!」


 シズクがスピアーズの動画を観ているという事を伝えると、その言葉を聞いた火花さんは嬉しそうに反応をした。


「それよりさ、ウミちゃんって、ハイレグの競泳水着姿で町中にいるってホントなの?」


「まぁ、部活の練習後にいちいち着替えるのが面倒だったので、つい」


「そうなの。練習後もハイレグの競泳水着のまま過ごしているって動画内でたまに語られているけど、ホントだったのね」


 その後、シズクは水島さんが部活の練習後もハイレグの競泳水着姿で過ごしている真相について問いかけた。


「ハイレグは最初こそは恥ずかしいけど、慣れると意外と快適だよ」


「そうなの?」


「ほとんど何も着ていない状態になるから、ホント、動きが快適になるよ。せっかくだし、今から見せてあげよっか?」


「えぇ!? この場で見せてくれるの?」


「リアルでは無理だけど、メタバース内だけならね」


 そう言って、水島さんは着替えを行う為に、指を動かし操作した。


 そして、水島さんの全身が光に包まれその光が消えると、先程の衣装とは異なり、太ももが完全に露出し、鼠径部辺りまで鋭く上がった白いハイレグの水着姿に変わっていた。


「どう? こう見ると、ハイレグって不要な箇所がない分、動きやすくなると思わない?」


「これは、確かに動きやすそうね……」


 ハイレグの水着姿に着替えた水島さんは、シズクにハイレグの快適さを語りながら、アバターをくるくると回した。


 ハイレグ姿の水島さんを見終えた後、シズクはニヤリとした表情を浮かべながら、虹川さんの方を見た。


「ウミちゃんのハイレグも凄いけど、ソラちゃんのアバターもいつ見ても凄いよね」


「あれは、罰ゲームでなっただけで、私の趣味ではないですからね!!」


「それぐらいは知っているよ。それはそうと、そのマントを脱いで、私にそのいつもやっている格好を見せてよ!!」


 すると、虹川さんの方を見たシズクは、虹川さんにマントを脱ぐ様にお願いした。


「流石に、あの格好は人に見せる事なんて出来ないわよ」


「そう言っちゃって。あんな凄くいやらしい格好でも、堂々と人前でライブが出来るのだから、ホントは慣れっこなんでしょ?」


「あれは、単なるプロ意識というヤツです…… オフの時は流石に……」


「ほらっ、空ったらさ、そんなに恥ずかしがらずに、シズクに見せてあげたらどう? 私だってハイレグ姿をシズクに見せたのだから」


 恥ずかしがる虹川さんに対し、水島さんが虹川さんの元に近づいてマントを取る様に声をかけた。


「うっ、海が言うなら……」


 そう言って、虹川さんはアバター全体を覆っていたマントを消し、以前のライブの時に見た凄く露出の高い前貼り姿をシズクの前で披露した。


「わぁお!! 実際に見て見ると、凄い格好だね!!」


「だから見せたくなかったのよ!!」


 シズクにジロジロと見られている虹川さんは、両手で股を隠しながら凄く恥ずかしがっていた。


「その前貼りって、取る事が出来るの?」


「取れないです!!」


 そんな恥かしがる虹川さんに対し、シズクは虹川さんのアバターの股に付いている前貼りを剥がそうとする仕草を見せたりもしていた。





 その後もしばらく、私達はメタバース内にあるシズクの部屋の中で、シズクと色々と話をした。


「それにしても、私が見た感じ、スピアーズはグループ系としては上手くバランスが取れていると思うよ」


「そうかな?」


「そうだよ。ハルちゃんはスピアーズのリーダーであるだけでなく、メンバー全員を一つにまとめる為に常に先導していて、そのおかげで見ている側が面白くて楽しいと思えるスピアーズが出来ているんだからさ」


「いゃあ~ そう思ってくれているなんて!!」


 そんな話の中で、シズクから良い所を指摘された火花さんは、照れる様に笑っていた。


「また、スピアーズのメンバーの1人でもあるユキちゃんの場合は、リアルの小柄な可愛らしい見た目と同様、ここメタバース内でもその小柄な可愛さを維持しつつ、スピアーズのマスコットキャラとしての地位も確立している」


「マスコットキャラだなんて…… その分野だと、流石にぷんぷり~には敵わないと思うよ」


 次にシズクから良いと思えるところを指摘された氷山さんは、照れる様にしながら恥ずかしそうな様子を見せた。


 確かにシズクの言う通り、小柄な氷山さんはスピアーズ内のマスコットキャラのポディションでも間違いはないと思う。


「そして、スピアーズの歌とダンスの分野を支えていると言っても過言ではないのが、ウミちゃんとソラちゃんの2人だね」


「えっ、私達が!?」


「まさか、あのシズクさんから評価されるなんて!!」


 その次に、シズクが水島さんと虹川さんの歌唱力とダンス力を評価すると、その事を聞いた水島さんと虹川さんはアバターながら両目を丸くして驚いた。


「スピアーズの歌は若い層が楽しくなれる様な感じの歌が多く、そんな歌の振り付けに必要なダンスは、ウミちゃんの圧倒的な身体能力があってこそ実現出来ていると思うよ」


「な~るほど…… やっぱり、私のダンス力はシズクが見ても凄いんだな」


「そして、そんな明るくて元気を分けてもらえそうなスピアーズの歌は、ソラちゃんがいてこそ実現出来ている歌だと思うよ」


「そう思っていただけると、歌い続けて来た甲斐があるわ!!」


「もちろん、ソラちゃんだけでなく、ハルちゃんやユキちゃんやウミちゃん、この4人が揃っているからこそ、スピアーズは完成していると思うよ」


 シズクから歌とダンスを評価された水島さんと虹川さんは、先程の火花さんと氷山さんと同様、嬉しそうに照れ合った。


 こんな感じで、シズクはスピアーズの各メンバーを1人1人評価していったが、投稿されている動画を観ただけでここまで良い点を見つけて評価をするシズクは、流石はプロとして活躍をしているだけの事はあると思った。





 そんな感じで、今話題の新人バーチャル型アイドル系UTuberのシズクと私やリーフィを含むスピアーズのメンバーとの会話は、大いに盛り上がりながら続いた。


「それよりもさソラちゃん、そろそろ決まったかな?」


「えっ、何を?」


「そうとぼけなくても、分かっているでしょう。ソラちゃんが草プロに入るのか入らないかの話だよ」


 そんな中、いろんな話で盛り上がっていた時、シズクはサラッと虹川さんに草プロに入るかという質問をした。


 シズクからの突然の発言に対し、私だけでなく火花さん達スピアーズのメンバー達も凄く驚いていた。


「えぇ!! 空って、あの草プロに入るの!?」


「凄いよ!! 凄すぎるよ!! ソラは!!」


 私が驚くのはともかく、まさかの同じメンバーである火花さんと氷山さんまでもがこの事で驚くのは意外だった。


 驚くという事は、この話は火花さん達には知らされていなかったのか?


 私はそんな事を思いながら、動揺する虹川さんを見た。


「いっ、いゃっ…… 私はまだ、行くとは決めていないし……」


「決めていないって、こんなチャンス、二度とないチャンスだよ!!」


 動揺している虹川さんに対し、火花さんは虹川さんに草プロに行く様に促した。


「そう、まだ決めていなかったのね…… 草プロに入れるチャンスは今月末までだから、早めに決めてね」


 草プロに行く事をまだ決めていない虹川さんに対し、シズクは期限である今月中に決める様に言った。


 そう言えば、数日前に草プロのプロデューサーである草間さんと会った時に、早川さんと話をしていた時に草間さんが虹川さんに関する事を言っていたけど、まさか、これが虹川さんが草プロに加入するかも知れないという話だったなんて。


 この件が今後どう動いて行くのか、スピアーズのメンバーでもないにも関わらず、私はただ心配するばかりであった。

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