フューチャー・リメイク~英雄になりたい復讐者の物語~
六月
プロローグ バルサ・クリス
「射撃一番隊、発射よーい……。」
ここは戦場……。敵軍が一斉に突撃してきた。
「撃て!!」
上官にあわせて雑兵たちは手にしている銃の引き金を引いた。突撃した雑兵たちは次々と倒れていく。
「次!! 二番隊、発射よーい……。」
今度は二番隊が相手に銃を持つ番だ。二番隊は銃を構える。
「撃て!!」
二番隊は引き金を引こうとした。その瞬間、空から黒いものが落ち、地面を振動させた。
「なんだ?」
思わず上官は口に出る。雑兵も困惑した。
落ちた場所から五人ぐらいの見たことない種族が現れた。そして、奴らはこう叫ぶ。
「私は!! 魔王サタンの名により参じたものだ!! 無駄な抵抗はするな!! お前たちが抵抗しない限りお前たちの命の保証をしてやる!!」
上官は奴らを見たとき、何か知っているような顔を見せた。
「なぜ奴ら天使が……。くっ!! お前ら!! 奴らを撃て!! とにかく撃ちまくれ!!」
上官は我を忘れて命令する。雑兵たちは一斉に天使を銃で撃つ。打ち続ける。
だが、奴らにかすり傷は見えなかった。
「なるほど、お前たちが出した答えはそういうことなのか……。ならば私も全力で相手をしよう……。」
そして、リーダーと思われる天使は
「
と言った。次の瞬間、巨大な爆発音が鳴った。そして爆発音が鳴った直後、敵国いやその場にいた両国の兵全ては体の原型は破裂し、地面一帯が赤色に染まった……。
「さあ、人間どもを黙らせたことだし、帰るとするか……。」
こうして奴らは自身の翼を広げ、どこかへ飛んで行った。
――七年前
辺境に住んでいる僕はひたすら村の広場で木刀をひたすら素振りしていた。
それは僕が母に読んでもらった童話に出てくる英雄に憧れたからだ。
昔々、あるところにとある少女、カナエ・クリスは村で元気に過ごしていました。カナエは笑顔が溢れる元気な女の子でした。
そんなある日、突然悪魔たちに村が襲われたのです。カナエは悪魔から村のみんなと逃げました。しかし逃げている途中、悪魔に追い越され捕まってしまいました。
カナエはそれからというもの悪魔たちにたくさん意地悪されました。水をかけられたり、顔を殴られたり他にも色々なことをされました。その中でも一番苦しかったことは魔力を体に入れられたことです。これによって、他の人から軽蔑な目で見られるようになりました。カナエは魔力を入れられた夜、ずっと泣いてしまいました。
そんな悪夢の中、カナエに救いの手が差しのべられたのです。救った人の名前はケンジ。ケンジはとある王国の勇者でした。
ケンジは悪魔の住むところに一人で乗り込み、悪魔をやっつけました。そして、そこにいた人々を救いました。
カナエは勇者ケンジにこう言いました。
「あなたはなぜ私を救ってくれたの? 私には魔法が持っているのに……。」
カナエがそう言うと勇者ケンジは
「僕はあなたという一人の人間を助けたんだよ。僕は人間ではない人は助けないよ。」
と言いました。この時、カナエは泣いてしまいました。勇者のその優しさにカナエは心を救われたのです。
その後、ケンジとカナエは共に過ごし、やがて結婚して幸せになりましたとさ。
めでたし、めでたし。
「あら、今日も剣の特訓? 偉いわねーー。」
村のおばさんはいつも僕の特訓を誉めてくれる。僕はその言葉を一度特訓を止め、おばさんにいつも
「ありがとうございます!!」
と大声で返事していた。その後、僕はいつも通り特訓する毎日だ。
だが、そんな僕も一つ困ったことがある。
「おい、お前! ちょっとこっちに来いよ!」
広場にいた僕に複数の同じ歳の男の子が僕の前に現れる。僕は彼らに呼ばれて、いつも路地裏に引っ張られた。
「おい、てめえ!! 何俺たちの聖なる広場でお前みたいな汚らわしい奴が足を踏み込んでるんだ!!」
一人の男の子は僕を一発殴り、僕は誰の家ともわからない壁から衝撃が伝わった。そして
「お前みたいな魔力を持ってる奴が俺たちの広場を汚すな!!」
と彼は言った。
彼の言っていることは本当だ。僕はどうやら童話に出てくる少女の末裔で魔力を持っているらしい。でも、僕は生きてきた十年間一度たりとも魔法を使ったことがない。
僕は彼の言葉に反抗して
「僕は君たちと同じ人間だ!! だから、僕はあの広場を自由に使っても良いはずだ!!」
と言い返す。すると、彼らは顔を歪ませ、僕を動けなくなるようにひたすら殴った。僕は彼らの卑怯な複数の攻撃に何一つ抵抗できなかった。
「ただいま。」
僕はやっと歩けるようになったので家に帰ってきた。もう、夕方が終わりそうだった。
「おかえり……ってどうしたの? このアザは? まさか、またいじめられたの?」
母は玄関にいる僕を迎えに来たところすぐに口を出す。毎回のようにこの言葉を言っていた。
僕はそんな心配している母に
「大丈夫だよ、お母さん。僕はちょっと必死に練習してただけだから。」
と言って母を安心させた。本当のことを言うと母は必ず悲しむから。
母は「そう……。」と言って何か不安そうな顔をした後、いったん留守にしていた台所に行った。そして、母は何か思い出したかのように
「もうすぐご飯だから、用意して」
と僕に言った。僕は「はーい。」と返事して家のリビングに行った。
――現在
『ねえ? 知ってる?』
『知ってるって何を?』
『最近、戦争していたあの軍事大国のアズラー帝国軍と私たちの国、モラタ王国軍が一度に全滅らしいよ?』
『マジで!! それじゃ、どっちが勝ったんだ?』
『そんなことはどうでもいいのよ!! それより、軍の一部が無くなったことで今、若い男が兵士に徴収されてるの!!』
『それじゃあ、辺境に住んでいる俺たちももうすぐ来るのか?』
『いずれ来ると思うわ……。』
このような噂が村全体に伝わった。モラタ王国は小さい国。世界大戦中の中でいずれ他の国に飲み込まれてしまう可能性があった。
そんな中、僕は一人で村近くの森にいた。十五を過ぎると村を自由に出入りすることができる。
これで、いじめに遭わず剣の練習ができる。
僕はひたすら素振りした。
剣の特訓をしてから十年が経過、驚くほどに成長した。
最初は百回が限度だった。でも今では数万回以上振ることができる。
更には、素振りだけじゃ英雄になれないので、十二歳から時々両親にお願いして王都にある剣道場に行った。そこでは僕と同い年の子供が毎日試合をしていたので、僕はそこで彼らと対決した。
僕は最初、彼らに負け続けた。でも、やがて僕は行く度に一人ずつ勝ち、いつの間にか僕の相手をする人が居なくなった。
後は僕がいつ冒険者になれるかだけだった。
あと三年。あと三年で僕は冒険者になれる。
そんなことを胸に刻み、今日も木刀を振り続ける。
だが、そんな日常が一気に崩れ去る。
――村から、強大な爆発が聞こえた。
僕は村に急いで向かう。
村に着いた。でも、村のみんなはどこにもいない。
僕は急いで広場に向かう。すると、そこにはとてつもなく恐ろしい光景が僕の目に飛び込んだ。
そこには元々の茶色だった土が赤色に染まっていた。中心にある噴水も透明ではなく赤色だった。
僕は思わず土を触る。何かさらさらして、指にはくっきりと赤く染まる。僕はこの赤色は人の血だと理解した。
「おや? まだ一人、人間が残っていたのか?」
空から何者かが僕に声をかけてきた。僕は頭を上げ、何者かは赤色の土を踏み込んだ。
「君が抵抗しないなら、僕は……」
「うわああああ!!!」
奴は僕に何か言おうとしたが、あまりにも恐ろしさのあまりその場から逃げてしまった。
僕はそのまま自分の家に逃げ込んだ。
(なんだ、あいつは……。一体何が起きてるんだ?)
僕の脳はそんなことで一杯だった。
僕は家の中にいると思われる母を探した。父は三年前から王都で仕事しているので、今家にいるのは母だけだ。
そして、母を見つけた。……体の無い血の姿で。
僕はそんな母を見て思わず嘆いてしまった。
そして、僕はある感情が芽生える。
(あいつを殺す!!)
次の瞬間、僕はリビングに行き、そこに飾ってある十字架の形をした大きな剣を両手で持つ。その剣はすごく刃が鋭かった。母曰く、童話に出てくる英雄の剣らしい。
僕はその剣を持って再び広場に行く。
「おっと、やっと来たか……。君が抵抗し……」
「はぁあ、あああああ!!」
奴が口を出す前に僕、いや俺は奴がいるところに走った。そして、剣を大きく縦に一直線にかましてやると息込んで奴に向かう。
奴の顔は余裕なのか笑っていた。
俺は奴に縦に剣を振るう。
だが、奴は俺を見下したのかすぐに素手で剣を弾いた。そして、
「久しぶりにこの剣を見るな……」
と奴は弾かれた剣を見て呟き、魔力で俺の剣を引き込んで奪われてしまった。
俺の顔が青くなる。
「それにしても君はよく僕を一人で立ち向かえたね。だから、それに免じて僕は君にご褒美をあげよう。」
奴はそのような言葉を口にして俺の腹部に奪った剣を突き刺した。
自分の剣が通じなかった……。俺にとってショックが大きかった。そのせいか、俺の体は動けず、剣が腹部に突き刺さったまま倒れた。。
ここはどこだ?
僕は辺りを見渡す。でも、周りが暗くて何も見えない。
僕は死んだのだと理解した。僕のやって来たことがすべて否定された気分だった。
そんなときに一人の男が僕の目の前に現れる。かなりの美少年だ。
「お前はそこでくじけて良いのか?」
彼はそんな言葉を口に出す。
そんなわけないだろ!!
「悔しくはないのか?」
悔しいに決まってる!!
「悔しいのならもがけ!! もがき続けろ!!」
その瞬間僕、いや俺の真上からポツリと白い光が差した。
俺はその光を見ながら全力で手を挙げた。
「人間はこれで全てかな? よし、一旦戻るか!」
奴は背中の翼を広げた。その時だ。
「待て。」
俺は刺さっている剣を抜き、立ち上がった。
「……。」
奴は背後にいる俺に向けて睨む。そして奴は俺の方に向き、こう言った。
「まだ生きていたのかい? せっかく君を楽にさせてあげたのに……。そこまで、君が殺されたいのなら、体の原型もろとも消してしまおうか……。」
そう言った後、奴はこう叫ぶ。
「
俺は体の芯から何か飛び出た……。気がした。
俺の体に何も異常は無かった。
奴は俺に何も起きなかった事に驚いていた。
「なぜ、君は生きている?」
奴は俺にそう問う。そして、奴は俺を見てあることに気が付く。
「君、どうしたんだ? その体? 僕の目に狂いが無ければ君に今、一体何が起きてるんだ?」
ん?
奴に言われて俺は自分の体を見渡す。至って変わらないはずだ。
奴は苛ついた表情をする。そして、俺に襲い掛かる準備をした。俺は両手に剣を持ち、特訓してきたころと同じように構える。俺は覚悟を決めた。
今……来る!!
……え?
奴はもう俺の正面にいた。
やばい!! このままだと俺の顔に直撃する!!
俺は奴が殴ってくる方向に剣を当てようとする。だが……間に合わない!!
俺は思わず目をつぶる。そして、俺の顔面に直撃した。気がした。
「ぎゃあああああああ!!」
悲鳴? 俺は疑問に思い、目を開ける。すると、そこには思いもよらない絵だった。
奴の右腕が無くなっていた。正確には溶けていたのだ。
俺は何が起こったのかわからなかった。
思わぬダメージを受けた奴は
「くっそ……その蜃気楼……。まさか、本物の熱、それも五千度以上の熱だったとは……。」
と口を開く。俺には何の話かわからなかった。そして奴は、
「くっ! この情報、魔王サタン様に報告せねば……。」
と言ってこの場から一瞬で消えた。
どういうことだ? 俺の周りには五千度以上の熱があるだって?
俺はそんなことを考えながらも奴が消えて心底、安心して体が自然に横になる。
そして、やがて夜になり雨が降り始めた。
「くそっ……。」
雨が冷たい。俺はそんな雨の冷たさから涙がこぼれ、右の腕で目を隠した。
翌日の朝、俺はいつの間にかそこで一夜を過ごした。
「おーい。そこの君、起きなさい。」
俺は誰かに呼ばれ、目を覚ます。人間の男だ。そして、俺はすぐ奴が軍服を着ていることに気が付く。
「お前!! 今さら、何しに来やがった!!!」
俺は咄嗟に男の軍服の胸倉をつかむ。男は俺の行動に驚きながらも冷静にこう話した。
「私はここの村人に赤紙を渡しに来ただけだ。それより、君はここで何をしていたんだ?」
俺は胸倉をほどく。
「俺以外のここにいる人たち全員が死んじまったんだよ……。」
「それは、私から見てもわかる。」
俺は発言した後、目を下に向けた。男はそんな自分を見て
「君の事はなんとなくわかった。後は王都で聞こう。だから、今すぐあの車に乗って。」
男がそう言うので俺はその言葉に甘えた。
そして車に乗っている途中、男にこう聞かれた。
「そういえば君の名前は?」
俺は外を見ながらこう答えた。
「……バルサ・クリス。」
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