敵とか味方とかそういう概念ではない

統一暦499年12月2日午後0時20分

「誰……?」

 目を覚ました紅音の第一声である。

 聡兎は顔を曇らせた。

「……リナは覚えてるか?」

「………ごめんなさい。」

 記憶喪失、というやつだ。そのうち思い出すかもしれないし、思い出さないかもしれない。

 聡兎はそんな紅音を不安にさせまいと精一杯の笑顔を作り、頭を撫でる。

「大丈夫だ。俺が守る。」


統一暦499年12月2日午前10時50分

 琉吏は吐血して倒れていた。

 「第一」の技術は強力だった。複数人で琉吏を囲み、槍のような形状のものを突き刺した。「聖母の加護」は無効だった。そして彼らは悶え苦しむ琉吏を放置してアカリたちの捜索に出て行ったのだった。止めを刺す価値すらない、ということなのか。

 琉吏はそのまま出血多量で意識を失った。


統一暦499年12月2日午後0時30分

 琉吏は重い瞼をゆっくり持ち上げる。

 まずその視界に入ったのは、琉吏を囲む無表情な少女たち。その一人が端末を取り出し、誰かと電話を繋げた。

「……初めまして、琉吏さん。ルキフェリウス・ウェストファリス・メルトリリス……ルキフェルで結構です。」

 何を思っているのか読み取れない声。別に抑揚がない無機質な声とかではないのだが。

「単刀直入に言わせてもらうのですが……我々に協力していただけませんか?貴女の守りたいもののためにも。」


統一暦499年12月2日午後1時10分

 恵吏たちの居る山小屋に数人の部隊がやってきた。それを構成しているのは、似たような顔で表情の読めない少女たち。

 警戒する恵吏たちに彼女らは告げる。

「現時点をもって我々は貴方たちを保護します。」

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