第17話 そこにある危機
達夫はできるだけ良子と一緒にいる時間を増やそうと思い良子と同棲することにした。
リアが隣にいるため達夫の家に良子が来る案もあったが、良子の通勤を考えると良子宅のほうがより安全で実用的だと思われた。
どれだけ自分が役に立つかわからないが、達夫は良子の勤め先の区役所まで送り、帰りも迎えに行くようにした。仕事の効率化はリアがサポートしてくれた。
良子は達夫が自分の勤め先まで送り迎えをしている理由を知らないので「恥ずかしいのでいいよ」と最初は断ったが、達夫の熱意に負けて受け入れることにした。内心ではとても嬉しく、そこまでしてくれる達夫を愛おしく思った。
その甲斐があったのかは不明だが、良子は無事(・・)に週末を迎える事ができた。
しかし、達夫は疲れて来ていた。達夫はずっと良子の死因について考えて夜も眠れない日々が続き、疲れが溜まっていった。前回は車が原因で良子が巻き込まれたが今回もそうなのだろうかと考えてると眠れなくなったのだった。
気分転換に買っておいたクリスマス用の装飾品を部屋に飾り、クリスマスを迎える準備をすることにした。クリスマスツリーこそなかったが蝋燭のあたたかい灯りが部屋を照らし、クリスマスらしい雰囲気を醸すことができた。
外に出て何かに巻き込まれるリスクを避けるため極力外に出ないように試みた。達夫はクリスマスと年末を理由にたくさんの食材を買い込み、クリスマスらしく肉料理中心の食事を食べることにした。
その日の肉料理は鴨のローストで、醤油、ニンニク、生姜などの調味料に鴨の胸肉を1時間漬け込み、その後オーブントースターで3時間ほどじっくりとローストした。鴨肉にはブルゴーニュの赤ワインを合わせることにした。
少し遅い夕食になったが、達夫が良子にプロポーズしてから一番恋人同士らしいひと時となった。
二人は今まで過ごして来た5年間の記憶をたどり、思い出に耽り語り合った。そして時間は過ぎて言った…
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その日の夜中、リアはドイツにいる純系魔女のサラとテレビ電話で話していた。現状報告と情報交換のためである。
すると良子に取り付けた警蟲から危険を知らせる信号を察知する。
リアはサラとの会話を中断し、急いで転移の準備をした。
予め救急用に用意していたバッグを持ち、座標を確認して、良子がいるはずの座標へと飛んだ。
するとそこは火の海だった。
熱から身を守るために、すぐに防御の魔法を発動し、防御膜をはって周囲2メートルほどの安全を確保した。
ここは良子の家の玄関らしいことがわかったが、他は煙で視界が悪い。
「りょーこぉぉ!!」と叫ぶ声の方を見ると達夫がいることがわかった。
リアは達夫のいる地点へ移動した。
リアは達夫を見てびっくりした。達夫は全身にやけどを負っており、全身黒コゲで早急の治療が必要だった。それでも驚くべきことに意識を保っていて、隣の部屋にいるであろう良子を助けようとしているのである。
リアは迷った。このまま隣の良子を助けに行けば達夫は助からない。だが、達夫を他の場所へ移して、ある程度の治療をして戻って来たら良子は助からないだろう。良子の声はしないし、生きているかどうかもわからない。
良子の「死相」、宿命かもしれない「死」。
それならば.....
リアの目から一筋の涙がほおを伝う。
そして、リアは達夫だけを連れて転移した。
リアは達夫を眠らせ、すぐに持っていたバッグから細胞増幅剤を取り出しふりかける。そしてスライム状の液体を達夫の唇に塗った。
「よし!!これでしばらくは大丈夫なはず!!待ってて達夫さん。」
そしてリアはすぐに転移して、元の場所に戻った。炎は勢いを増していたが、リアは氷系魔法を用い一気に部屋全体を凍らせた。そして良子のいる場所までいき、凍った良子の腕を掴み転移した。
良子は髪も焼け落ち、ただ人の形をした黒い塊になり、明らかに死んでいたが、リアはそれでは余りに可愛そうなので、細胞形成術を試みて、元の姿に戻すことにした。
「やはり、良子さんの「死」は運命だったのね...」
リアは良子の手を取って悲しんだ。
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