第7話 我慢できない

扉を開けると両手で俺の体操服を持ち、涙目でむせる鷺沼がいる。


「……やってくれたわね」


「ふ、お前なら必ず引っ掛かるって信じてたからな」


「光栄ね……ゴホッゴホッ」


なんかすっごいむせてる。

よく考えたら俺結構えげつないな。

まぁ後悔はしていないが。


「これで懲りただろ?もう俺の私物を盗るのはやめるんだな」


「それだけはお断りよ」


いや、なんでやねーん。

鷺沼のやつ、目がガチである。

血走ってて怖い。

決して学年一の美少女がしていい顔ではない。


「なんでそこまで俺の匂いに執着するんだよ」


「愛しているからに決まっているじゃない。もうあなたの匂い無しに生きていけない体になっちゃったの。責任はとってもらうわ。私にはそれを要求する権利があるもの。そんなこともわからないの?」


「いや、どう考えてもねーから」


おい、その残念な人を見る目で俺を見るな。

残念なのはお前の脳みそだよ……


「そして今日あなたは許されざる罪を犯した。まさか体操服にワサビを染み込ませるなんてね。これは詐欺よ」


「何言ってやがる。ってどうしたんだ!?」


急に鷺沼の呼吸が乱れる。

呼吸はどんどん荒くなり、壁に手をついて座りこむ。

顔も紅潮している。


「……ない」


「ん?」


「もう我慢できないっ!」


俺は急な出来事に体が硬直し動けない。

俺は鷺沼に押し倒された。

鷺沼は俺の腰に馬乗りになる。


「お、落ち着け鷺沼!こういう事には順序がモゴっ」


口を手で封じられる。

そして鷺沼は片手で器用に俺のYシャツのボタンを開けていく。

そして前を捲り、首もとに顔を埋めた。

うわぁ、すっごい匂い嗅いでやがる。

マジでドン引きだわ……

そこにエロスは存在しない。

あるのは変態と被害者だけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る