第5話 罠

結局体育は集中出来なかった。

というか田中くん、俺とすれ違う度に鼻をスンとしている。

気付いてしまったのか田中くんっ!

君ってやつは……

まぁ趣味アニメ鑑賞の人は彼女いないしな(主人公の偏見です)。

欲しいのは当たり前だが、さすがに鷺沼はレベルが高すぎるだろ。


ちなみに余りにも行動がクズすぎるから、俺の中では鷺沼さんではなく鷺沼になった。

あんな匂いフェチの変態は呼び捨てで十分だ。


そして放課後、俺は体操服を机の横にかけて教卓の中に隠れる。

勿論暇潰し用にスマホとモバイルバッテリーも用意は済んでいる。

さぁ、エサはそこだぞ?早く来やがれ鷺沼。

俺は彼女の愚行を止めるため策を打ったのだ。

これすなわち現行犯逮捕。

証拠を押さえてしまえばやつはもう俺のものをパクれない。

というわけで今に至る。


待ち続けること30分。

奴が来た。



奴は辺りをキョロキョロ見渡しながら罠に近付いていく。

ん?教卓の中にいるのになんで見えてるかだって?

こんなこともあろうかと錐で穴を開けておいたのだ(良い子は真似しないでね)。


さぁ、最初の挑戦者は鷺沼選手だ!

まずは静かに忍び足で目標まで向かうぞ!

最短距離を進んではいるが周囲の確認、クリアリングは完璧だ!

ここで目標までの距離は5メートルを切った!

おっと鷺沼選手、興奮のあまり涎(モザイク処理済み)がこぼれるっ!

残念ながら減点だ!

おっと、ここでついに鷺沼選手は目標をゲットしたぁっ!

嬉しさのあまり頬擦りを始めたぞっ!

しかし競技はここで終わりではないのだっ!

鷺沼選手、スキップで最終ゴールである掃除用具箱へ向かうっ!

扉を開け、華麗な動きで中に入った!

誰も文句の付けようが無い満点のダイブだぁっ!

ここで試合終了!

世界新記録を叩き出し、鷺沼選手が見事優勝に輝いた!


なんて馬鹿なことを考えながら掃除用具箱へ向かう。

中からゲホゲホと咳き込む声が聞こえる。

ふっ、罠と言っただろう?

何もせずに置くわけがないじゃないか。

しっかりと体育の授業のあと、体操服にワサビを溶かした水を染み込ませておいたのだ(良い子は真似しないでね)!

そして俺は掃除用具箱の扉を開けた。

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