タ子(Twitter300字SS)

伴美砂都

タ子

 タ子と会うのは大学卒業以来だった。夕子ゆうこの夕がタと読めるからタ子タコ。暖かい場所に行くと頬が赤くなった。酔っ払うと手をくにゃくにゃさせて変な踊りを踊るので、タ子がタコだ、と囃した。

 やんわりとした長袖の上着がめくれた腕にいくつもの痣と擦過傷があった。それ、と訊くとああ、とタ子は袖を引っ張った。

「きのうあおかんしてたのそのときについたんじゃないかな」

 へへっと笑う顔は変わらなかったが赤かった頬は、暖房の効いた喫茶店でも青白く見えた。レモンティはすぐ冷めた。

 夕暮れのまちを帰って行くタ子に、死なないでねと言えなかった。小さなショルダーバッグだけ提げたタ子の空いた両手は、角を曲がるとき一度だけくにゃりと動いた。

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