第35話 恋愛フラグをへし折るのに罪悪感なんて、あるわけない
マリオカートのことを知らない愛理には、簡単にコントローラーを持たせて、操作方法を口頭で教えてあげた後に、雅人と睦月が対戦するのを観察しては、ゲームに登場するアイテムの使い方や敵の倒し方をなるほどといったように首をコクコクと頷かせていた。
ゲーム内容は、シンプルなカーレースなので睦月は「ここに落とし穴があるから気をつけて」等と初心者には分かりやすい解説を取り入れているのに対して、雅人という奴はコントローラーを握ると人格が変わる無言ゲーマー気質っぽさが現れた。アイテムを要領よく使いこなしては一人で先頭を爆走。そして一位をかっさらう。
「はえーな」
「そうえいば雅人は昔からこのゲームをやりこんでいたね」
「えへへ、すっごいでしょ! いっちょあがりっ!」
はーっ、やれやれ。所詮はショタ属性。思考もキッズ脳でしかない。こんなんじゃ愛理にも不親切よ。
鼻で笑うのも束の間、愛理は見えない早さでゲームをクリアした雅人を拍手して褒め称えた。
「わあ~っ! 雅人くんすごいね! ゲーム得意なの?」
「えへっ! 僕はいろんなゲームを得意とするので知らないことがあれば、なぁんでも聞いてくださいねっ」
「ふふ、頼もしいね」
「次は愛理先輩が実際にやる番ですよぅ。もし操作が心配なら僕も一緒にコントローラーを握りましょうかっ?」
「え? ええ?」
あかん、愛理がどきまぎして雌のときめきを覚えそうになっている。
「ね~愛理先輩? 僕なら手助け上手にできますよ?」
手を後ろに組んで顔を覗きこむように聞く、あざとさの発動。なにが手助けだ。後から自分のコントローラー握らせようとしているくせに。小僧の思惑どうりにはさせてたまるか。二人の横から入り込んでやる。
「お話中失礼。愛理、次は私と対戦しましょ」
「あっ、桃尻さん。もちろんいいですよ」
それ、バキッっとな。恋が生まれようとしたフラグがへし折る音を心のなかで呟いた。悔しさで鬼の形相になっていないかと面白半分で雅人の反応を見たところ、眉や顔のシワを歪ませることなく、どこかゆとりのあるスッキリとした様で立っていた。なんだ、つまらない。こっちが負けた気がして却ってムカついた。
「あの、桃山さん」
「どうしたの? モジモジしちゃって」
「わ、私……このゲーム、初めてなので…や、優しくお願いします……」
彼女のお言葉は、桃尻エリカのにとってこう翻訳された。
「初めてなので優しくしてください」か。
ふーん、エッチじゃん。
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