第34話 勉強も人生も休憩しないとやってられない!

 午前十時、特に動きはなし。無駄口や私語もなく黙々と勉強。愛理は分からない問題を睦月に聞いて、私も数学で躓いた問題を質問。恵の教え方は悔しいけどめちゃくちゃ分かりやすかった。 


 午前十一時、十時台から変わったことはない。あるとしたらヘッドホンをつけた雅人がノートパソコンで動画サイトを視聴。三咲は寝転んだことだけ。私たちは手を休めることなくテストに出そうなワーク集を解いていく。


 正午、一度手を止めて昼食へ。用意された料理をこのままテーブルでいただいていく。楽しく喋ることもなく、サクサクと食べ終えたらまた勉強再開。


 勉強勉強、とにかく勉強。勉強勉強勉強……つ、辛いっ! 学生時代でもこんな勉強にかじりついた日はなかった。愛理は平気なのかと確認すれば、眉間にシワを寄せていかにも疲れが出ている。ああ、可哀想に……。そうよ、これが普通。前にいる二人が変人すぎるだけ。


 後から休憩時間がきっとあるはず、なんて期待を抱えて数学のワーク集を広げるも、ノートに事細かく並べていく文字が徐々に歪んでいっては、脳もパンク寸前。やらなきゃ……。謎の使命感からシャープペンに力を込めると芯の先がボキンッと折れたのを合図に私の中にあるストレスもついに破裂。 シャーペンを床に叩きつけてから、駄々っ子のように喚き散らしていった。


「うああああああー!!! もう限界なんだけど!! いつまで勉強すればいいのよー!!!?」


「桃尻さん、そこまで追い詰められていたなんて……休憩したほうがいいよ……」


「うんうん、休憩も大事だからね。下に日当たりのいいテラスがあるから行って休んでくるといいよ」


「ちっがーう!! 私が言いたいのは勉強会っていうのは……勉強もするけど途中で楽しく雑談したり、ゲームしたり、恋バナしたり盛り上がるってのも勉強会の醍醐味ってやつなのよ!! こんな常にちまちまちまちまと勉強勉強って……おかしくなるじゃないの!!!」


「おかしいのは元々だろ」


「三咲にいに同意~」


「シャラップ! 外野は引っ込んで! ねぇ愛理は? 愛理はどう? 疲れていない?」


「私ですか? そうですね、私もちょっと疲れたから勉強から離れるのもいいかもしれませんね。例えば、ちょっとしたゲームとかしたら気分転換とかになるのかな? ……なんて思ったり、えへ」


 そんなことを愛理が恥じらいながら答えると、私の嘆きに一ミリも興味を示さなかった男たちの瞳に炎が宿った。


「ゲームなら……家にたくさんあったはず……」


「僕の部屋に最新型VRあるので、愛理先輩のために取ってきますよ!」


「雅人が所持している他にも最新ゲームや歴代ゲームもあるんだ。愛理くんのためだ。今すぐ一式全て準備するよ」


「あー、なんか目疲れた。今度はアナログゲームしてぇ気分」


「じゃあ三咲、運ぶの手伝ってくれるかい?」


「わーったよ」


 ぷぷ、ケメンなくせして言動が好かれようと見え見えで超ウケる。使用人の手も借りないで男気ってやつかしら? ヨッ、やるねぇ!


「あの私、もしかして余計なこと言っちゃいましたか?」


「ううん、あなたはなんにも悪くないわ。ゲーム、楽しみましょうね」


 そうよ、このゲームを利用して私と愛理の仲をグッと深めるのに最適じゃない。生前はぐちょメモばかりにゲーム時間を費やした。それでも本来の私は、なんでもジャンル無制限でゲームを一通りかじってきたのだから、愛のギアレバーを全開にイケメンどもをなぎ倒してやる!

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