第25話 あぶない!サリバン先生!
わいやわいやとヒロインの取り合いをしても学校へ着けばもうこっちもの。雅人と恵は学年が違うのでそれぞれのクラスへ、三咲は安定のサボりでどこかへ消え失せ、睦月は本を借りに図書室へ。ふ~ん、誰も愛理といようとか思わないのね。もしかしてイケメンの余裕? 男で顔がちょっといいからって巻き返せるとでも思ってんのかしら。
「ふふ、馬鹿な男ども」
教室の机に座り込んでひたすら自習する愛理の背後から抜き足差し足、忍び足。真剣に取り組んでいる横顔もまた可愛い! よお~し、このまま驚かしちゃうぞう!
「あい――」
最後の「り」を言おうとすれば、すかさず私の襟を掴みかかる魔の手があった。誰かは知らないけど、朝食が逆流しそうなほどの力。遠慮のえの字がなさげな時点でほぼ三咲なんでしょうけど。
「ちょっと三咲! なにして……あ、あらやだ。サリバン先生!」
襟を鷲掴みにした犯人は三咲じゃなく、白玉団子のようなお団子ヘアがトレードマーク、生活指導部のサリバン。意外なことに背は低いので白髪お団子が目線と同じである。ていうか、髪がボリューミーすぎてどこまで頭なのか。もう逆に怖い。
しかしこのサリバン、様子が変だ。変なのは見た目もだけど、今日は一段とぐるぐる眼鏡を鋭く光らせている。
ん~、もしかして前の転落のこと? あれはサリバンと担任を交えてこれでもかってぐらい死ぬほど怒られたし、もう言うこともさすがにないんじゃない? それか愛理と交際疑惑についてとか? 基本、サリバンに呼び止められるって基本よくない報告なんでしょうけど。
なに言われるのか予測できずにいれば、すぐ近くの机上に数枚のプリントを並べていくサリバン。
「……なんすかこれ」
桃尻モードも忘れて素で返せば、
「んまー!? なんですのその口ぶりは!!」
堪忍袋の緒が切れすぎて火山が大噴火てな感じで大暴れ。見たことのないヒステリックなサリバンにクラスメイトはぎょっと見開き、愛理ですら動かしていたシャープペンシルを止めて私とサリバンの方に関心を変えた。やだ、恥ずかしい。
「それにあーた、本気で言ってるんざますか!?」
「え、はい」
考える気はないけど、本気で分からない。
「よ・く・み・る・ざ・ま・す!」
叩きつけられたプリントたちを食い入るように見れば……。
「なんだ、毎週している小テストのことですね!」
「毎週している小テストのことですね! ――じゃあないざます! なんですのこの点数は! 桃尻さん、あーたの服装はテストの点数がいいから、ま・だ! 黙認していたんざます!」
ふーん。すっご、元々の桃尻って頭いいんだ。伊達にご令嬢はしていないってことね、感心感心。
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