代償の硝子玉

ひとつめの気になること

真っ白い肌に長く細い手足

ふたつめの気になること

さらさらした艶やかな黒髪

みっつめの気になること

少し紅い頬は人形みたいで

よっつめの気になること

歩くと花の様な香りがする


とてもかわいい僕のお姫様

目を逸らさないでください

とてもきれいな僕のお姫様

その瞳は何を映すんだろう


いつつめの気になること

かわいい声で僕を呼ぶのに

むっつめの気になること

まつ毛を伏せて目を閉じる

ななつめの気になること

きれいな声で僕を呼ぶのに

やっつめの気になること

口元だけで笑っているんだ


僕のお姫様の瞳は硝子細工

不思議な硝子玉をはめ込む

僕のお姫様の瞳は反射する

瞳に映る物を全て拒絶する


苦しくて悲しくて動けない

彼女はいつだかそう言った

輝く瞳は硝子玉へと変わる

歪んだ世界を見せる硝子玉


煌めく瞳は硝子玉になった

空から降る雪は知っている

愛を誓った人がいたことを

粗目雪が大切に守っている


だから彼女は何も見えない

愛する人を想い続ける代償

だから僕のことも見えない

本物の瞳は取り上げられた


彼女はきっと忘れないんだ

忘れられないから毎日毎日

虚ろな瞳を向け僕に微笑む

どんなものを瞳は映すのか


それは誰も知りえないこと

それは雪しか知らないこと


今日も彼女は降る雪に祈る

淡く光る硝子玉は空を見る

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