第22話 合流
三尾を選択すると光り尻尾が三本に増えたクー太が現れた。
大きさは変わらず、尻尾が少し細くなった感じだ。
九尾の狐はわかるけど、九尾の狸ってのは聞いたことがないな。九尾になるかはわからないけど。
にしても俺もクー太も一気に成長したな。戻ったら他のみんなのレベル上げをしなければ。
あっ。そういえばアイツらはどうした?すっかり忘れていた。
「クー太。あの二人の匂いはまだ追えるか?」
クー太はクンクンと匂いを嗅ぐ、が。
『少し移動していいー?お猿さんと血の匂いで難しいー』
「おう。ならアイツらが向かった方へ移動しよう。少し駆け足で進めばすぐ追いつけるだろうしな」
『わかったー』
クー太が集めてくれた魔石は食べさせるのを後にし、とりあえず拾いポケット入れておく。
そして少し駆け足で移動を始める。
少し行ったところでクー太が二人を見つけたようだ。
『いたよー。止まってるみたいー』
「は?何やってんだアイツら?俺らがいなきゃ死んでるぞ?」
齋藤さんすまない。見捨てていいかな?
齋藤さんは悪くないんだが、どちらかと言えば高山か。俺も大概だが彼も危機感が全くないように感じた。しかもなんかめんどくさそうだ。
はぁ。あと少し面倒みればそこで終わりだ。と言いたいところなんだが…俺も街に行って会社に連絡しないとなー。食べ物もほしいし、スポドリとかも飲みたい。
まあ齋藤さんには悪いが別行動で街へ向かおう。別行動と言っても、一応ハク達が感知できる範囲で、何かあれば助けに入れるようにはしておくつもりだ。
もう十五時になる。時間を喰い過ぎたな。狩りができても森の中ではライトなどが無ければ、十七時が限度だろう。開けた場所でも十八時が限界か。
日が落ちたら流石にレベル上げは難しいだろうしな。外灯もないし。月明かりが届く場所を探して魔物をおびき寄せて倒すか、川の近くで火を何ヶ所か焚いて灯りを確保するか。
それに街まで彼らの速度で行ったら日が落ちそうなんだよなー。あー、もう。
眼では発見されないところまでクー太の案内で近づき動き出すのを待つ。
『動き出したよー』
「よし」
それからまた歩き16時になった。
歩くの遅くないか?
『そろそろランたちのところー』
「ならもう見張ってなくても大丈夫だな。先にハクたちと合流しよう」
『ならランがここから一番近いかなー?向かうねー』
「了解だ」
それからすぐランと合流ができた。
『ご主人様!クー太!大丈夫!?血の匂いがかなりするわ』
「あー、そんなにか?血はあんまり付いてない、よな?それに俺もクー太も怪我してないから大丈夫だ」
『大丈夫だよー。ただいまー』
「あ、ただいま。ラン」
『おかえりなさい。血の匂いはするわ。怪我がないならよかった。ハクも血とご主人様の匂いに気づいたのでしょうね。こっちに向かって来てるわ』
「心配させたみたいだな」
『そうよ。それにしてもクー太!なんで進化してるの!やっと並んだと思ったのに!』
『えー?戦ったら進化したー?』
『そりゃあ戦わないとレベルが上がらないんだから進化できないでしょう!そうじゃなくて私達と別行動してからなにがあったのよ!』
『んーー?いろいろー?』
『説明するのがめんどくさいだけでしょう⁉︎』
『ちょっとー?』
「ラン。後で説明してやるから落ち着け」
『むー。わかったわよ…』
ランがクー太の進化について問い詰めているとハクがものすごい速さで駆けてくるのが見えてきた。
ハクは俺の前で急停止し、ジッとコチラをみてくる。
「心配かけたな。怪我はしていないから大丈夫だ。ただいま」
『ご主人様の血の匂いではないとは思いましたが…心配はしました。おかえりなさい』
ハクとランのことを強めに撫でてやる。本当いい子達だ。
「クレナイを呼びに行こう。それとアキもな」
『アキちゃんはわかりませんがクレナイさんはもう気づいていると思いますよ。ただコチラへ来るのを我慢して、念のため彼女を見ているのでしょう。アキちゃんがひっきりなしに話しかけていましたし、大変だったと思うので労ってあげてくださいね』
「ああ。悪いことしたな。ちゃんと労うよ。クー太はクレナイを呼びに行って来てくれるか?もう大丈夫だと伝えてくれ」
『行ってくるー』
クー太を見送ると二匹が質問してくる。
『なにがあったの?クー太も進化してるし…』
『本当です。血の匂いもしますし、だいぶ草臥れているように見えます。彼女のお仲間は見つけたのですよね?2人ほど人間の匂いがします。なのに別行動しているみたいですし』
「あー。それはな。途中で合計十七匹?だったかな?大猿の団体に襲われたんだ。多分あの二人を追いかけて来たやつだろうな。それと一緒に行動してないのは俺が魔物を殺すのが気に食わないそうだ」
『なにそれ⁉︎』
『失礼なやつらですね。殺しますか?』
おい。そんな怒るな。それとハクは物騒だぞ。やめてくれよ?
「そんな目くじら立てなくていい。俺も腹は立ったが、まあ齋藤さんに約束したからここまで面倒見たんだしな。もう関わることはないんだ。気にするな」
『ご主人様がそういうなら…』
『仕方ありません…。殺すのは諦めましょう』
ハク怖いよ?牙を剥いてそんなこと言わないの。
『それで?たくさん倒したらクー太のレベルが上がって進化したのね。私も早く進化したいわ』
『そうですね…。私も進化したくなりました。もうクー太さんの方が強いでしょうし、追いつきたいですね』
「そうだな。ランには悪いが【制限解除】のスキルをクレナイとハクに覚えてほしいから二人が優先だな」
『それはもちろんだわ』
『ありがとうございます』
「ただもう少し時間がかかるからな…。クレナイとアキが来たら説明するよ」
『ならもう来るわよ』
ん?むむむむ。はい。気配察知できません。
お。クレナイだ。赤いからクレナイ自身が隠れるつもりがなければよく見える。
『主様!おかえりなさいませ。御無事で何よりです』
『ご主人おかえりなのですー』
『連れて来たー』
「ただいま。クレナイありがとうな。アキはいい子にしていたか?」
『もちろんなのです!』
『まあ…少々騒がしかったですが問題を起こしたわけではありませんので大丈夫です』
「そうか。そういえば魔物は現れたか?」
『いえ、私のところや彼女のところには来ていません』
『そうなのです!わたしの活躍の場がなかったのです!』
アキはそんな闘いたいのだろうか。
『こっちは大赤蛇が何匹か来たわ。あと黒いのがいた匂いはしたけど見つけられなかった…』
『こちらは大赤蛇と猿が二匹ですね。特に問題はありませんでした』
「そうか。俺らが向かった方は大猿しか出なかったな。ここら辺から大赤蛇と大猿の縄張りが分かれているのかもな。それに黒蛇は隠密に特化している感じだし見つけにくいのだろうし仕方ない」
黒蛇は見つけにくいし、前にあったやつみたいな性格のばかりだったらテイムは難しいだろう。
「そういえば齋藤さんは合流できたのだろうか」
『主様。私達があちらから離れる時にちょうど合流していましたので大丈夫です』
「ならよかった。じゃあこれからのことを話すな」
先程考えていたように彼らを見失わないくらいの位置で移動し、街に行ったあとコチラに戻ってきて川辺で火を焚いて狩りか、月明かりの当たる開けた場所を探しそこで狩り。
この2つは無しだな。
これからは…。
「まず、また別行動になる。俺とクー太で彼らを追いかけながら街に戻り、お前達はレベル上げを優先してくれ。魔石はクレナイとハクが優先で食べてくれていい。でだ。街に戻って用事を済ませたら灯りを多めに用意して戻ってくるから日が落ちても進化できていなかったらできる限り狩りをする。そんな感じだ。また別行動になってしまうのは悪いな」
『わかったー』
『仕方ないわ。でも私もついて行きたかったわ』
『かしこまりました。頑張りますので主様もお気
をつけて』
『怪我せず戻ってきてくださいね』
『またお留守番なのです⁉︎ご主人はやっぱりわたしのこと嫌いなのです…?』
「ランすまないな。クレナイもハクもそんな心配せずとも大丈夫だ。アキ。そんなことないと言っているだろう?戻ってくるからレベル上げ頑張ってくれ」
こんな予定じゃなかったんだがな。一度関わり約束したのに無責任に放り出すのは嫌なのだ。まあ齋藤さんからしたら約束を破ったと思うだろうが。
「彼らはまだ移動しないか?」
『んー。あれー?』
『ご主人様。一人こちらへ向かってきます』
「え?なんで?」
『さあ。わかりません。私達は隠れた方がいいでしょうか?』
「そう、だな。そうするか」
『ご主人さまー。多分さいとうさん?の匂いだよー』
「そうか。俺を探しているのか?いや、でもここにいることはわからないだろうし…」
「なーかーのーさーん!」
!?!?
俺がここにいるのがわかるのか⁉︎気配察知のスキル持ちか⁉︎
『ご主人様もう来てしまいますが…』
「え、あー。くそ。どうするかな」
「あ!中野さん!やっぱりいた!いる気がしたんです!あの!中野さ、ん…?」
はあ。今のは完全に俺が悪い。考えが纏まらずハク達を隠せなかった。そりゃあ戸惑うよなー。めんどくさい…。
どうしたものか…。
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