第29話 ガーゴイル狩り

 


 魔力は十分回復していたし、休憩を取ったのは精神的な疲れからだ。モモがいなくて自分でも不思議なくらい焦った。

 モモと出会ってどれくらいの時間が経っているのかは知らないが数日だろう。なのにここまで俺の中で大きな存在になっていることに驚いた。基本的他人に興味を示さず、趣味は数多くあるが相手がいないとできないゲームなどはやらないし、気になったことは片っ端からやるがそれすら自分の中で満足したら割とすぐ辞める。人にも物にも執着が薄いと自分では思っていたのだが…。

 ダンジョンという物凄く興味を惹かれる物が現れ、更には喋るヒヨコなんて変な奴が現れ…。

【精神耐性】の数値を見ればわかるだろうが昔は色んなことがあり…色んなことがあったとは言えもっと凄惨な生活をしてきた人間もいるだろうになんで俺の【精神耐性】は高いんだろうな?


 まあそれはいいが、そんなこんなで他人と深く関わるのが面倒になり、距離を置こうとしている自覚はあったし、実際いくらウマが合おうが、距離を置くようにして精神的負担を避けていたのが…そのストッパーが外れたのだろうか?


 自分でもわからんが…モモが大切になっているのは事実だな…。


 まあ自己分析なんぞ置いておいて楽しい楽しいガーゴイル狩りだ!


「よしモモ!たくさん狩るぞ!」


「殲滅しちゃいましょうー!」


 少し駆け足で移動を始める。水魔法一発で地に落ちのたうち回るガーゴイルなど怖くない。とばかりに。

 水魔法の練習は少しした。アクアボール的な水大砲の小さい版。野球ボールくらいを飛ばす魔法が使いやすい、とモモに言われ練習したが、木の矢をずっと使っていたからか水の矢の方が球よりも各段に作りやすかったので水の矢をメインに使う。技名を叫ぶならアクアアローだな。木の矢は…ウッドアローだろうか…?まあ技名なんて言わないが。

 水の矢メインで、他は今のところ水の球、ただ単に掌から水を放出するだけの技しか練習していないが十分だろう。


「ガーゴイルだ!とりあえず俺が水の矢を撃つから、地に落ちたらモモも水をかけてくれ。流石に一発じゃあ死なないとは思うが死んだら済まん」


 水の矢を生成する。木の矢と違って硬さとかは特に気にしない。意識すべきは大きさと撃つ速度と威力だな。まあガーゴイル相手なら大きさと避けれないくらいの速度だけ意識すればいいか。


「ガァァァア!」


 うむ。墜落した。本当楽だなぁ。

 モモがすかさず水をかけるとのたうち回るので俺がもう一度水の矢を顔に向けて放つと一層叫び声を上げ動かなくなった。

 なんか水に触れると溶ける感じか?本当どんだけ水が苦手なんだよ…。そんな水に弱いのになんで水中メインの階層の下に配置されているんだよ…。

 同情はしないがな。どんどん経験値になってもらおう。

 それからまた駆け足で移動し、見つけては先程と同じ手順で倒していく。

 面白いくらいに簡単に倒せるが…。


「飽きてきたな」


「ええー!楽しいじゃないですか!」


「まあお前は楽しいだろうな。モモ単独で倒せる魔物なんてそうそう居ないだろうし」


「そうですよ!バンバン倒すの楽しいです!ほら!もっと倒しましょう!」


「この階層飯がないからなぁ…。それと一番やる気が削がれる理由が【物理耐性】と【身体強化魔法】。後はブロック石…じゃなく魔石か?魔石ばっかじゃねーか。どうしろってんだよ」


「まあまあ!飛行魔法とか重力操作とかのスキルが出る可能性だってあるんですから!」


「ん?重力魔法じゃなく操作?それに飛行の魔法なのか?」


「はい。重力魔法もありますけど…多分ガーゴイル程度じゃドロップすることはないですね。最下層のボスが重力魔法を使うんだったらドロップするかもしれませんがめちゃくちゃレアです。ガーゴイルならドロップしても重力操作。自重を軽くしたり重くしたりするくらいしかできないスキルですね。

 飛行魔法は飛行魔法です。細かく言えば風魔法、重力魔法に含まれる飛行するための魔法だけが複合した飛行するためだけの魔法です」


「ほーん?複合魔法ね。しかも飛行するためだけの。他のことは出来ないのか」


「出来ない。と知識にはありますね」


「まあ細かく考えても仕方ないが…そういうのがドロップするなら頑張るか」


「やった!」


 どんどん狩っていく。すでに階段は見つけたがモモの希望通りガーゴイル狩りをする。魔法スキルも手に入っていないしな。ダゴンもそうだが魔法スキルの確率低すぎないか?

 何匹倒しただろう。スキルペーパーは集めすぎて全てのポケットがパンパンになったので【水泳】は捨て、【物理耐性】も今は拾っていない。


「だ、大地さん…」


「ん?」


「ちょ、ちょっと待ってもらっていいですか…?」


 モモを見ると少しフラフラしながら降りてきたので掌で受け止める。


「どうした?魔力切れか?確かに俺もあんまり休みも取らずかなり魔力を使っているから少し身体が怠くなってきたが…」


「い、いえ…ちがいます…」


 まじでどうしたんだ…?攻撃なんて食らってないだろう?


「多分進化…です」


「進化!?遂に鶏になるのか…」


「な、なにしみじみいってるんですか…!」


「ツッコむ元気があるなら大丈夫だな」


「いえ…なんだか凄く眠くて…。進化の兆候だと知識にはあるんですが…」


「なら休憩しよう。気にせず休め」


「ありがとうございます…」


 モモが眼を閉じた。

 進化か…。何に進化するんだろうな?鶏しか思い付かないが妖精だしなあ…。ドラゴンとか?いや、ないな。後は…妖精といえば小さな人型?うん、それならありそうだ。


 十分程するとモモが発光し始めた。遂に進化するのか?鶏になったらからかってやろう。

 そう思い手のひらに乗せたままソッと見守ることにした。

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