第二話


 ……またこの夢か、くそったれ。


 所々がモノクロで至る所が不鮮明な空間に俺が佇んでいる。実家を出てからしばらく見なかったのに、ここ最近になって頻繁に見るようになってしまった……妙に懐かしい、嫌な夢だ。


 何が嫌なのかというとだ、自由と情報が少なすぎるんだ。ソレでも何度かこの夢を見る内に少しずつ分かってきた情報を整理すると……だ。


 モノクロながらも空が近くに見えることから、ここは屋外の、高い所なんだろう。時間は知らん。視界の端に手すりが見えることから、ここはどこぞの建物の屋上に違いない、と俺は結論付けた。


 さらに、だ。俺の目の前に女性が立っている。その女性はセーラー服にスカート姿という、所謂女学生の出で立ちをしている。そんなワケで、ここは学校の屋上なのだろう。何回もこの夢を繰り返してここまでは分かった。


 目の前の女性の顔は不鮮明でイマイチ窺えない。


 間違いなく美人と言える顔立ちをしていることはなんとなく分かるのだが、風になびく長い髪が巧みに彼女の顔を隠してしまい、口元くらいしか見えないのだ。


「――っ」


 俺は彼女に何か声を掛けようと試みるが、俺の喉は何の音も発してはくれなかった。


 そう。ここからがこの夢のくそったれな部分なのだが、喋れないのだ。それどころか、視線を動かすことすら出来ない。


 そして時間切れだと言わんばかりに視界が暗くなっていく。こんなのをもう何十回、何百回と繰り返してるんだ。諦観の念に囚われても不思議じゃないだろう?


 もううんざりだ。俺にどうしろってんだ。


「――――」


目の前の女性が何かを口にし、微笑む。ソレだけで、ソレだけなのに――


「……っ!」


 ――得体の知れない感情が爆発的に渦を巻き、喉は届かないと分かっているはずの声を張り上げようと、身体は動かないと分かってるはずの手を伸ばそうと抗う。諦観の念など頭から吹き飛ぶ。


 しかし抵抗も虚しく、景色が暗くなっていく。意識が闇に呑まれていく。


 もううんざりだ。俺にどうしろってんだ。俺は……


 俺はどうすればいいんだ。

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