調香堂見学バスツアー

晴れ時々雨

🌼

建物の外門の前まで来るとすでに香りを感じることができた。建屋の外壁は窓らしきものもない白一色ということだが香りを認めると赤色に見えてくるのが奇妙だった。設備を案内する係の人に導かれた作業部屋ではエナメルのような黒い手袋をした作業員が10種類前後の香りの素を手で搾っている。無機質な室内に植物園の景色が広がる。

門の前で感じた匂いがそれを嗅ぎとった者の求める香りで、外壁はその香りからイメージされた色が反映されるらしい。要は人によって見え方も匂いも違うのだ。

帰りのバスで各々違う土産を持たされ、見た物の感想を言い合う人たちはどこかのんびりしている。知られたって平気な人ばかりだから。

私は口を噤み、土産の瓶を鞄の底に押し込んだ。

黒い手袋が握っていた物の中に心臓のようなものを見たからだった。それはまだ動いていた。

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調香堂見学バスツアー 晴れ時々雨 @rio11ruiagent

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