第8話 戦闘
クムラン・ダンジョン17階層、迷宮エリアの最終階層で、ミノタウルスと盗賊の混合パーティは討伐軍を待ち構えている。ミノタウルス1頭+盗賊4人×3パーティの編成隊だ。
戦いの前に、盗賊団の頭はファンシーな黒牛の着ぐるみ姿で、手下たちやミノタウルスを前に、檄を飛ばす。
「よし、いいか、てめぇら。この戦いで成果を出せば、ダンジョンから解放するとダンジョンマスターから確約を取ってある。これでようやく農業も穴蔵生活もおさらばできるんだ。気張って行くぜ!!」
「「「へい、お頭! ガッテンだっ!!」」」
手下たちも、ファンシーな白黒ブチや茶の牛の着ぐるみ姿だ。
「ミノ先生には、いつも通りよろしく頼んますっ。もちろんミノ先生にも、ダンジョンマスターから好物のご褒美が出るそうです」
「「「ブモォォォォォォォッ!!」」」
――ミノタウルスは、ホンモノの牛頭獣人である。
「作戦通りに、落ち着いてやれよ? ビビんじゃねぇぞぉっ」
「「「おーっ!!!」」」「「「モオォォォッ!!」」」
◆◇
「なんかすごい気合が入ってるな」
モニターから、盗賊団たちの気迫が迫って来るぜ。
「ディーンが、頑張ったら解放するって、約束したのが良かったみたいだね」
ニコっと笑ったアーサーの、可愛さの破壊力がすごい。
「……うん。盗賊団は、村里にもイマイチ馴染めてないみたいだし、そろそろ解放してやってもいいかなって思ってたんだ」
「あとは作戦がうまく行ってくれるといいけど」
アーサーが考えた作戦、コードネーム:オーバーロード――オレのネーミング!――は、討伐軍の攻略作戦とダンジョンのシステムを最大限利用したものだ。
これまでのところ、討伐軍は5人ずつパーティ編成されていて、上の階層からボス戦を終えて降りて来た時、3パーティ揃うまで先へ進まない。
下の階層に降りるには、階段の手前のボス部屋でボスモンスターを倒さなければならない。そして、ボス部屋は一度に1パーティつまり、5人までしか入れない。
ボス部屋は一方通行になっていて、戦いに勝って先へ進むと、その扉は開かないし入れないんだ。帰りは別の階段から、ボス部屋を通過せずに戻る仕様になっている。
だから、ボス戦を勝利して出て来たパーティを、退路のない階段で後援が来る前に、やっつけてしまおう、というのがオーバーロード作戦の主旨だ。
本来、階段はセーフエリアと同様に、モンスターの出現しない場所だ。でも盗賊達はモンスターじゃない。
ダンジョンに住んでいる盗賊が、討伐軍を闇討ちする――つまり人族同士で戦う分には、神々の定めたダンジョンルールに抵触しないんだ。
ミノさんと盗賊団パーティは、階段の陰に隠れて、討伐軍が出て来るのを待っている。
「あー、見てる方がドキドキするなぁ」
そんなオレを見て、隣でプッと吹き出してる奴がいるし。
ギィィィ……。ボス部屋の扉が開く音がして、ガヤガヤと先陣パーティの話し声と足音が聞こえた。
――バタン。扉が閉まった! 今だッ!!
隠れていたミノさんチームが階段下に姿を現す!! 驚く討伐パーティ!
「よし、行っけぇ――っ!!!」
盗賊×4は、クロスボウで銀の毒矢を放った!
ヒット、ヒット、剣で叩き落とされた、ヒット、ハズレ!
「いいね、赤狼人傭兵を含め、三人に刺さった。毒状態になってる。次は討伐パーティの攻撃ターンだ」
データを冷静に収集するアーサー。
討伐パーティの前衛、赤狼人傭兵と騎士が剣を抜き、階段を駆け下りて来たぞっ!
盗賊たちは、慌てて後ろに下がり、ミノさんを前衛に押し出す。
盗賊団の頭が「ここはひとつと言わず、ミノ先生、よろしくお願いします!!」と言えば、尺八のBGMでも鳴り響きそうな渋い雰囲気で、ミノタウルスがずいっと、登場する。
「ミノタウルスだぁぁあああっ!!」
討伐パーティから悲鳴が上がる。牛頭獣人の巨体に大盾と大鉈を構えた姿は、迫力満点だ。
ミノタウルスは、赤狼人傭兵の攻撃を受け流した。
騎士がバックラーを当てて、長剣を繰り出す。
後衛の僧侶や魔法使い、弓兵は、自分達の回復や毒消し草を使うのに必死で、前衛の援護どころではない。
そして、ミノさんパーティの番になると、再びクロスボウの矢を装着させた盗賊達が、前に出て射ると素早く後ろに下がる。
巨体のミノタウルスが大鉈をブンッと振るう。
「おお、連携プレイ、上手いぞ!」
「着ぐるみに敏捷度upの魔法付与がされているのも、効いてるね!」
赤狼人傭兵に弱点の銀の毒矢のダメージが蓄積し、ついにHPが40%を切った。
そして赤狼人の
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