第3話 聖剣エクスカリバー
「お前が持ってるその
あーあ。言ってからしまったと思っても、もう遅いってヤツ、卒業したいな……。
「ディーン」
「はい。……」
アーサーは、いつも近くに置いている聖剣を持って、改まった様子で話し始めた。
「この剣は、先見の力を持つ、教皇聖下から授けられたんだ」
「どういうこと?」
「亡くなられた教皇聖下は……自分の死後、国と教団が魔族と戦を起こすのではと、お考えになっていた。もし聖下が近く死ぬようなことがあれば、ボクに聖剣を持って身を隠すようにと命じられていたんだ」
「まさか! 人族は、再び魔大戦を起こそうというのか? どうして……」
「平和な世の中になったから、教団へのお布施も減って、信徒も聖都の巡礼者も年々少なくなって居るんだ。それで勇者を利用して、魔王討伐とか魔族との戦争とかで人々の不安を煽って、国や教団の力を強めようとするかもしれないと、聖下は憂慮されてた。……それが現実になるか、ボクには分からないけど」
先見の力はレア・スキルで、ほんの少しだけ未来が見えて、それを読み解く力だと言われている。未来は人々の選択によって変わっていくから、流動的で、必ずしも先見が見た、その通りになるわけではないらしいけど。
使いようによっては世界の運命をも変えるほどの力を持つスキルなので、保有者が見つかれば国から、大切に保護される。勇者だって世界に一人だけの超レア・スキルなのに、教皇は先見も持ってたんだな。
「教皇は、自分の次にアーサーが勇者になると知ってたのか」
「うん、多分」
「ここに来ることも、教皇が?」
「違う。ボクが決めた。ディーン達には、迷惑をかけるかも知れない。でも、ボクは……」
「いや、過去の魔大戦のことは、先輩竜から聞いている。ダンジョンマスターたちも、巻き込まれたんだ。オレだって無関係じゃいられない。アーサーが魔王さまと戦う気がないのなら、ここに居ればいいよ」
話を聞いたら、なんだか想像以上にきな臭いな。ここは備えあれば、憂いなしだ。
「ゴーレム用の人形を急いで作ろう。取りあえず、土と木、石のゴーレムならすぐできる。木のゴーレムは、森林エリアの木を伐採すればいい。人形を用意して召喚すれば、一体に付き10,000DPのところを8,000DPになるんだ」
オーク達には、森林エリアで木の伐採をするように頼み、オレとアーサーは草原エリアに行く。村里の周囲に深堀を作った時の土が、ゴーレム人形を作るのにもってこいだ。
竜化して前足で土をこねる。アーサーが水魔法ウォーターボールで、土をこねやすくするために水を足した。
よし、伝説の巨人族を模して、カッコいいやつを作るぞ。
「竜が泥まんじゅう作ってる……」
アーサーが笑いをこらえてた。
どこが饅頭じゃ!! 饅頭には手足がないんだぞ?
泥まんじゅう、じゃなくて泥人形にDPを使ってゴーレムを召喚すると、ちゃんと土が固まって動いた。素晴らしい。
森林エリアで木を伐採したオーク達は、続けてその木で人形を作った。思ったより器用で、オレが作ったゴーレムより、よっぽどゴーレムらしい。なんかちょっと、ショックだ。
石人形は、オレの土魔法
「ディーン、なんかこれ墓石みたい……」
泥まんじゅうとか墓石とか、オレの傑作ゴーレムにひどい言いようだ。
「ゴーレムは、見た目じゃないぞっ。強ければいいんだ、うん」
村里にも念の為、守衛門番として数体、ゴーレムを配置しとこう。ハーフエルフの娘達、非戦闘員もいることだし。
ゴーレムを村里に連れて行くと、ゴブリン村長が迎えてくれた。
「ディーンさま、この木のゴーレムは
ゴブリン村長が、しきりに感心している。
「……それは、オークが制作した木人形のゴーレムで、オレが作ったのはこっちの土ゴーレムと石ゴーレムなんだ」
「えっ?! ああ、そう、その。泥まんじゅうもよく出来てますだ。墓石も立派ですだ」
「そうかそうか。村長の墓石に使うか? 今すぐでもいいんだぞ?」
お前たちまで、ひど過ぎるぞっ。
「ヒィィっ」
それから、後からやって来たオークの里長に、向き直った。
「オークの里長は……」
「泥まんじゅうと墓石をぜひ、うちの里に!」
ははーっ。とオークの里長がひれ伏した。
「うむ、苦しゅうない」
巨大泥まんじゅうと墓石ゴーレムを配置すると、里の景観が……とか言っている、嫁入りしたばかりの娘っこの声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
とにかく安全第一!! ちゃんと女子供を守っておかないと、鬼どもも安心して出陣出来ないだろうからな!
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