ウチのダンジョンに幼馴染の勇者(♀)がやって来た!
雪月華
第一章 ウチのダンジョンに勇者がやって来た!
プロローグ いきなりボス戦
ここは、ティンタジェル神聖王国の聖都にほど近い、カムランのダンジョン最下層。
アーサーは、一つ前の20階層のボス部屋で戦いを終えると、出現した最下層への階段をしっかりとした足取りで降りて行く。光魔法
赤いチュニックの前身ごろには、大きな白十字のフレイア教の紋章が描かれている。神の為ならば血を流すこともいとわないという、彼らの主義を現す赤と白の聖騎士団の騎士服だった。
階段を降り切ってフロアに到達すると、巨大な石柱に取り付けられたランプが、自動で灯かりを灯した。その次の石柱も順番に最奥までライトアップされて行き、暗闇から浮かび上がっていく。
石畳の床のホールに立って上を見ると、高い天井はアーチを描いていた。
「ラスボスと戦うには、丁度よい場所だな」
黒曜石のような瞳は、この後の戦いへの期待でキラキラと輝いた。最終決戦に向けて高揚しているのか、白く滑らかな頬は赤みがさしている。
……そしてホールの最奥から、強大な力を持つものの気配が現れた。
ズドオォォォォン、ズトォオオオオオン、ズドドォォオオオオオオン。
地響きと共に、現れたのは全長10m程の地竜。艶やかな栗色の鱗に、長い尾。翼はなく代わりに四肢が発達している。
縦に細長い瞳孔の目は、ギラギラと金色の光彩を放ち、フロア全体を威圧した。
初級冒険者なら、この威圧だけで固まって動けなくなっただろう。
地竜のユニークスキルは『地震』だ。
アーサーは鑑定スキルを発動させて、相手の情報を読み取っていく。そして素早く肉体強化魔法を自身に掛ける。
「クッ! アーサー。お前か……!」
大きな爬虫類のような瞳に、黒髪の少年が映し出されてうめいた。
「ああ、ディーン。また来たよ」
朗らかに答える少年の明るい声が、ホールに響く。そして腰に吊るした白銀の剣の柄に手をやると……。
ぐわっと、竜の金色の目が見開かれ、次の瞬間。
「……ごめんなさい。降参します。好きなお宝どれでも、何なら全部あげるからもう帰ってください」
巨体を最大限縮こまらせ、身を低くして前足をそろえ、地竜が頭を下げた。
「ええっ? やらないの?」
「やらない。その剣がなんか……変なオーラ出てて怖すぎるもん」
「そんなあ。せっかく新しい剣、ディーンで試してみたかったのに」
「……ひっく、うっく、ううう。くそぉ。くやしい。ぐすっぐすっ。今に見てろぉ」
無念そうな地竜にアーサーは、なだめるように巨大な竜の頭部を撫でた。
「お出迎え、ありがと!」
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