アリアンロッドサガ・リプレイ ラストソング

@kikurage47

第1話 転生の始まり

——とある深夜、二人の人間がチャットで話し合っていた。

いや、一人の人間がまくし立てていたといったほうが正しいだろう。

まくし立てている方はこのリプレイの著者であるGM。

それを頑張って聞いているプレイヤー……すなわちPC①氏がいたのであった。


——行っているのは、アリアンロッド2Eでこれから行う……キャンペーンのキャラ作成であった。

ハンドアウトの指定はアーシアン。アイドル志望。そしてアコライトにバード。

アイドル志望の歌って踊れる転生少女のデータは、1レベルであることも相まってするすると完成した。

……プレイヤーの希望に合わせてTS系美少女になったが。

そして、大体のデータ作成は終わり、ライフパスを振るところまで、話し合いが進んだころ——。

GMは唐突に一つのシートを取り出した。



GM:ではまず「人間性」から決めていきましょう

PC①:こ、こんなものが……!!


取り出したのは『ストレンジャーズガイド』版のライフパス、以前のアリアンとは一味も二味も違うレベルで設定を詰められるのだ。


GM:1d6で、まず表を決めて……ふむ、3ですね。このシートの3番を使ってください。世間ではAだが、実際はBという設定が付きます。

PC①:世間では「常識人」と思っているが、「ドルオタ」である……こうでしょうか

GM:ではそれを決めていきましょう、2d6をどうぞ。

PC①:……5,5

GM:世間では「ぼっち」だが……

PC①:…… 1、4

GM:ふむ、世間では「ぼっち」だが、実際には「天才」ですね。立場はチョイスで学生ですね?

PC①:はい、大丈夫ですのよ。

GM:では次の1dを。「どんな学生か決まります」

PC①:……5.「劣等生」ぼっちの劣等生だけど実はすごい力を秘めていた……?いやこれ完全に無双系の出だしじゃん!?

GM:では大切なものを決めていきましょう。2d6どうぞー

PC①:……1.4。

GM:未達の約束――あなたには果たしていない約束がある。元の世界で果たさなければならないものか。それともこの世界で果たせば良いものなのか——PLは好きに決定して良い・……つまりアイドルにならなければならない約束……?

PC①:ちょうどそれ言おうと思ってました(笑)世界に羽ばたくトップアイドル!!に、なる約束かなぁと……。

GM:ふむ。良い導入思いついたので、そのあたりは任せてください(何かを企みはじめるGM)

PC①:えぇ、全力でロールいたします……!!

GM:では、最後に「特異」を振ってみましょう

PC①:……私も、どんなキャラにするか構想は決まったので。2,4.

GM:「信じる心」――あなたには譲れない想いがある。実力を出し切れなかったけれど、決して叶えられなかった「夢」。けれど、君はあきらめたりはしない。

PC①:……アイドルになる夢を諦めない、的なかんじですかね。一度挫折したとか。

GM:というわけで一般スキル《インサイト》を習得です。

PC①:はったりや嘘を見抜く……天才なスキルですね!!(

GM:では次はにどんな転移だったか2D6で決めましょうか

PC①;……3。トラック……トラック!?

GM:「トラック」

PC①:ベタofベタ……!!

GM:転・生・ト・ラ・ッ・ク

PC①:でもリアルに考えたら悲惨!!


劣等生の天才でトラックである。

しかもコミュ力がなかった……まさにベタ。GMは画面の向こうで噴出していたのは言うまでもない。


GM:目標を決めましょうか。2d6どうぞー

PC①:……ふむ。「人探し」ですか

GM:何か幼なじみかなにかと一緒に転移したのかな?

PC①:もしくはアイドル仲間の有力候補とかでも面白そうですねー

GM:……さて、最後に。名前と年齢と見た目をお願いします。


こうして、一人の転生者が誕生した。

これから始まるキャンペーンの導入としては、良いキャラクターが出来たのではないだろうか。




リオ:「春川 梨雄(はるかわ りお)、17歳!!こっちに来てからは、ハルカって名乗ってまーす♪」デフォルトでアイドルみたいな服装着せたいんですが、どうでしょう。

GM:いいですよーグラ○ルのア○マスキャラみたいな感じですかな

リオ:じゃあそれで、見た目は……グラブルのディアンサを、金髪にした感じですかねー。

GM:了解です……というか、もしかしてTSにノリノリ……!?

リオ:そりゃアイドルなんてやらせるからにはそうするのが一番でしょう……!!。見た目はディアンサ、中身はカリオストロ!!ちなみに名前の由来もカ『リオ』ストロです!!

GM:カリオストロ……いいよね……

リオ:いい……。もうそういう想定だったので、『実は天才』引いたときにはもう神が降臨したと思ったよ……

GM:そうか……カリオストロか……


——そんな話をしながら、GMはハンドアウトをかき上げていく。

その場でハンドアウトとトレーラーを作る。禁断のGM技である。よい子はマネをしないように。


GM:というわけで、ハンドアウトは今この場で書いたので。ほんの少しだけ。最初の導入をしましょう。

リオ:は や い よ


大体3分あればハンドアウトは書ける。GM知ってる。



リオ:ちょっと待って? シナリオはどうするの?

GM:その場で作ります。アドリブです。

リオ:……。



キャラクターがあればシナリオはノリで作るものである。

良い子は絶対にマネしてはいけない。




※ ※ ※



 僕の名前は、春川莉雄。

 札幌市の高校に通う、高校生だ。

 成績はあまりいい方じゃないし、人付き合いも得意か不得意かと言われたら。苦手かもしれない。

 かといって背が高かったり、運動神経がいいわけでもない。


 昨日とかわらない今日。

 今日と変わらない明日。

 

 そんな僕にも。日常は回って来る。

 そこそこに幸せで、明日も変わらない日が来る。

 あの日だって、そうだと思ってた。

 いつも通りに、学校に通っていた。あの日。


GM:「よう、今日も早いな」

リオ;「ま、これくらいはまじめにやるよ。成績もいい方じゃないからね」

GM:「そうだな。芸能人みたいな副業でもあれば別なんだけど。俺らはまじめにやるしかないからな」

リオ:「芸能人、ねえ」

GM:「そんなそっけない顔してても。お前の幼馴染は芸能人、だろ?」

リオ:「まだ見習いだって。それに幼馴染っていっても最近は……その……」


 朝の空気に満ちた教室。

 クラスメイトの言葉に、うつむきながら押し黙る。

 たしかに、僕には幼馴染が居る。

 ずっと昔から、家族ぐるみの付き合いだった--。


GM:さて、がやがやとしている教室。遅刻ギリギリで金髪の少女が滑り込んできます。

リオ:「あ……」

翼(GM);「ま、間に合ったぁ……朝のレッスンをしてたら。こんな時間になるなんて」

リオ:「つば……秋風、さん」


 透けるような金髪の女の子。

 すらりとした肉体に、贅肉ひとつ感じさせない。

整った顔と、蒼色の瞳。

 それが、秋風翼。

 僕の幼馴染で、アイドル候補の--女の子だった。


GM:「あ……り……り。春川、君」

リオ:「オーディション、近いんだから。その、頑張って」

GM:「う……ん」


 彼女とは、家族ぐるみの付き合いで。

 親同士が、仲が良かった。

 だから、よく遊ぶ仲だったし。アイドルになることだって、応援してる。

 ただ、最近はどうしても意識してしまう。

 翼が伸ばそうとした手を、無視するように顔をそむける。

 寂しそうに席に戻る彼女を見ると、ずきりと心の片隅が痛くなる音がした。


リオ:(これでいいんだ。変に、僕なんかと噂が立ったって。いい事はないんだ)


 痛みを無視するように、僕は筆箱からシャーペンを取り出す。

 今日も、また授業が始まる。

 教科書に集中すれば、翼の事は、気にしないで済む。

 翼のためじゃなくて、僕のために。

 今日は翼のオーディションの日だ。アイドルになって。僕の手の届かない世界に彼女は行ってしまう。

 それでいい。

 口の中で言うと、それが嫌味なくらいしっくりと来てしまった。

 

リオ:ただ、今日だけは。一緒に行かなきゃいけないんだよね。

GM:はい。放課後の君には用事があった。家にまっすぐに帰った君に、母親から連絡が来る。


「リオ!ごめん!すぐに駅に向かって!」

「うわわっ、どうしたんだよ母さん!」

「翼ちゃん、今日のオーディションの書類。家に置いてきちゃってるんだって!」

「で、でも僕は……か、母さんは!?」

「私はまだ仕事よ。今から出ても間に合わない!」

「そ、そっか……」


 なのに、家に帰ったら。そんな電話が来てしまった。

 学校で別れる時も、挨拶もしなかったというのに。


「隣の家に行って、茶色の封筒もらって行きなさい」

「分かってる」


 家を出ながら、隣の家のお母さんに書類を受け取る。

 そのまま、相棒の自転車に乗って。まっすぐに道を走る。

 久々に全速力で走ったせいで、すぐに息が切れるのが情けない。

 オーディションの時間は知っている。

 関係なくても、僕が最初のファンになると思ってたから。

 だから。


リオ:全速力で自転車をこいで、電車に乗って。駅を降りる。間に合うよね?

GM:はい、ギリギリで間に合う感じです。

リオ:普段運動部にいるわけでもないから、息も絶え絶えになりながら、道を走る。

GM:ほどなくして--金色の見覚えのある髪が見えてきます。頼りなさげに、歩いている。

リオ:「……あ、い……いた……」

GM:「り……梨雄……?」

リオ:(ゆっくりと近づいて)「翼、これ」

GM:「忘れ物を届けてくれるってお母さんが言ってくれていたけど、梨雄、だったんだ……。ありがと」

リオ:「うん、だから。僕はこれで……」


 距離を取ろうとする。

 つい、昔みたいに名前で呼んでしまったのも、恥ずかしかったから。


「その、緊張しちゃって。だから、会場まで一緒に……行ってもらってもいいかな」


 けど、幼馴染は離してくれようとしなかった。


「僕は、これで帰ろうかなって。思ってたんだけど」

「最後の……チャンスだと。思うから」

「……ずるいな、本当に」

「女の子、だからね」

「会場の、前までだからね」


 二人で並んで、札幌の街を歩く。

 時間的には、歩いても何とかなるくらい。

 一生懸命に、走ったおかげだった。

 手は、つながない。

 繋いだら、きっとスキャンダルになる。未来の彼女にとっては。


GM:「ダンスも、歌も頑張ったけっど。いつの間にか私も--17歳かあ」

リオ:「うん……そうだね」

GM:「何回か落ちちゃったし。私も、あきらめた方が良かったのかなあ。そしたら、リオといられるし」

リオ:「それは、違うよ」

GM:「そうかな。歌も、ダンスも教えてくれたのは、リオだったし。ずっと、うまかったのは知ってるよ」

リオ:「それは……それでも。僕は男だからなれないんだよ!分かってるだろ!翼の方が、可愛いし、アイドルだって、似合うよ!」


 弱気になりかける彼女に。つい、大声を出してしまう。

 アイドルの道に誘ったのは、僕だった。

 テレビでみた歌や、踊りに憧れていた。

 ああいうふうに踊ってみたい、そんな目持ってたのは僕で。

 翼はそれを追いかけるように、アイドルを目指したんだ。

 けれど、僕は男で。

 低くなる声が、高くなる背が。

 どうしても、そんな夢を諦めさせた。


GM「ごめんね、莉雄」

リオ:「謝らなくていいよ。それに……頑張ってきた翼は、ずっと見てきたから」


 沈黙がやってくる。

 何も問題なく一緒に居られる、最後の時間なのに。


GM:やがて、会場が見えてくると、翼はぎゅっと拳を握る。いつも、気合を入れる時にやっていたことだ。

リオ:「うん、その意気だよ。頑張れ。翼」そういって、後ろを向いて帰ろうとする。

GM:……その時でした。



「--莉雄っ!?」


 うつむき気味だった僕は、気が付かなかった。

 耳を聾する、ブレーキの音。

 そして、後ろから追いかけてくる、幼馴染。

 目を上げれば、もうどうしようもないところまで来ていたんだ。


 春先の雪で、スリップしたトラックが。こちらに向かってきているなんて。


(……あ)


 時間がゆっくりに感じる。

 一生懸命にハンドルを切ろうとする運転手の姿まで、くっきりと見える。

 それと、もう一つ。


「だめっ……!!」


 目の前に、飛び込んできて。

 僕をつき飛ばそうとした、幼馴染の姿が。


「っ!?」


 どんっ、と突き飛ばされた僕は。

 思ったより重かったみたいで。

 翼が、泣きそうな顔をしていて。


(なんて、なんで……君が……)


 そこで、僕の視界は。真っ赤に染まっていた。



GM:というわけでトラック転生です。

リオ;ベッタベタだな!?



※ ※ ※



「どこ……ここ……」


--目を覚ますと。僕は真っ白な空間にいた。

 見渡す限りの白。

 どこに立っているのかも、定かじゃないくらいだ。


「……春川 梨雄。起きたでやんすか」

「う、うわぁ!?」


 そんな僕の目の前にいたのは、ファンタジーで露出度が高くて。防御力が0に見える女神……?だった。


「あ、今はスーパーベネットなので防御力はちゃんとあるでやんす」

「あるんだ」


 ちなみにGMから補足だが、ベネットとはアリアンロッドリプレイシリーズ初出のキャラクターであり大人気なキャラである。

 4レベルから女神に成り上がるサクセスストーリーの持ち主だ。

 ……語尾はやんすで三下なのは置いておこう。



GM:「……さて、どこまで記憶はあるでやんすか?」

リオ:「えっと、トラックに轢かれて……それで……」

GM:「うむ、分かりやすくいうと。君は転生したでやんす。つまりここは名物、異世界転生空間でやんす」

リオ:「て、転生……?」

GM:「ありていに言うと、あっしには二人助けるのは難しいのでやんすよ」

リオ:「ふ、二人……つ、翼……」

GM:「だってあっし、運命クラスまで成り上がったけどシーフだしぃ!!最初は使い捨てキャラでやんすからなあ!」

リオ;いや、使い捨てキャラとか運命クラスと言われましても。

GM:「メタなのは基本でやんす。説明シーンでやんすからな」

リオ:「……」

GM:「とにかく、二人同時にこっちの世界に召喚することで、トラックの激突寸前で命を救ったのでやんす。ふははは!褒めるがいいでやんすよ!」

リオ:「異世界転生って、あの流行りの……」そう考えるしか、ない……説明が出来ないから。

GM:「どちらかと言えば異世界転移!あの引かぬ、媚びる、省みぬ!でやんす」

リオ:「それは全く関係ないよね!?……じゃ、じゃあ僕と翼は今から異世界を冒険しろって?」

GM:「そう、冒険でやんす。ただしさらに流行のチートはないでやんすよ。あっしは元プレイヤーキャラの女神だしぃ!?」

リオ:「それは、期待してなくもないけど……女神ならくれてもいいじゃん、ケチ」

GM:「ケチと言われてもない袖は振れないでやんす」

リオ:じゃっかんがっくりとしながらも、翼が生きてると聞いて少しだけほっとする。

GM:さて、そんな君はようやく冷静になったこともあり。体の違和感に気が付く。


「--ん?」


 声を出していた時に、違和感は感じていた。

 明らかに、普段出しているよりも、高い声だったのだ。

 それは、転生してしまったショックによるものだと思っていたけれど。


「……」


 胸のあたりが、重い。

 触ると、ふわりと柔らかい触感が帰って来る。


「ま、マウンテンが……!?いや、それだけじゃ……」


 混乱してて気が付かなかったけど。

 声も、聞き覚えのある声だったのだ。

 さっきまで聴いていた、少女の声。

 翼の……声だ。


リオ:「僕……どうなってるん、だ?」

GM:その言葉に、ダラダラと汗を流す自称女神。

リオ;「……(じぃっと見る)」

GM:「その、でしてね?あまりにタイミングがシビアすぎて……」



「身体が、チェンジしちゃったんでやんす! ビックリでやんすな!」

「……は?」


 飲み込むのに、たっぷり10秒はかかったと思う。

 いや、一生のみ込みたくはなかったけど。


「はあああああっ!?」

「にゅ、ニューライフを楽しむといいでやんすよ」

「じゃ、じゃあこれは翼の身体……僕が翼で、翼が僕!?」

「最近『君〇名は』も流行ったでやんすからな」

「もう古いわっ! 異世界転生した上に幼馴染の肉体とか盛りすぎだろ!属性過多すぎて読者もお腹いっぱいになるわ!」

「メタ発言は良くないでやんすよ!?」

「お前が言うな!と言うかそれ、翼が僕の肉体を使ってるってことじゃないか!ああ、もう!?翼に僕の恥ずかしいところを一杯見られてるのか、今頃……ぉ!」


 心のままに僕は叫んでいた。

 正直、悪い事ではないと思う。

 けれど、その時の僕は。もう一つのことに、今更気が付いたんだ。


リオ:……「そういえば、翼は、近くにいるんだよな?一緒に冒険するだろうし会わせて欲しいんだけど……」

GM:「あーそれは。実はでやんすが」

リオ:(即座に察して冷や汗が流れる

GM:「違う時間軸に送っちゃったでやんす」

リオ:「そろそろ切れるぞ、この駄女神」

GM:「し、仕方ない事なんでやんすよ!?だってトラックがギリッギリでとっさだったんでやんすから!」

リオ:「うるっさい!翼を出せ!どこぞの野球ゲームの相方みたいな口調してるくせに能力しょぼすぎるだろ!」

GM:「命の恩人なのに、しょぼいはひどいでやんす」

リオ:「ある意味命を救われるより辛い状況だろこんなのぉぉぉっ!」

GM:「あっしだってがんばったのに……」

リオ:「泣くな!せめて翼の居場所を教えろ!どうせ広大なんだろ、これから行く世界!」

GM:そこで、一度黙り込むベネット。何かを考え始めます。


「--取引でやんす」

「取引、だって?」

「まずあっしは『アイドル』が必要だったんでやんす」

「……アイドル」


 ここにきても、こんな言葉をきくとは思わなかった。 

 アイドルだから、翼はたまたまトラックから救い出されたのだろうか。

 今は……僕の身体になってしまった。


GM:「この世界を救うために、あっしはあの世界を探し回っていたんでやんす。理想のアイドル候補を見つけるために」

リオ:「……そうかよ」

GM:「そして。アイドルになり得る子たちの集まるところにたどり着いたところで。あっしは力を使った。つまり転移はもう使えないから。リオになんとかしてもらうしかなくなったのでやんす」

リオ:「……それで、元の世界に戻るって話は?」

GM:「そっちはあっしの上司に頼み込んで。帰りはなんとかするでやんす。ただ……あの鬼上司はあっしが結果を出さないとすぐに殺そうとしてくるでやんす」

リオ:「いっそ、殺されてみればいいのに……僕らみたいに」

GM:「ひ、ヒィ!?と、とにかくアイドルになって目的をちょーっと達成してほしいでやんす」

リオ:……言いたいことは分かったので、とりあえずゴミを見るような目で見ます。

GM:「そ、そのごみを見るような目は、いつも上司がやってる目でやんすよ?」

リオ:「これの、どこが、取引だああああっ!?」

GM:「よく考えたら脅迫みたいでやんすな」

リオ:「だろうな!これを断ったところで僕は行く当てもない一文無しなんだろ!?」

GM:「あと、あっしはこれ以降直接的な手出しは出来ないでやんす。『歴史が大きく変わってしまう』でやんすからな」

リオ:「ああもう……なんで、こんな女神に僕と翼の命運が握られてるんだ……っ」

GM:「とにかく納得したらすぐに行くでやんす。この世界に平穏をもたらすと言われている歌曲『マスターピース』を完成させる旅に」

リオ:「え、ちょっと説明は……」

GM:その直後、君の足元の白い空間にぽっかりと穴が開く。


「アディオス、でやんす!」

「ちょっと待て、人の話を……!?」

「これ以上ここで尺を取ると、上司に見られてあっしの首が飛ぶでやんすからな!」

「お前、それっ、ただのもみ消しじゃねえかっ!?」


 落ちる。

 すごい勢いで落下してるのがわかる。


「こ、これで隠蔽完了……」

「……ベネット、少し遅かったようね」

「ふぇ、ふぇ、フェルシア様……これは、その……ひでぶっ!?」


 上空から聞こえる声に、ほんの少しだけ溜飲が落ちたけど。

 それでも、僕の運命は変わらない。

 ……これから。僕は。


「--アイドルに、なれ……か」



 冒険に出ることは変わらないのだから。



GM:さて、ここで、君がアルディオンの大地に立ったところで。今回の導入は終わりとします。

リオ:アルディオン!?エリンディルじゃなくて?

GM:はい。基本ルールに名前だけ載ってるアルディオンです。

リオ:戦乱の大陸……かぁ……。


 かくして、彼……いや、彼女は転生することとなった。

 帝紀812年。激動の大陸--アルディオンに。

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